研究課題/領域番号 |
23K23539
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補助金の研究課題番号 |
22H02272 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38040:生物有機化学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
轟 泰司 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (30324338)
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研究分担者 |
竹内 純 静岡大学, 農学部, 准教授 (00776320)
岡本 昌憲 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (50455333)
大西 利幸 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (60542165)
山根 久代 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80335306)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2026年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
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キーワード | アブシシン酸 / 二次休眠 / 阻害剤 / 生合成 / 代謝 / 配糖化 / ABA |
研究開始時の研究の概要 |
アブシシン酸(ABA)は種子の一次休眠や非生物的ストレス応答に重要な役割を果たしている植物ホルモンであり,その機能を制御する技術の開発は農業分野における気候変動・温暖化対策の一つとして期待される。ABAは二次休眠誘導にも関わっていると考えられているため,本研究では,ABA生合成代謝に関わる酵素の阻害剤を創出して,これを活用することで二次休眠誘導におけるABA,ABA生合成前駆体およびABA供給経路の役割を評価する。さらに,二次休眠誘導を人工的に制御する化合物を創出し,そのポテンシャルをモデル植物を越えて評価することで,社会実装の可能性を追求する。
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研究実績の概要 |
(1)ABA2の基質特異性に基づき,最も良い基質であるキサントキシン酸メチル(MeXA)の構造を模倣しつつも,ABA2の基質にはならずにABA2触媒残基の一つであるTyr側鎖と強く相互作用する化合物INABA2nシリーズを数種設計合成し,その中の1つINABA28MEがABA2を強く阻害し,浸透圧ストレス下におかれた植物中のABA内生量増加を濃度依存的に抑制することを明らかにした。さらに,ABA2-INABA28ME複合体結晶構造の解明にも成功し,4量体の構成分子間の相互作用が阻害剤認識に重要な役割を果たしていることなど,今後のABA2阻害剤創出研究に有用な構造的知見を得た。 (2)キサントキシン(Xan)類の重水素標識体の合成に成功し,これを活用することで,これまでABA生合成前駆体として明確な位置付けがされていなかったキサントキシン酸(XA)がシロイヌナズナに内生することを初めて明らかにした。さらに,Xanの生成と代謝に関わる酵素遺伝子変異体中のXA内生量も測定し,いずれの変異体でも野生株中と同じかむしろ増加していることを明らかにした。この結果から,XAはXanではなく別のアポカロテノイドに由来するABA前駆体である可能性が浮上した。 (3)既創出のBGLUs阻害剤の再合成を実施するとともに,阻害活性の増強と合成コストの削減を目的とした構造改変を検討した。 (4)非アゾール系CYP707As阻害剤BPpNCとTPpNCの創出に成功した。これらの化合物は研究代表者らが過去に創出したアゾール系CYP707As阻害剤よりも活性が高く,浸透圧ストレス下におかれた植物中のABA内生量を著しく増加させ,植物種子にABAと共処理したときにABAによる発芽阻害を増強することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022-2023年度は,ABAの生合成・代謝に関わる酵素すべての阻害剤を創出する計画であり,2023年度末までにABA2,AAO3,CYP707A,配糖化と配糖体加水分解の阻害剤をほぼ創出することができた。9-cis-エポキシカロテノイドからXanを切り出すNCEDの新規阻害剤創出は未達であるが,これに関しては既知阻害剤の合成を2024年度初頭に実施することで対応する。また当初計画にはなかったが,ABA2阻害剤創出研究の副産物として,キサントキシン酸(XA)が植物に内生することを初めて明らかにし,XAがABAの新規生合成経路の前駆体であることを示唆する実験結果を得ることができた。以上,当初計画通りに順調に進んでいる上に,XAという新たな視点も加えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)NCEDsの既知阻害剤を合成する。(2)ABA2阻害剤とABA2との複合体結晶構造に基づいて構造改変を実施し,活性増強を目指す。阻害剤としての機能をABA2酵素アッセイで検証するとともに,非ストレス下ならびにストレス下における生物試験に供して,種子の環境休眠・二次休眠に対する影響を査定し,種子休眠におけるABA2の役割を考察する。(3)XAが植物の内生物質であり,XAがABA2によってABAに変換された一方,XAはXan代謝物ではなく,未知のABA生合成経路の前駆体である可能性が浮上したため,XAの前駆体になる可能性が高いアポカロテノイドの重水素標識体を合成し,これが植物体によってXAに変換されるか否かを指標にしてXA前駆体探索を実施する。XAを経由するABA生合成にはアルデヒド酸化酵素AAO3は不要であるため,AAO3とその活性化に関わる酵素の変異体種子を活用して,種子の二次休眠ならびにABA恒常性におけるXAの役割を調査する。(4)AAO3を異種発現して酵素試験系を構築し,酵素レベルで阻害剤の活性を検証する。(5)UGTsおよびBGLUsを異種発現して酵素試験系を構築し,阻害剤の機能を詳細に検証する。(6)CYP707As阻害剤の実用利用を念頭において,オオムギの穂発芽防止に有効であるかどうかを調査する。(7)果樹の花芽形成時期の制御剤としての応用展開を模索する。
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