研究課題/領域番号 |
23K23415
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補助金の研究課題番号 |
22H02147 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
檜垣 勇次 大分大学, 理工学部, 准教授 (40619649)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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キーワード | 水溶性高分子 / ブロック共重合体 / ミクロ相分離 / 水 |
研究開始時の研究の概要 |
複数の水溶性高分子鎖で構成される分子が水溶液中で相分離することで形成される秩序性の高い分子集合体は、水環境で分子選択的な分画場を提供する新たな分子システムとして期待されます。本研究では、この新たな分子集合体の分子構造と環境に応じたナノスケール秩序構造の系統的調査による構造形成機序の解明を目指しています。
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研究実績の概要 |
細胞内液滴が関与する生命現象・疾患の包括的理解を志向した研究の潮流から、水性環境における親水性高分子の相分離現象への関心が高まっている。本研究は、両親水性ブロック共重合体が形成するメゾスコピックな秩序構造の構造転移や崩壊、選択的分子分配の理解と普遍的発現機構の解明による、水性ミクロ相分離二相系分子システムの構築を目的としている。双性イオン高分子を構成成分に含む新たな両親水性ブロック共重合体を複数種合成し、分子間相互作用に応じた凝集機構を研究した。濃厚水溶液で形成されるミクロ相分離構造は九州シンクロトロン光研究センターのBL06、BL11を利用して小角X線散乱(SAXS)測定で解析した。非水溶性親水性高分子と双性イオン高分子からなるブロック共重合体における無定形なミクロ相分離構造の形成を示し、水和状態と構造秩序の関係を明らかにした。双性イオン高分子の共貧溶媒効果(異種良溶媒の特定組成の混合溶媒が貧溶媒となる現象)によってミクロ相分離が誘起される画期的なミクロ相分離二相系の構築に成功した。双性イオン高分子を殻とする高分子ミセルにおいて、核部におけるフェニルボロン酸酸解離定数の変化、双性イオン高分子殻による静電斥力の低減によりpHに応じたミセルの解離が抑制される現象を見出した。異種双性イオン高分子の水溶液が相分離して液滴を形成する現象を発見した。非イオン性高分子水溶液の相分離液滴と比較すると、双性イオンの静電斥力に起因して液滴の合一が妨げられ長時間液滴が安定に保持されることが示された。さらに、抗がん剤であるドキソルビシン塩酸塩が液滴内に局在化する現象を見出した。以上、双性イオン高分子特有の相分離現象、分子集合体形成挙動に迫る研究が進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた両双性イオンブロック共重合体の相分離挙動については、研究成果が学術論文として発表され、相分離の分子機構解明を指向した研究が着実に進展している。当初計画では想定していなかった共貧溶媒効果誘起ミクロ相分離現象を研究過程で偶然発見し、研究成果を学術論文として発表した。さらに、双性イオン高分子がボロン酸/糖の結合定数や高分子集合体の解離定数の変化を誘導するという当初予想していなかった現象を発見し、研究成果を学術論文として発表した。以上の理由から、当初の計画以上に進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
親水性高分子は精製過程において分散安定化しやすいため、分離精製が非効率となることが多い。令和5年度に導入した高速遠心分離機は、大容量分散液を高速で遠心分離することができるため研究効率が格段に改善された。今年度は、相分離現象の普遍原理を追求するべく両親水性ブロック共重合体ライブラリを拡張するため、合成実験試薬の購入や実験設備の整備に研究費を充てる。加えて、放射光や中性子線などの量子ビームを利用した薄膜状態におけるブロック共重合体相分離の研究への展開を計画している。
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