研究課題/領域番号 |
23K23473
|
補助金の研究課題番号 |
22H02206 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分37020:生物分子化学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高岡 洋輔 東北大学, 理学研究科, 准教授 (80599762)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | ケミカルバイオロジー / タンパク質工学 / タンパク質分解 / 植物ホルモン / タンパク質間相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、植物の防御応答を司る植物ホルモン・ジャスモン酸受容体のユビキチン化を伴う分解、並びに転写リプログラミングという一連のシグナル伝達を分子レベルで解析・制御し、ジャスモン酸の機能制御メカニズム解明につなげる。ジャスモン酸はユビキチンリガーゼ(F-boxタンパク質COI1)と転写リプレッサー(JAZ)のCOI1-JAZ共受容体によって認識されるが、13種あるJAZサブタイプが如何に機能分化して制御されるかなど、不明な点が多く残されている。本研究ではこのシグナル伝達のうち、特定のJAZの分解制御と機能の相関関係を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、植物の防御応答を司る植物ホルモン・ジャスモン酸受容体のユビキチン化を伴う分解、並びに転写リプログラミングという一連のシグナル伝達を分子レベルで解析・制御し、ジャスモン酸の機能制御メカニズム解明につなげることを目標とする。ジャスモン酸はユビキチンリガーゼ(F-boxタンパク質COI1)と転写リプレッサー(JAZ)のCOI1-JAZ共受容体によって認識されるが、13種あるJAZサブタイプが如何に機能分化して制御されるかなど、不明な点が多く残されていた。そこで本研究ではこのシグナル伝達のうち、JAZのユビキチン化過程を詳細に解析し、独自に開発したJAZサブタイプ特異的分解をもたらすケミカルツールを用いて、特定のJAZの分解制御と機能の相関関係を明らかにする。本研究の目指すジャスモン酸応答の機構解明は、動けない植物が如何にして環境に適応し自らを守るかを問いただすものであり、環境ストレス耐性をもたらす分子育種などへの応用が期待できる。 さらに最近、ジャスモン酸類とCOI1-JAZ間の相互作用、引き続いて起こるユビキチン化と分解、その後JAZによって抑制されていた転写因子が転写メディエーター(MED25)によって活性化され、最後にJAZスプライスバリアント由来のドメイン(CMID)による再抑制化、という一連のジャスモン酸シグナル伝達について、それぞれのタンパク質間相互作用について定量的な結合定数を算出し、本シグナルが効率よく下流に流れる、転写リプレッサーJAZによる再抑制化に関わるドメイン(CMID)が、天然変性領域を多分に含むこと、およびその構造の違いによって下流転写因子ごとの再抑制化に関わっていることなどが明らかになりつつある。この知見を活かしてペプチド型転写因子阻害剤の開発にも着手した。この阻害剤は、様々な植物種で利用可能なジャスモン酸シグナル伝達の解析に資するケミカルツールになることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに、植物体内においてユビキチン化基質であるJAZのジャスモン酸をトリガーとする分解挙動をイメージングおよび生化学的に解析できる変異株の取得を複数種のJAZサブタイプによって成功した。また、植物体内において、開発中のサブタイプ選択的分子リガンドを用いてこのJAZタンパク質の分解を可視化・および定量化することに成功した。すなわち、試験管レベルで最適化した分子リガンドが、植物体内でも機能することを、複数のJAZサブタイプで実証することに成功した。現在、この過程でユビキチン化が起こる挙動を分子レベルで解析している。 また最近、転写リプレッサーJAZによる再抑制化に関わるドメイン(CMID)が、天然変性領域を多分に含むこと、およびその構造の違いによって下流転写因子ごとの再抑制化に関わっていることなどを明らかにした。さらにこの知見を活かしてペプチド型転写因子阻害剤の開発にも着手した。この阻害剤は、ジャスモン酸シグナル伝達の選択的制御に有用なケミカルツールになることが期待される。本成果についてもすでに学術論文に発表済み、および現在複数の論文を執筆中であり、当初の研究計画に関しては概ね順調に進展しつつ、新たな展開が見出されつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度までに開発した任意の変異JAZサブタイプに対する選択的リガンド分子を用いて、サブタイプごとの分解挙動(速度や親和性、ユビキチン化パターン解析等)の違いを、可能な限り定量的に解析することを目指す。本成果によって、JAZサブタイプごとの違いを、これまで解析されたことのないユビキチン化という側面で初めて明らかにすることができると期待される。 また、特定のJAZサブタイプのown promoter下流で、今回開発した変異JAZサブタイプを発現できる変異体を用いて、この変異体を使って特定のJAZサブタイプの”機能”と”ユビキチン化”の関係を明らかにできると期待される。 また、最近開発した転写因子阻害剤についても植物体内での効果を検証し、論文にまとめていく。具体的には、標的とするジャスモン酸主要転写因子MYCが各植物種で保存性が高いことから、モデル植物シロイヌナズナだけでなく、広範囲の植物種に適用可能か、検討を行う予定である。
|