研究課題/領域番号 |
23K23515
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補助金の研究課題番号 |
22H02248 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高野 英晃 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (50385994)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2022年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
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キーワード | 光センサー / タンパク質生産 / 放線菌 / 組換えタンパク質生産 / ファージRNAポリメラーゼ / 組換えタンパク質 |
研究開始時の研究の概要 |
医薬微生物「放線菌」は、抗生物質をはじめとする生理活性物質を作る微生物工場として広く利用されてきた。光を感知するセンサータンパク質LitRを「光スイッチ」に利用することによって、外部からの光照射によって放線菌工場の働きを精密に制御できる技術を開発する。これによって遺伝子スイッチのオンオフ制御を厳密かつ正確に行うことができ、タンパク質の生産収量増加につながることが期待される。また、これまで不可能であった放線菌細胞にとって害となるような有用物質を生産できる技術の開発につながることも見込まれる。
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研究実績の概要 |
LiEX(Light inducible Expression)システムと命名した放線菌Streptomyces griseusをホストとする光誘導型タンパク質大量生産系の改良を実施した。 1. プラスミド型LiEXシステム ホストを検討したところ、微生物ホルモンA-ファクターの欠損株においても異種タンパク質の高生産が確認された。大腸菌-放線菌シャトルプラスミドを接合伝達法によって50種放線菌種に導入したところ、9種で形質転換体が得られ、タンパク質の光依存的な高生産が確認された株は3株のみであった。本系による二次代謝生産能を評価したところ、RppAによる茶褐色色素フラビオリン、IndCによるインディゴイジン生産が確認された。また、青色抗生物質アクチノロージンの生合成遺伝子クラスターをゲノムに挿入したStreptomyces sp. NBRC 13304組換え株において、LiEX系によってポジティブレギュレーターactII-ORF4を活性化させることによって、アクチノロージンの光依存的な生産が確認された。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム マルチプレックス制御を可能にするため、プロモーター認識が異なる20種類のファージ由来RNAポリメラーゼ(vRNAP)とそれに対応するプロモーター63種類の機能を評価したところ、7種類vRNAPとそれに対応する23種類のプロモーターが機能することを見出した。とくにT7M、MmP1、YeO3-12およびPhi15 RNAPは青色光特異的に高い活性を示し、その中でもPhi15 RNAPはT7 RNAPと同等以上の活性を有していた。また、産業的に利用されている16種類の放線菌由来分泌酵素群を本系による生産性を評価したところ、9種類の分泌酵素の生産が確認された。ロイシンアミノペプチダーゼの生産は最大約58倍の光誘導生産とその大量生産が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. プラスミド型LiEXシステム 当初計画していた自立複製型プラスミドpLit19の構築に成功し、その有用性も確認された。具体的には、細胞内酵素としてカテコール2,3-ジオキシゲナーゼ、β-グルクロニダーゼ、カルボニックアンヒドラーゼ、GFP、mCherry、Tat経路分泌酵素としてラッカーとアルカリホスファターゼ、Sec経路分泌酵素としてトランスグルタミナーゼとβ-キシラナーゼ、分泌経路不明のキシロースイソメラーゼとアラビノフラノシダーゼの大量生産に成功した。二次代謝産物としてはMelC1・C2によるメラニン、RppAによる茶褐色色素フラビオリン、IndCによるインディゴイジン、経路特異的アクチベーターの発現によるアクチノロージン生産に成功した。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム 上記と同一の細胞内酵素と分泌酵素の大量生産に成功している。さらに、光スイッチLitRシステムとT7RNAP、Phi15RNAP、YeO3-12RNAPとのいずれかのペアによって転写レベルを大幅に増幅できることを見出している。さらに、プロモーター認識性を解析したところ、お互いにクロス認識せず、それぞれのプロモーター認識性が極めて高いことを明らかにした。このことは、1細胞内でT7RNAP、Phi15RNAP、YeO3-12RNAPを発現させた場合に独立的に機能することを意味しており、マルチプレックス制御の基盤を構築できた。
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今後の研究の推進方策 |
1. プラスミド型LiEXシステム (1)放線菌制限-修飾系 放線菌ゲノムメチル化を担うメチラーゼ遺伝子を導入した大腸菌株を構築し、DNA導入効率の高い大腸菌-放線菌間接合伝達法を確立することで、pLit19が機能する放線菌種を拡張する。 (2)セファマイシン生産菌Streptomyces sp. NBRC13304株がプラスミドのマルチ共存ホストに非常に適することを見出している。現在までに確立した3種共存から拡大して4種共存系を確立する。その有用性試験として、4種類の酵素によって合成されるフラボノイド「ナリンゲニン」を例に、各遺伝子を各プラスミドから発現させることでナリンゲニン合成を解析する。また、本菌のゲノム配列を解読することでホストとしての利用性を高める。 2. ゲノム組込み型LiEXシステム (1)転写ブースターとして、T7RNAP、Phi15RNAP、YeO3-12RNAPがプロモーターを相互認識することなく、独立的にS. griseus内で機能することを見出している。最終的には4種の刺激・物質による独立的な制御を目標としていることから、さらに最低でも1種類のファージRNAPを同定する。 (2)センサースイッチとして、これまでに芳香族化合物や糖類分解に関わるセンサー型レギュレーター、T7RNAP、緑色蛍光タンパク質を組み合わせることで、ケミカルバイオアッセイ系を確立できている。そこで、S. griseusにおいて感度よく高い発現レベルで誘導できるセンサー遺伝子/化合物ペアを同定する。光スイッチを含めて4種センサーおよびファージRNAPを組み合わせることによって、4種刺激によって独立的に制御できるマルチプレックス制御系の基礎を作る。
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