研究課題/領域番号 |
23K23533
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補助金の研究課題番号 |
22H02266 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹下 浩平 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (80346808)
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研究分担者 |
浜口 祐 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00587876)
清水 伸隆 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (20450934)
吉見 一人 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50709813)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
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キーワード | Cas3 / タンパク質科学 / 構造生物学 / ゲノム編集 / X線結晶構造解析 / 小角散乱 / 単粒子解析 / ゲノム編集タンパク質 / 相関構造解析 |
研究開始時の研究の概要 |
クラス1タイプIに属するCRISPR-Cas3システムを用いた真核細胞における国産ゲノム編集ツールの開発が進んでいる。クラス2タイプIIのCas9は二本鎖DNAを切断して小さな欠失変異を導入するが、Cas3は数百~数キロに渡る大規模欠失変異を導入する。一方で二次的なDNA切断によって予期せぬ欠失変異が懸念される。この二次的なDNA切断活性の発現メカニズムを理解できれば、より安全なゲノム編集ツールとして開発が可能であるが、そのメカニズムは未だ不明である。本研究では構造解析を行い二次的なDNA切断活性を欠損させた大腸菌由来Cas3改変体の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
近年、クラス1タイプIに属するCRISPR-Cas3システムを用いた真核細胞における国産ゲノム編集ツールの開発が進んでいる。Cas3は、標的DNAと相補的なcrRNAを結合したCascadeが標的DNA領域に結合したサイトに結合し、数百~数キロに渡る大規模欠失変異を導入する。一方で二次的なDNA切断によって予期せぬ欠失変異が懸念される。この二次的なDNA切断活性の発現メカニズムを理解できれば、より安全なゲノム編集ツールとして開発が可能であるが、その二次的な活性は二本鎖DNAを切断するメカニズムにも重要であるため、ターゲットDNAのnon-target鎖を特異的に切断するメカニズム と、二次的な活性として機能するtarget鎖を切断する活性と非特異的にCas3近傍の一本鎖DNAを切断する活性のメカニズムの違いを詳細に理解する必要がある。そして、それらのメカニズムの使い分けを可能としている構造的特徴を捉え非特異的なDN切断活性を欠損させた新規かつ安全な大腸菌由来Cas3改変体を開発する。本研究では我々が開発した大腸菌由来Cas3の効率的生産システムにより得られた高品質なタンパク質を用い、未だ明らかとなっていない大腸菌由来Cas3の原子分解能での構造解析を行い、機能と密接に関係した構造的特徴を捉える。本年度までに単独ではコラテラル活性を示さない大腸菌由来Cas3と、単独でもその活性を示す好熱菌由来Cas3のSEC-SAXSを行い、EcoCas3のほうが分子内でゆらぎが大きいことを明らかにした。このゆらぎは分子内の長いループ領域に起因していると考えられる。さらにクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析を進め原子レベルでの構造情報を取得することを着実に進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小角散乱: ゲルろ過クロマトグラフィーと連結した小角散乱測定(SEC-SAXS)を用いて、結晶構造解析が報告されている好熱菌由来Case(TfuCas3)とEcoCas3の構造の差異について再試を実施し、前回までと同様の結果を得ることに成功した。結論的には、リコンビナントTfuCas3はその結晶構造に一本鎖DNAが結合しており、Cascade非依存的にDNAを切断することから、non-target鎖を切断後の状態を示し、EcoCas3はTfuCas3のような非特異的な活性は示さないが、その構造的理由は分子内のゆらぎが大きく、単独状態では基質DNAが結合できる電荷領域を形成しないと考えられる。本年度では、この実験の再現性の確認や計算処理の確認を実施した。 クライオ電子顕微鏡による単粒子解析: 去年度までの実験でEcoCas3結晶化は困難であると判断し、今年度はEcoCas3とその特異的な抗体Fab断片との複合体のクライオ電子顕微鏡観察に集中し単粒子解析を進めている。本年度では高分解能化のために撮影における試料バッファー条件の検討等を実施した。結果的には議論に必要な分解能まで向上していないが、R6年度では抗体Fab以外のリガンド等を検討し原子分解能レベルでの構造決定を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、2023年度の研究成果を踏まえ計画通りにEcoCas3の原子レベルでの構造決定を目指す。結晶化も検討中であったが本年度ではクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析による構造決定に注力する。またSEC-SAXSで得られた成果の論文化や、ゆらぎの大きな領域の変異体を作成しコラテラル活性ならびにDNA切断活性への影響を精査する。
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