研究課題/領域番号 |
23K23414
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補助金の研究課題番号 |
22H02146 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
木田 敏之 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (20234297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 環状オリゴ糖 / シクロデキストリン / チューブ型ホスト分子 / 分子認識 / 長鎖不飽和脂肪酸 / チューブ型シクロデキストリン二量体 / 長鎖不飽和脂肪酸エステル / トランス脂肪酸 / 超分子構造体 / 包接 / ゲスト選択性 / 吸着材 |
研究開始時の研究の概要 |
複数のリンカーでシクロデキストリン二分子を連結させたチューブ型ホスト分子の包接空間を利用することで、植物油や魚油中のオメガ3系高度不飽和脂肪酸成分の高効率回収ならびに食用油中のトランス脂肪酸成分の高効率除去・回収を実現することを目的としている。本目的達成のために、すでに有機溶媒中の長鎖不飽和脂肪酸エステルに対して包接能を示すことを見出しているチューブ型CDホスト分子の構造をもとに、オメガ3系高度不飽和脂肪酸成分あるいはトランス脂肪酸成分に対し高選択的な包接が期待できるチューブ型ホスト分子を設計・合成し、包接能の検討ならびに油中からの目的とする長鎖不飽和脂肪酸成分の分離・回収について検討する。
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研究実績の概要 |
γ-シクロデキストリン(CD)二分子を8つのp-キシリレンリンカーで連結したチューブ型γ-CD二量体の合成に成功した。この二量体を用いてアセトニトリル中のオレイン酸メチル、リノール酸メチルに対する抽出挙動について検討した結果、リノール酸メチルがオレイン酸メチルよりも5倍以上選択的に抽出されることがわかった。γ-CD二量体はα-CD二量体やβ-CD二量体よりも大きな包接空間をもつことから、オレイン酸メチルよりもかさ高い構造をもつリノール酸メチルに対して選択的な抽出能(包接能)を示したと考えられる。 また、α-CDの6位水酸基すべてをメチル基あるいはエチル基で化学修飾したα-CD誘導体(6-Me-α-CDあるいは6-Et-α-CD)から構成される多孔性の超分子構造体を作製し、長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する抽出能について検討した。アセトニトリル中の長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する固液抽出実験結果より、6-Me-α-CDから構成される超分子構造体はシス型のオレイン酸メチルよりもトランス型のエライジン酸メチルに対して高い抽出能を示すことがわかった。その一方で、6-Et-α-CD超分子構造体は、エライジン酸メチルよりもオレイン酸メチルに対して選択的な抽出能を示した。6-Et-α-CDでは、その空孔内に包接されたオレイン酸メチルと6位エチル基間のファンデルワールス相互作用がエライジン酸メチルの場合よりも強く働くため、6-Me-α-CDの場合とは逆のオレイン酸メチル選択性が発現したと考えられる。このように、α-CDの6位の置換基を変化させることで長鎖不飽和脂肪酸メチルに対する抽出(包接)選択性を制御できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
γ-CD二分子を8つのp-キシリレンリンカーで連結したチューブ型γ-CD二量体を吸着材に用いることで、オレイン酸メチルとリノール酸メチルの混合溶液中からリノール酸メチルを選択的に吸着分離することに成功した。このチューブ型γ-CD二量体を用いることにより、オメガ3系高度不飽和脂肪酸の選択的分離が期待できる。また、6位修飾α-CDのhead-to-head型二量体からなる多孔性の超分子構造体を吸着材に用いた場合、6位修飾基がメチル基の時はトランス型のエライジン酸メチルに対して選択性を示したのに対し、エチル基の時はシス型のオレイン酸メチルに対して選択性を示し、α-CDの6位の置換基を変えることで長鎖不飽和脂肪酸メチルに対する吸着(包接)選択性を制御できることが分かった。これらのことから、6位修飾α-CDの分子配列をより精密に制御することで特定の長鎖不飽和脂肪酸エステルに対する高度な分離が期待できる。このように、今回開発したチューブ型γ-CD二量体ならびに6位修飾α-CD超分子構造体を用いることでオメガ3系高度不飽和脂肪酸成分の選択的回収ならびに食用油中のトランス脂肪酸成分の選択的除去が可能になると考えられる。以上のことから、当初の計画通り順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
植物油や魚油中のオメガ3系高度不飽和脂肪酸成分を高選択的に回収できるチューブ型CDホスト分子の設計・合成と包接能の評価、ならびに食用油中のトランス脂肪酸成分の高効率除去を可能とするチューブ型CDホスト分子の設計・合成を引き続き行う計画である。 1. チューブ型CDホスト分子の設計と合成 研究代表者による最近の研究成果とこれまでに見出した、オイル中でゲスト包接能を示すCDホスト分子の設計に関する知見に基づき、β-CDならびにγ-CDを出発物質に用いて、それらを種々のリンカーで連結させたチューブ型CDホスト分子を設計・合成する。また、チューブ型CDホスト分子の末端に種々の置換基を導入したホスト分子の設計・合成も行う。 2. 有機溶媒ならびに油中の長鎖脂肪酸エステルに対する包接能の評価 上記1で合成したチューブ型CDホスト分子を用いて、有機溶媒ならびに油中での種々の長鎖脂肪酸エステルに対する包接能を評価する。有機溶媒中での包接能の評価は、核磁気共鳴(NMR)装置あるいは紫外可視分光光度計を用いて行う。また、植物油あるいは魚油由来の種々の脂肪酸エステルの混合物からなる油中での包接能(吸着能)の評価は、ガスクロマトグラフ、NMR装置、高速液体クロマトグラフを用いて行う。 3. 長鎖脂肪酸エステルとチューブ型CDホスト分子間での包接錯体の構造の解明と包接メカニズムの検討 二次元NMR、X線回折装置を用いて、各チューブ型CDホスト分子と長鎖脂肪酸エステル間で形成される包接錯体の構造を解析し、油中での長鎖脂肪酸エステル包接のメカニズムの解明を行う。
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