研究課題/領域番号 |
23K23522
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補助金の研究課題番号 |
22H02255 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中道 範人 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90513440)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 植物 / 概日時計 / ダイナミクス / タンパク質 / 生物時計 / 低分子化合物 / 生物活性化合物 / 環境変化 / 転写ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では, 時計コアサーキットに含まれるPRR5, TOC1, PRR7を始めとした時計タンパク質の分解・細胞内局在・翻訳後修飾・タンパク質間相 互作用などのダイナミクスを丁寧に記述するとともに, そのダイナミクスを決めるしくみを解明する. その理解を基盤として, 長らく未解明の 課題として残されていた「外環境に応答しつつも安定的な周期を生み出すしくみ(位相の応答性, 周期の温度補償性)」の解明を目指す. 本年度はPRR5とTOC1のリン酸化を担う酵素の解析を行う. 酵素活性や酵素の発現量などが環境によって変化するかを解析する.
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研究実績の概要 |
我々の発見した植物の時計周期延長化合物BML-259は、サイクリン依存性キナーゼC(CDKC;1およびCDKC;2)のリン酸化活性を阻害する。CDKCは基本転写因子RNA Polymerase IIのC末端リピートをリン酸化し、転写活性を制御している。BML-259の処理は、時計関連遺伝子を含む多くの遺伝子の発現を抑圧する。このBML-259の構造活性相関研究から、より活性の強い低分子化合物TT369を見出した。しかし、以前報告した動物のCDKを用いた結合モデル(Uehara et al., Plant Cell Physiol., 2022)では、TT369の強い活性の理由を説明できなかった。そこで、新たにシロイナズナのCDKC;2の構造をホモロジーモデリングで構築し、TT369やBML-259との結合を統計的に検討することとした。その結果、TT369はBML-259よりも、安定的にCDKC;2に結合することが示唆された(Saito, Maeda, Takahara et al., Plant Cell Physiol., 2022)。 時計関連転写因子のPRR7の安定性に影響を与える低分子化合物を見出している。また植物体内でPRR7に相互作用するタンパク質を複数同定することができた。In silico解析から、低分子化合物はPRR7タンパクに結合する可能性は極めて低いと示唆された。 植物の時計を調節する、もしくは影響を与える低分子化合物や、その化合物の作用機序についての総説を発表した(Nakamichi et al., New Phytologist, 2022)。時計関連遺伝子の変異が、穀物の栽培地域の拡大に貢献したという知見を取りまとめた総説を発表した(Maeda and Nakamichi, Plant Physiology, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
時計周期延長化合物BML-259の構造活性相関から得られたより強い活性の化合物TT369の活性を新たな構造モデリング法を用いて統計的に評価することができた。この方法は、別の生物活性化合物の標的への作用を理解するうえでも適用できるものであり、本研究課題のさらなる推進に寄与すると期待される。 また過去の文献から予想されていたPRR7の分解システムが、我々の見出していた化合物を起点とする研究によって明らかになりつつある。この過程で、生物活性化合物あるいは着目するタンパク質の生体内での相互作用因子を決定できる技術開発が進められたが、この方法も本研究で取り扱う別のテーマにも利用できるものである。 以上、個別の研究で進展があったが、その過程で、汎用性の非常に高い生化学やオミクスに関連した技術開発が確立できた。新たに確立された技術によって、本研究課題での別テーマの研究もよりスムーズに進められると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに同定したPRR7の相互作用因子の機能解析を行う。この中には、PRR7の分解、PRR7の転写因子としての機能に重要だと期待される因子が含まれているため、それらを中心に研究を進める。PRR7の分解に関わる可能性の因子については、タグ付きPRR7を発現する株において、分解因子遺伝子群の変異をゲノム編集技術によって導入する。この変異体におけるPRR7のタンパク質の量を解析する。明条件に比べて暗条件でPRR7の分解は進むため、異なる光条件下でのPRR7の存在量を解析する。分解候補因子によるPRR7の認識のメカニズムを解明する。PRR7のどのドメイン・領域が分解候補因子によって認識されているかを解析する。PRR7の転写因子としての機能発揮に関わると予想される因子についても、変異体を作出し、その表現型を解析する。PRR7複合体の、植物体内および試験管内における転写抑制活性を評価する予定であるが、試験管内の実験については実験系の立ち上げから行う予定である。 周期延長もしくは短縮効果のある低分子化合物の多面的なプロファイリングを行い、それらの作用機序を明らかにすることを目指す。プロファイリングによって、化合物の作用機序経路の中で機能するタンパク質や遺伝子が発見されれば、それを起点として経路の解明が期待される。また、環境変化にたいする時計の応答を意識し、タンパク質や遺伝子の性質を理解していく。
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