研究課題/領域番号 |
23K23460
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補助金の研究課題番号 |
22H02193 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
神谷 真子 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (90596462)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 蛍光プローブ / 酵素活性 / がん |
研究開始時の研究の概要 |
血液中循環がん細胞(CTC)の解析は、がんの進行や治療効果を非侵襲的に観察する検査法として期待されている。本研究では、各々のがん細胞が固有の酵素活性パターンを有することに着目し、我々がこれまでに開発した“酵素活性を標的とした1細胞検出能を有する蛍光プローブ”を拡張・活用することで新たながん検出法の確立を目指す。つまり、検出波長と標的酵素を拡充した“1細胞検出能を有する多色・多機能蛍光プローブ群”を開発することで、酵素活性パターンを指標とした高精度がん細胞検出技術を開発することを目指す。
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研究実績の概要 |
がん細胞が有する特徴的な“ 酵素活性パターン”を可視化する有機小分子蛍光プローブ群を拡張するべく、標的酵素の拡充を図った。具体的には、タンパク質やペプチドのC末端のアミノ酸を認識して切断する酵素群であるカルボキシペプチダーゼ(CP)の酵素活性を高感度で検出できる新たな蛍光プローブの開発を行った。CPは生体内で重要な役割を担っているとともに、がんや高血圧などの疾患との関与が報告されているが、その設計の難しさからCPに対する蛍光プローブの報告例は限定的であった。そこで本年度においては、核酸アナログを細胞質に導入するためのプロドラッグ技術であるProtide化学に則り、その特徴的な活性化機構を取り入れることで、特性を柔軟に調節可能な汎用性の高い分子設計法を考案した。これはプローブ分子を4つのモジュールに分割して考えることが可能なデザインであり、①蛍光波長、②酵素に対する反応性、③標的酵素といったパラメータを自在に調整することができ、所望の特性を有するプローブを効率的に開発することが可能であった。実際に、塩基性CPや前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とした多色の蛍光プローブを効率的に開発することができ、生きたがん培養細胞における酵素活性検出が可能であることも示した。さらに、開発した塩基性CPの活性を検出可能な赤色蛍光プローブを乳がん患者の外科的切除献体に添加したところ、がん組織における塩基性CPの活性を蛍光で検出することが可能であることも明らかとなった。確立したモジュール型の分子設計法に則り更なるプローブ開発を進めることで、本提案で目指す“多色・多機能な有機小分子蛍光プローブ群を用いたがん検出”の実現に近づくと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
標的酵素を拡充するべく、ペプチドのカルボキシ末端のアミノ酸を加水分解する酵素であるカルボキシペプチダーゼの活性を検出する蛍光プローブの新たな分子設計法を確立した。つまり、ProTide化学に則り、基質アミノ酸・蛍光団などを柔軟に変更可能なモジュール設計に基づく分子設計を考案した。確立した分子設計法に則り開発した蛍光プローブを用いることで、生きた培養がん細胞や臨床検体におけるカルボキシペプチダーゼ活性の高感度検出が可能であることが明らかとなった。これは、本研究が目指す“がん細胞が有する特徴的な酵素活性パターンの可視化によるがん検出”を実現するにあたり、非常に重要な要素技術となる。以上の理由から、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
酵素活性検出蛍光プローブの多色化に向けた検討を行う。つまり、これまでに開発したプローブとは異なる波長域で機能する新たな蛍光プローブの開発を目指し、色素母核を変更したパイロットプローブの合成、in vitroでの光学特性の評価・最適化を行う。具体的には、キサンテン環10位の元素が炭素のカルボロドールを基本骨格として選定し、酵素との反応前は無色・無蛍光の閉環体(分子内スピロ環化フォーム)で存在するが、酵素との反応後は蛍光性の開環体(キサンテンフォーム)となる誘導体を、分子内求核基、キサンテン環・ベンゼン環上の置換基などを最適化して開発する。開発したプローブを用いて、標的活性のライブ検出が可能か評価する。目的の光学特性を示すパイロット化合物が開発できたら、標的酵素との反応によりキノンメチド活性中間体が産生するよう脱離基を導入した化合物の合成にも取り組んでいく。このような検討を通じて、本研究が目指す多色化・多機能蛍光プローブ群による酵素活性パターンを指標としたがん検出の実現に向けた検討を進める。
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