研究課題/領域番号 |
23K23462
|
補助金の研究課題番号 |
22H02195 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
窪田 亮 京都大学, 工学研究科, 講師 (00753146)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
|
キーワード | 超分子化学 / ヒドロゲル / 階層構造 / 非平衡 / 反応拡散 / 超分子 / コアセルベート / 共焦点顕微鏡 / 自己集合 / 多成分 / 非平衡散逸系 |
研究開始時の研究の概要 |
本基盤研究Bの目的は、人工超分子で階層的自己組織化を実現し、細胞のような「多成分性」「協働性」「非平衡性」を示す人工超分子システムを創発することである。超分子ヒドロゲルは、ゲル化剤と呼ばれる有機小分子が水中で自発的に自己集合したファイバー状構造体からなる。本基盤研究では、代表者がこれまでに明らかとした超分子ゲル形成もしくは高分子ゲルとの複合化のルールを基本とし、超分子ファイバーが示す刺激応答性や速度論形成制御を応用することで、階層的ネットワーク構造を持つヒドロゲル材料を開発する。このような材料を薬物徐放材料・細胞培養基盤へ展開することで、生き物のような機能を示す超分子ソフトマターを創出する。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人工超分子で階層的自己組織化を実現し、細胞のような「多成分性」「協働性」「非平衡性」を示す人工超分子システムを創発することである。超分子ヒドロゲルは、ゲル化剤と呼ばれる有機小分子が水中で自発的に自己集合したファイバー状構造体からなる。代表者はこれまでに、複数の構造の異なるゲル化剤の独立な超分子ファイバーからなるヒドロゲルの創出・機能化に成功した。令和5年度(2年目)は、超分子ファイバーの非平衡ダイナミクスの創発に成功した。細胞骨格である微小管は、GTPの加水分解を駆動力として、伸長と収縮を繰り返す動的不安定性を示す。人工超分子系では、素早く平衡状態に達するため、動的不安定性のような伸長・収縮の繰り返しは実現困難であった。代表者は、ペプチド型ゲル化剤と界面活性剤ミセルを混合することで、人工超分子ファイバーの動的不安定性を実現した。この成果は、人工超分子系において細胞のような非平衡機能を創出するための新たな方法論を提供すると期待される。 また代表者は、低分子ペプチド型コアセルベートにおいてもユニークな非平衡ダイナミクスを発見した。温度応答性を付与したPEG修飾低分子ペプチド誘導体について合成・評価を行った。緩衝水溶液中においてペプチド誘導体をin situ合成を行い、その挙動をリアルタイム観察を行った。その結果、中間体としてベシクル状構造体が形成したのち、複数のベシクル構造体が集合することで、スポンジ内部構造を示すコアセルベートが形成することを発見した。さらにコアセルベートの内部スポンジ構造の熱的ダイナミクスの観察に初めて成功した。以上の結果は、今まで未知であったコアセルベート内部構造の情報を提供することから、人工コアセルベートのさらなる理解と機能化に役立つと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度(2年目)は、超分子ファイバーの非平衡ダイナミクスの創発に成功した。細胞骨格である微小管は、GTPの加水分解を駆動力として、伸長と収縮を繰り返す動的不安定性を示す。人工超分子系では、素早く平衡状態に達するため、動的不安定性のような伸長・収縮の繰り返しは実現困難であった。代表者は、ペプチド型ゲル化剤と界面活性剤ミセルを混合することで、人工超分子ファイバーの動的不安定性を実現した。リアルタイム共焦点観察から、観察視野内に伸長するファイバーと収縮するファイバーが共存することが明らかとなった。また一本のファイバーを観察すると伸長相・停止相・収縮相が存在した。臨界ミセル濃度以下の界面活性剤・脂質二重膜をもつリポソームでは動的不安定性が観察されなかったことから、界面活性剤ミセルの内部疎水性環境およびモノマーとの動的平衡が重要であると考えられる。また代表者は、低分子ペプチド型コアセルベートにおいてもユニークな非平衡ダイナミクスを発見した。温度応答性を付与したPEG修飾低分子ペプチド誘導体について合成・評価を行った。緩衝水溶液中においてペプチド誘導体をin situ合成を行い、その挙動をリアルタイム観察を行った。その結果、中間体としてベシクル状構造体が形成したのち、複数のベシクル構造体が集合することで、スポンジ内部構造を示すコアセルベートが形成することを発見した。さらにコアセルベートの内部スポンジ構造の熱的ダイナミクスの観察に初めて成功した。合成したPEG修飾低分子ペプチド誘導体は温度応答性を示すことを発見した。約30℃においてLCSTを示すことを濁度測定から明らかとした。この温度応答挙動を共焦点顕微鏡で観察した結果、昇温過程と降温過程において異なるダイナミクスを示した。温度制御によりコアセルベート物性を制御する新たな方法論を提供すると期待される。以上から順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度(三年目)は、超分子-高分子複合ヒドロゲルの三次元パターニングを中心に研究を進める。その方法論として、代表者が以前開発した光応答性ペプチド型ゲル化剤による光応答性非平衡パターニングに挑戦する。また本年度発見した界面活性剤との組み合わせによる非平衡ダイナミクスを活用した複合ヒドロゲルの三次元パターニングも検討する。さらに三次元パターン化した複合ヒドロゲルの機能化として、タンパク質・酵素等の機能性生体高分子の精密配列・制御徐放技術へと展開する。またヒドロゲルは細胞培養基盤として優れていることから、細胞培養基盤としての応用も視野に入れる。またコアセルベートについては、様々な機能化に繋がると期待される。そこで次年度では、様々なペプチド配列を検討し、液液相分離のための良いペプチド配列を決定する。決定した低分子ペプチドを用いて、物質濃縮・反応促進等の基礎的な機能開拓を目指す。合わせて、ドラックデリバリーや薬物徐放としての昨日についても検討する予定である。
|