研究課題/領域番号 |
23K23528
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補助金の研究課題番号 |
22H02261 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
沖野 望 九州大学, 農学研究院, 准教授 (90363324)
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研究分担者 |
角田 佳充 九州大学, 農学研究院, 教授 (00314360)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 細菌スフィンゴ糖脂質 / 細胞外小胞 / 糖転移酵素 / 高次構造解析 / スフィンゴ糖脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、細菌由来のグリセロ糖脂質やスフィンゴ糖脂質の合成酵素に着目して、細菌糖脂質の合成マシナリーと生物機能の活用を目的とした基盤研究を展開する。具体的には、(1)緑膿菌に見出した新規グリセロ糖脂質と細菌スフィンゴ糖脂質の合成マシナリーとその生物機能を解明する。(2)それら糖脂質の生物機能の活用を目指した研究基盤を構築する。本研究の成果は細菌糖脂質に着目した新奇抗生物質の開発や細菌糖脂質の新たな生物機能の解明に繋がる。
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研究実績の概要 |
本研究では、細菌由来のグリセロ糖脂質やスフィンゴ糖脂質の合成酵素に着目して、細菌糖脂質の合成マシナリーと生物機能の活用を目的とした基盤研究を展開する。本研究の成果は細菌糖脂質に着目した新奇抗生物質の開発や細菌糖脂質の新たな生物機能の解明に繋がる。 本年度は細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立とその高次構造解析を計画していた。 細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立に関しては、出芽酵母、ラビリンチュラ類、麹菌を用いて、細菌由来のセラミドガラクトース転移酵素(Cer-GalT)を発現させ、それぞれのCer-GalTの発現株から、脂質を抽出して、構造を解析した。その結果、Cer-GalTの発現を試みた全ての微生物において、ヘキソシルセラミドの生産が確認出来た。また、ラビリンチュラ類に関しては、細胞外小胞の利用を目指して、ラビリンチュラ類から細胞外小胞を調製する方法を確立し、Cer-GalTの発現株から調製した細胞外小胞の脂質組成を調べたところ、ヘキソシルセラミドを含有することが明らかになった。 新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析に関しては、これまでに角田教授との共同研究により、Sphingobium yanoikuyae 由来のGlcACer合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析により、その全体構造を明らかにしている。本研究では、基質との共結晶を作成して詳細な基質認識機構を明らかにすることを目標として、研究を進めた。まず、SyCer-GlcATの結晶を再現よく取得するために、酵素のアミノ酸配列を改変し、結晶化の実験を実施したところ、新たに結晶を取得することが出来た。また、SyCer-GlcATの高次構造情報を基にしたアミノ酸配列の比較により、新たにガラクツロン酸に対する特異性を示す糖転移酵素の同定に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立とその高次構造解析に取り組んだ。 細菌スフィンゴ糖脂質の微生物による生産基盤の確立のに関しては、出芽酵母、ラビリンチュラ類、麹菌を用いて、細菌由来のセラミドガラクトース転移酵素(Cer-GalT)を発現させた。Cer-GalTの発現株から、脂質を抽出して、それらの構造を解析した。その結果、発現を試みた全ての微生物において、ヘキソシルセラミドの生産が確認出来た。さらに、Cer-GalT発現株から抽出した脂質画分を用いてNKT細胞の活性化実験を実施したところ、全てのCer-GalT発現株由来の脂質画分にNKT細胞の活性化能があることが分かった。また、ラビリンチュラ類に関しては、細胞外小胞の利用を目指して、ラビリンチュラ類から細胞外小胞を調製する方法を確立した。加えて、Cer-GalTの発現株から調製した細胞外小胞の脂質組成を調べたところ、野生株には存在しないヘキソシルセラミドを含有することが明らかになった。 一方、新規スフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造解析に関しては、これまでにSphingobium yanoikuyae 由来のGlcACer合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析に成功している。そこで本年度は、基質との共結晶の作成作成を目指して研究を進めた。まず、SyCer-GlcATの結晶を再現よく取得するために、酵素の安定化に関与するようなアミノ酸に着目してアミノ酸配列を改変し、結晶化の実験を実施したところ、新たに結晶を取得することが出来た。また、SyCer-GlcATの高次構造情報を基にしたアミノ酸配列の比較により、新たにガラクツロン酸に対する特異性を示す糖転移酵素の同定に成功した。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は微生物生産した細菌スフィンゴ糖脂質の機能解析と細菌由来スフィンゴ糖脂質合成酵素の基質特異性の解明を計画している。 (1)微生物生産した細菌スフィンゴ糖脂質の機能解析 本研究計画では、細菌スフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子を真核微生物で発現させることにより生産した細菌スフィンゴ糖脂質の機能解析を行う。具体的には出芽酵母やラビリンチュラ類で生産したセラミド構造が異なる細菌スフィンゴ糖脂質のNKT細胞活性化能をNKT細胞ハイブリドーマを用いて評価する。また、細菌スフィンゴ糖脂質合成酵素の遺伝子を発現させた出芽酵母やラビリンチュラ類から細胞外小胞を調製して、それらのNKT細胞に対する活性化能についても評価する。 (2)細菌由来スフィンゴ糖脂質合成酵素の基質特異性の解明 これまでにSphingobium yanoikuyae 由来のグルクロノシルセラミド合成酵素(SyCer-GlcAT)の結晶化と高次構造解析に成功しているので、今年度は昨年度に引き続き、基質複合体の解析を目的として研究を進める。また、AlphaFold2により、基質特異性が異なる細菌スフィンゴ糖脂質合成酵素の高次構造を構築し、SyCer-GlcATとの比較により、基質特異性に関与するアミノ酸を特定し、アミノ酸を改変することで、検証を行う。さらに、新たに取得した細菌スフィンゴ糖脂質合成酵素に関しても大腸菌で発現・精製することにより結晶化に取り組む。
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