研究課題/領域番号 |
23K23534
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補助金の研究課題番号 |
22H02267 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松浦 英幸 北海道大学, 農学研究院, 教授 (20344492)
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研究分担者 |
北岡 直樹 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (20785547)
久保 友彦 北海道大学, 農学研究院, 教授 (40261333)
黒田 洋輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (40595071)
柏木 純一 北海道大学, 農学研究院, 講師 (60532455)
北崎 一義 北海道大学, 農学研究院, 助教 (60532463)
橋本 誠 北海道大学, 農学研究院, 教授 (90292094)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | 抽台抑制 / 抽台抑制物質 / ジベレリン / ダイコン / 抽台 / 冬型1年草 / シロイヌナズナ / 抗抽台抑制化合物 / ビート |
研究開始時の研究の概要 |
植物の生活史には一年生、二年生、冬型一年生、多年生などがある。冬型一年生および二年生植物は、本来、夏に発芽し越冬した翌年に急激な花茎伸長(抽台)を伴う開花、種子形成を行う。よって、子孫を残す上で夏から秋の栄養成長期間中の抽台はご法度である。しかし、上記の植物が生活環を完結させるために必須な『抽台抑制』に関しては、その抑制機構の詳細が明らかでない。本研究では低分子生理活性物質を基軸に環境条件によって制御される植物の抽台抑制機構を明らかとする。また、抽台抑制物質の化学構造をもとに、実農業で利用可能な抽台抑制活性を有する植物化学調節剤開発にむけた学術基盤を構築する。
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研究実績の概要 |
植物の生活史には一年生、二年生、冬型一年生、多年生などがある。冬型一年生および二年生植物は、本来、夏に発芽し越冬した翌年に急激な花茎伸長(抽台)を伴う開花、種子形成を行う。よって、子孫を残す上で夏から秋の栄養成長期間中の抽台はご法度である。しかし、上記の植物が生活環を完結させるために必須な『抽台抑制』に関しては、その抑制機構の詳細が明らかでない。本研究では低分子生理活性物質を基軸に環境条件によって制御される植物の抽台抑制機構を明らかとする。また、抽台抑制物質の化学構造をもとに、実農業で利用可能な抽台抑制活性を有する植物化学調節剤開発にむけた学術基盤を構築する。 2022年度の進捗として、脂肪酸惻鎖が飽和体のものは活性を示さないが、活性型のモノアシルグリセロールではジベレリンの生合成初期の段階を阻害し、活性型ジベレリンを不活性化する生合成後半の段階を活性化することを明らかにすることができた。しかしながら、合わせて行ったシロイヌナズナを用いたRNAseq解析からは活性型ジベレリンを不活性化する生合成後半の段階が、より重要であると明らかになった。また、抽台抑制物質結合タンパクを検出するためのプローブについては、アジリジン基を有する化合物の合成に成功した。本化合物に関しては、抽台抑制物質が有するシロイヌナズナ発芽後の伸長阻害活性を同様に有することも明らかとできた。既存の抽台抑制物質と類似の化合物の単離を行い、12-oxo-phytodienoic acidを惻鎖に有するα-モノグリセリドの単離精製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【A. ABCの葉部から茎頂部への移動】に関しては、本学農学部のアイソトープ施設が閉鎖になり、合成を断念したが、目的化合物の検出の際の精製法を改良し、感度よく測定できる精製法を検討することとした。【B. 植物に存在するABC関連物質の探索】に関しては、シロイヌナズナより新たに12-oxo-phytodienoic acidを惻鎖に有するα-モノグルコシドの単離精製に成功し、現在、絶対配置について検証を行なっているところである。さらにはダイコン葉よりjasumonic acidを惻鎖に有するα-モノグルコシドの単離精製を進めているところである。【C. ABCを受容するタンパク質とその機能】については、当初の目的としていた、抽台抑制化合をミミックしたアジリジン惻鎖を有する化合物の合成に成功した。本化合物は抽台阻害物質と類似の活性を有することも明らかとできた。【D. シロイヌナズナ抽台誘導に関与する、ABC分解酵素をコードする遺伝子の探索】については、シロイヌナズナを用いたRNAseq解析より、モノアシルグリセロールを加水分解する酵素(MGL6)および、活性型のジベレリンを不活性化するGA2oxの働きが重要であることが明らかとなった。【E. 早抽性および晩抽性ビートにおける遺伝子特性】については、テンサイにおける、GA2ox遺伝子に注目し検討を行っている。【F. 実農業で利用可能な、栄養成長期の抽台を抑制する植物化学調節剤の特性】については、圃場実験を行ったが、2021年度に行った実験と比べ、再現性は得られなかったが、望ましい効果があるであろうと示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
【A. ABCの葉部から茎頂部への移動】に関しては、感度よく測定できる精製法を検討することとした。これを実現すべく精製段階を増やし、中性の性質を利用した精製カラムや、より温和な条件で濃縮するなど方策を検討する。【B. 植物に存在するABC関連物質の探索】に関しては、シロイヌナズナより新たに12-oxo-phytodienoic acidを惻鎖に有するα-モノグルコシドの単離精製に成功したことから、論文化に向け執筆の作業に入る。また、現在、現在進めているダイコン葉からのjasumonic acidを惻鎖に有するα-モノグルコシドの単離精製を完結する【C. ABCを受容するタンパク質とその機能】については、当初の目的としていた、抽台抑制化合をミミックしたアジリジン惻鎖を有する化合物の合成に成功したことから、植物の祖蛋白溶液を用いて、抽台抑制物質を受容するタンパク質の検出を試みる。【D. シロイヌナズナ抽台誘導に関与する、ABC分解酵素をコードする遺伝子の探索】については、シロイヌナズナを用いたRNAseq解析より、モノアシルグリセロールを加水分解する酵素(MGL6)および、活性型のジベレリンを不活性化するGA2oxの働きが重要であることが明らかとなった。これらの遺伝子をターゲットとして変異体等を用いてさらに研究を進める【E. 早抽性および晩抽性ビートにおける遺伝子特性】については、テンサイにおける、GA2ox遺伝子に注目し、早晩抽性の品種間の比較を行う。【F. 実農業で利用可能な、栄養成長期の抽台を抑制する植物化学調節剤の特性】については、圃場実験を行ったが、2021年度に行った実験と比べ、再現性は得られなかった。よって、より強い活性を導き出すためにジベレリンの活性を減弱させる様な薬剤と共に葉面散布を行う予定である。
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