研究課題/領域番号 |
23K23547
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補助金の研究課題番号 |
22H02280 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
繁森 英幸 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70202108)
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研究分担者 |
落石 知世 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30356729)
平 修 福島大学, 食農学類, 教授 (30416672)
宮前 友策 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30610240)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | アミロイドポリペプチド / 食素材由来化合物 / アルツハイマー型認知症 / イメージングMS / ADモデルマウス / 認知機能改善 / 肝細胞増殖因子 / アミロイドβ / ヒト膵島アミロイドポリペプチド / clovamide / SAMP8 / HGF |
研究開始時の研究の概要 |
アルツハイマー型認知症(AD)と2型糖尿病(T2D)は連関しており、両疾患の原因の1つにアミロイドポリペプチド(AβやhIAPP)が関与しており、生体内で共凝集することが知られている。そこで本研究では、食素材由来化合物からAD予防を目的とする多元的評価法[AβおよびhIAPP凝集阻害・脱凝集活性、肝細胞増殖因子産生促進活性ならびにオートファジー制御活性]を用いて活性化合物を探索する。また、ADモデルマウスに食素材由来化合物を摂取させて認知機能改善効果を調べるとともに、イメージングMSを用いてマウス脳切片におけるアミロイドポリペプチドの蓄積状況を可視化することで認知機能改善効果の機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究では多元的評価法を用いた認知機能改善に関わる食素材由来化合物の機能を解明することで、ADの予防に貢献することを目的とする。まず、Aβ凝集阻害活性試験により、procyanidin類、stilbenoid類、p-terphenyl化合物、meroterpenoid類およびanthocyanin類に顕著な活性を見出し、構造活性相関より活性発現にはカテコール構造が重要であることを見出した。また、これらの化合物にはヒト膵島アミロイドポリペプチド(hIAPP)の凝集阻害も有することを見出した。また、clovamideならびに3,4-dihydroxybenzalacetoneを用いてAβやH2O2からの神経細胞保護効果を調べた結果、活性発現にはカテコール構造が重要であることを見出した。一方で、肝細胞増殖因子(HGF)の産生を促進する食素材由来化合物として見出したclovamideについてHGF産生促進活性に関わる経路の解析を行った結果、PKAおよびp38経路を活性化してHGF遺伝子の転写を誘導することでHGF産生を促進していることを明らかにした。さらに、clovamideの認知機能改善効果を解析するため、老化促進マウスSAMP8に当該化合物を投与し、認知機能に関する行動解析およびAβ凝集体の分解能について解析を行った。その結果、マウスの運動能力や不安関連行動に群間で有意な差は認められなかったが、認知機能は短期記憶で有意な改善が認められた。また、投与によるAβの凝集状態の変化を調べるため各投与群の海馬および大脳皮質の組織を用いてELISAを用いて解析した結果、脳内の不溶性Aβの量が減少し、可溶性Aβが増加する傾向が認められた。さらに、このマウスの脳切片のイメージングMS解析の結果、clovamide の摂取濃度依存的に脳内のAβ42が減少することが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Thioflavin Tアッセイならびに透過型電子顕微鏡(TEM)観察法を用いて食素材由来化合物のAβならびにhIAPP凝集阻害活性を調べた結果、褐藻ノコギリモク由来meroterpenoid化合物に顕著な凝集阻害活性を見出し、キノン構造よりもハイドロキノン構造の方が活性が高いことを明らかにした。ヒト由来皮膚線維芽細胞を用いてclovamideのHGF産生促進活性の作用機序の解析を行った結果、protein kinase A (PKA)およびp38の阻害剤処理によりHGF産生促進活性が阻害された。また、clovamide処理によりcAMP応答性配列(CRE)結合タンパク質ならびにp38のリン酸化が亢進されたこと、さらに両経路の阻害剤処理により、いずれのタンパク質のリン酸化が抑制されたことから、clovamideは、PKAおよびp38経路を介してHGF産生を促進することが明らかにした。一方、オートファジー誘導剤探索のため、HiBit-LC3レポーターを安定発現する細胞株の樹立を行った。 また、生後6ヶ月齢のSAMP8マウスに0、10および100mg/kgのclovamideを30日間経口投与し、オープンフィールドテストおよび新奇物体認識テストを行った結果、マウスの運動能力や不安関連行動に群間で有意な差は認められなかったが、認知機能は短期記憶で有意な改善が認められた。また、各投与群の海馬および大脳皮質の組織を用いてELISAを用いて解析した結果、脳内の不溶性Aβの量が減少し、可溶性Aβが増加する傾向が認められた。さらに、上記のSAMP8マウスの脳切片をイメージング質量分析にて分析した結果、大脳皮質において10 mg投与で14%、 100 mg投与で23%、海馬においては10 mg投与で22%、100 mg投与で43%、Aβ42が減少していることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
Th-TアッセイならびにTEM観察法を用いて食素材由来化合物についてAβならびにhIAPP凝集阻害活性を調べ、新たな活性物質を探索する。得られた活性物質についてSH-SY5Y細胞を用いた神経細胞保護活性を調べる。また、活性物質については、HGF産生促進活性ならびにオートファジー誘導活性を調べる。さらに、引き続きclovamideのHGF産生促進活性における作用機序の解析を行う。昨年度の結果を踏まえ、SAMP8マウスを用いて、新奇物体認識テストにおける、長期記憶について個体数を増やして同様の解析を行う。また、ELISA法によるAβの分解能の解析についても個体数を増やしてこれまで得られた結果を検証する。さらに、個体数を増やした状態の脳切片を用いてイメージングMSによるAβ42の蓄積状況ならびに他のAβ種についてもイメージングを行う。
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