研究課題/領域番号 |
23K23520
|
補助金の研究課題番号 |
22H02253 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
|
研究機関 | 東京工業大学 (2022, 2024) 東北大学 (2023) |
研究代表者 |
門倉 広 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (70224558)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
|
キーワード | 哺乳動物細胞 / 小胞体 / ジスルフィド結合 / フォールディング / 物質生産 / 哺乳動物 / 分泌タンパク質 / 還元力 / PDI |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト体内に入ってきた病原体などの異物の排除に働く抗体など、分泌タンパク質の多くが機能するためには、分子内の正しい位置にジスルフィド結合が導入される必要がある。本研究では、分泌タンパク質に効率よくジスルフィド結合を導入するためにヒト細胞が進化の過程で獲得してきた仕組みを解明する。その解析から、関連する病気の原因の解明やヒト由来の有用タンパク質を微生物で効率よく生産するための有用な知見を得る。
|
研究実績の概要 |
間違ったシステイン間に形成されたジスルフィド結合を修復するために必要な還元力を、小胞体内に効率よく供給するためには、小胞体膜タンパク質LMF1が必要になるが、還元力をLMF1から分泌タンパク質に輸送する仕組みは、不明である。そこで、2022年年度には、LMF1から直接還元力(電子)を受け取るタンパク質を同定することにした。そのためには、このような反応の際には、還元力の供与側と受け手側のタンパク質が、分子間ジスルフィド結合で連結した中間体が形成することを利用した。そこで、LMF1がシステインを介して相互作用するタンパク質をタグを利用してヒト由来の細胞中から精製後、質量分析によって分析することで、多数の候補タンパク質を同定した。また、大腸菌で発現精製したヒトLMF1のC末端ドメインをウサギに免疫することで、LMF1に対する抗体を取得した。 LDLRは、LDLコレステロールを細胞内への取り込むタンパク質である。ジスルフィド結合は、7個のRドメインと3個のEGFドメインの各々に3本ずつ存在する。申請者らは、Rドメインには、まず、非天然型のジスルフィド結合が導入されるが、下流のβプロペラ領域の約半分が合成されると、天然型の結合へと効率よく組み換えられることを発見している。このような、βプロペラによる上流ドメインの折りたたみ促進のメカニズムを理解するためには両者の間に直接的な相互作用が存在するのかを知ることが肝要である。そのために必要な材料を得る目的で、2022年度にはRドメインをMBP、βプロペラをGSTとの融合タンパク質として大腸菌中で発現し、精製した。 更に、リボソームによって翻訳合成されつつ、小胞体内に送り込まれてくる分泌タンパク質の新生鎖にジスルフィド結合が導入され、正しい構造へと折り畳まれる過程を詳細に調べるための独自の手法についてまとめて、和文誌「化学と生物」に発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は質量分析法によってLMF1と分子間のジスルフィド結合で相互作用するタンパク質の候補を多数同定することに成功した。今後、この相互作用の意義を調べることで、LMF1の生理機能を理解するうえで極めて重要なヒントが得られると期待される。更に、LMF1に特異的な抗体を取得することに成功した。本抗体を使ってLMF1のノックダウン効率の確認やマウスにおけるLMF1の組織分布を調べることで、LMF1の生理機能を理解する上で重要な情報が得られる筈である。また、LDLRの上流領域とβプロペラ領域をそれぞれ別々に大腸菌で発現し精製することに成功した。今後、両タンパク質を用いることで、両者の相互作用を詳細に解析することができると期待される。これらは、研究を遂行するうえで大きな進展である。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は次の2つのアプローチによってタンパク質の正確で迅速なジスルフィド結合形成を可能にする仕組みを調べる。 1. 小胞体膜タンパク質LMF1から基質に至る還元力供給経路の解明 小胞体膜タンパク質LMF1は、ジスルフィド結合の組み換えに必要な還元力を小胞体に供給するが、その具体的な機能は不明である。LMF1の分子機能を明らかにするために、2022年度には、LMF1と直接相互作用するタンパク質の候補を多数同定した。2023年度は、これらのタンパク質が、LMF1から基質に至る還元力の供給経路上に存在するかを調べるために、siRNAを利用して当該タンパク質の発現を抑制した場合の影響を調べる。 2. 効率良いジスルフィド結合形成を可能にする新規メカニズムの解明 申請者等は、LDLRのβプロペラ領域には、上流のRドメインの折り畳みを促進する働きがあることを見出している。効率良いジスルフィド結合形成を可能にする、このメカニズムを理解するために、2022年度には、Rドメインとβプロペラ領域をそれぞれ別々の融合タンパク質として大腸菌で発現し、精製することに成功した。2023年度には折り畳まれる前のRドメインとβプロペラ間に、直接的な相互作用が見られるかどうかを、これらの精製タンパク質を利用した免疫沈降によって調べる。その結果、両者の間に相互作用が認められた場合には、βプロペラ中に変異を導入した場合の影響を調べる。また、申請者らは、Rドメインが正しく折り畳まれるためには、RドメインへのCa2+の配位が必要なことを示唆する結果も得ている。よって、相互作用の解析の際には、Ca2+の有無の影響も検討する。以上のような解析から、タンパク質の効率良い折り畳みを促進するためにLDLRの新生鎖上に進化の過程で獲得されてきた配列の働きや分泌タンパク質の折り畳みにおけるCa2+イオンの役割を理解する。
|