研究課題/領域番号 |
23K23513
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補助金の研究課題番号 |
22H02246 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
二神 泰基 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60512027)
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研究分担者 |
玉置 尚徳 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20212045)
後藤 正利 佐賀大学, 農学部, 教授 (90274521)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 白麹菌 / 固体培養 / シグナル伝達 / 転写因子 / エピジェネティクス / クエン酸 / ヘテロクロマチン / クエン酸排出輸送体 / HP1 / MAPキナーゼ / 転写制御 |
研究開始時の研究の概要 |
焼酎の製造に用いられる白麹菌(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)は、デンプン分解酵素とクエン酸を高分泌生産する性質をもつ。白麹造りは、前半は温度を上げてデンプン分解酵素であるアミラーゼの生産を、後半は温度を下げてクエン酸の生産を促す工程が採られている。本課題では、白麹菌のエピジェネティック因子、シグナル伝達因子、および転写因子を解析し、温度変化からデンプン分解酵素とクエン酸の生産制御に至る一連の分子機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、麹造りにおいて白麹菌Aspergillus luchuensis mut. kawachiiがアミラーゼなどの糖質加水分解酵素とクエン酸などの有機酸の生産を制御する機構を明らかにすることである。これまでに、白麹菌において推定メチルトランスフェラーゼLaeAが、クエン酸排出輸送体をコードするcexA遺伝子の発現をエピジェネティックに制御することでクエン酸生産をコントロールすることが明らかになっていた。今年度は、エピジェネティック制御因子であるヘテロクロマチンタンパク質HepA(HP1のホモログ)のクエン酸生産における役割を解析した。白麹菌においてhepAを破壊すると、laeAの破壊と比較して程度は低いもののクエン酸生産量が減少した。また、laeAとhepAの二重破壊株はlaeA破壊株と同程度のクエン酸生産能を示した。以上の結果から、HepAはLaeAと同様にクエン酸産生に関与することが示された。RNA-seqによるトランスクリプトーム解析の結果、hepA破壊株とlaeA破壊株における遺伝子発現プロファイルは類似しており、cexAの発現レベルは両株で低下していることが明らかになった。この結果から、白麹菌では、HepAによって制御される遺伝子はLaeAによって制御される遺伝子と類似していることが示唆された。以上の結果は、液体培地を用いて取得された。一方、hepA破壊株とlaeA破壊株で観察されたcexA遺伝子の発現レベルの低下ならびにクエン酸生産量の減少は、固体培養である米麹では緩和された。このことから、クエン酸生産が制御されるメカニズムは、液体培養と固体培養で異なることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、白麹菌においてヘテロクロマチンタンパク質HepAを解析し、HepAがLaeAと同様にクエン酸生産の制御に関与することを示唆する結果を取得した。これまでLaeAはクエン酸排出輸送体遺伝子cexAのプロモーター領域のユークロマチン化に必要であることが明らかになっていた。一方、HepAはヘテロクロマチン形成に必要であることから、hepAの破壊によりcexAのプロモーター領域はヘテロクロマチンを形成できなくなり、cexAの遺伝子発現が促進されると予想していた。しかし、hepAの破壊はlaeAの破壊と同様にcexAの発現レベルとクエン酸生産の低下をもたらした。さらにトランスクリプトーム解析により、HepAによって制御される遺伝子はLaeAによって制御される遺伝子と類似していることが示唆された。これは予想外の興味深い結果であった。さらに、液体培養時とは異なり、固体培養時においてはhepAとlaeAのクエン酸生産制御における寄与が低いことが示唆された。以上のように今後の解析すべき事象を見出すことができたため、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、まずシグナル伝達経路の下流で直接的にクエン酸の生産制御に関与する転写因子の同定のための実験を進める。これまでにシグナル伝達因子であるMAPキナーゼMpkAおよびMpkBによりリン酸化される可能性があるタンパク質を、mpkAおよびmpkB遺伝子破壊株のリン酸化プロテオミクスにより推定しており、その結果に基づいてリストアップした推定転写因子の機能解析を進める。白麹菌においてこれらの推定転写因子の遺伝子破壊株を構築し、α-アミラーゼ、グルコアミラーゼやクエン酸の生産および関連遺伝子の発現に及ぼす影響を解析する。また、過剰発現株を構築が各有用物質の生産に及ぼす影響を解析する。さらに、GFP融合タンパク質発現株を取得し、固体培養による刺激が推定転写因子の核への移行といった局在に影響するのかどうかを解析する。最終的に、有用物質生産への寄与が高い推定転写因子をコードする遺伝子破壊株のトランスクリプトーム解析を実施し、転写制御を受ける遺伝子の全体像を把握する。さらに、クロマチン免疫沈降シーケンスを実施する。
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