研究課題/領域番号 |
23K23458
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補助金の研究課題番号 |
22H02191 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
比能 洋 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (70333333)
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研究分担者 |
小林 純子 (仁尾純子) 長崎大学, 高度感染症研究センター, 准教授 (70447043)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
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キーワード | グリコタイピング / バイオタイピング / MALDI / 糖鎖 / 血清型 / 糖タンパク質 / 直接解析 / ムチン / ムチン型糖鎖 / 硫酸化 / リン酸化 / マトリックス / O抗原 / LPS / 1コロニー / 同定 |
研究開始時の研究の概要 |
MALDI-MS技術によるプロテインタイピング技術は抗体やオリゴヌクレオチド等のプローブ不要の生物分類技術であり、生命科学研究のゲームチェンジ技術の一つとして社会へ浸透している。一方、癌抗原、胎児抗原、血清型等、実用分子指標である糖鎖構造情報取得はイオン化効率の問題により取り残されている。本課題は代表者が開発した糖鎖選択的イオン化技術を鍵としたMALDIグリコタイピン技術基盤を構築するものである。
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研究実績の概要 |
本年度は糖鎖選択的イオン化技術の基盤強化を図るとともに、測定対象分子の拡張のための基盤構築と実証研究を実施した。また、昨年度までに構築した微生物O抗原の迅速分析技術の検体数拡大を図ると共に、糖鎖選択敵的イオン化技術を活用したMALDIイメージングのための基盤構築を行った。まず、糖鎖選択的イオン化技術の理論実証のため、1991年に世界初の糖鎖MALDI-MS解析用マトリックスとして報告された3-Amino-4-hydroxybenzoic Acid (AHBA)に着目した直接糖鎖解析技術を開発した。代表者は2,5-dihydroxybenzoic acid (DHB)とアニリン誘導体混合物を基盤とした糖鎖選択的イオン化技術を開発したが、AHBAはDHBとアニリンの構造を併せ持つ分子である。しかし、AHBAはDHBと比較すると糖鎖のイオン化効率が低いためMALDIマトリックスとしての利用されなくたった。我々はAHBAが代表者の研究コンセプト基盤となったペプチド等より糖鎖選択性の高いイオン化能を有していることを見出し、アルカリ金属添加により、その特性を先鋭化した。さらに、レーザー照射に伴うイオン生成量が低いことを活用し、強レーザー照射によるインソース分解を組み合わせた糖タンパク質糖鎖直接解析に最適であることを見出し、無処理生物ムチンからのO-結合型(ムチン型)糖鎖構造パターンの直接解析に世界で初めて成功した。また、MALDIグリコタイピング対象拡大のため、従来の糖鎖捕捉技術glycoblottingと弱イオン交換技術を高度に融合した硫酸化およびリン酸化糖鎖の迅速識別分析技術の構築に成功した。さらに、水鳥卵白糖鎖のリン酸化と硫酸化に着目した大規模グライコミクス研究を行い、糖鎖の硫酸化とリン酸化が水鳥を自然宿主とするインフルエンザウイルスの水鳥種間罹患率と相関することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
世界初のN-結合型糖タンパク質糖鎖のインソース分解と糖鎖選択的イオン化技術構築の達成、世界初のO抗原多糖パターンの超迅速タイピング技術構築の実証に加え、世界初のムチン中のO-結合型糖鎖のインソース分解と糖鎖選択的イオン化による直接かつ選択的なMALDIグリコタイピングにそれぞれ成功した。さらに、代表者らが開発に関わり世界のグライコミクス研究の先導的な技術となったGlycoblotting法を活用し、従来のグライコミクス研究技術では達成困難であった生物検体中の糖鎖硫酸化パターンの糖鎖解析技術の構築と、その配するプット糖鎖解析への利用によるインフルエンザウイルス感染罹患率と糖鎖硫酸化、リン酸化パターンの相関の発見に成功した。糖鎖の硫酸化やリン酸化はその物性、代謝経路、およびシグナルの重要因子として着目されており、1980年代のモノクローナル構築技術に伴い、様々な硫酸化糖鎖抗原が診断指標や生物学的指標として見出された。しかし、近年のグライコミクス研究ではその取扱いが困難であるため、「存在しないもの」として取り扱われる傾向にあり、硫酸化を対象とする研究は極めて一部の研究者による煩雑かつ高度な技術を要する研究例に限られていた。本年度の研究成果はそれぞれ、これらの糖鎖研究の停滞原因を打ち破るゲームチェンジ技術となることが期待されるものである。
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今後の研究の推進方策 |
N-結合型およびO-結合型糖タンパク質糖鎖の直接解析技術、微生物O抗原の迅速解析技術、硫酸化糖鎖とリン酸化糖鎖の迅速識別解析技術など、本研究課題で構築した重要基盤技術の展開研究を図るともに、より広範な「糖鎖情報」の迅速取得のための基盤技術構築を推進する。また、糖鎖選択的イオン化技術の理論基盤構築の推進による新規マトリックスの設計と実用化、糖鎖を指標とした微生物MALDIタイピング技術の構築と実用化、糖タンパク質製剤やワクチン開発及び利用ための直接品質管理技術の構築など、企業や専門研究者と連携した新規プロジェクト構築のための基盤構築を推進する。 また、MALDIグリコタイピングの加速を実現するマトリックスの設計と利用も行う。具体的には、O-結合型糖タンパク質糖鎖の直接解析に使用したAHBAはイオン化効率が低いことを特徴としているが、そのイオン化効率を変化させることによる糖鎖イオン化の選択性、SN比、ピーク半値幅、インソース分解特性、インソース分解位置、インソース分解後のイオン化断片選択性、インソース分解後のTOF/TOF解析特性など、MALDIグリコタイピングに必要または利用可能な特性とその機構について系統的な解析を実施する。
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