研究課題/領域番号 |
23K23551
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補助金の研究課題番号 |
22H02284 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
好田 正 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20302911)
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研究分担者 |
服部 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40221501)
築地 信 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (90302611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2026年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | アレルギー / B細胞 / アレルゲン特異性 / レパトア / 遺伝 / B細胞レパトア |
研究開始時の研究の概要 |
食品アレルギーの患者は全ての食品にアレルギーを起こすわけではなく、人によってアレルゲンとなる食品は厳密に異なっている。しかし、個々の患者がどの食品にアレルギーを起こすのかがどのようなメカニズムで決まるのかは全く明らかになっていない。本研究では、各患者の体内に存在するB細胞の多様性(レパトア)に着目し、マウスをモデルとして用い、個人におけるレパトアの偏りがアレルギーを起こす食品の決定に関与しているかどうかを検証する。
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研究実績の概要 |
本研究では、アレルギー患者におけるアレルゲン特異性の決定機構を解明することを目的として、遺伝的背景の関与をB細胞のレパトアに着目して解析している。 昨年度はまず始めに、B細胞レパトアの解析に必要な一細胞RNAシークエンスの技術を確立し、3系統のマウスを用いて抗原未感作なIgM陽性B細胞のレパトアを解析した。その結果、IgM陽性未感作B細胞の重鎖レパトアは系統ごとに大きく異なっていた。この結果は、B細胞レセプターの遺伝子の再構成はランダムに起こるとされてきた従来の定説とは異なる画期的な発見である。また、解析した3系統のうちC57BL/6は多様性に富むレパトアを有していたのに対し、BALB/cとNC/Ngaは特定のVセグメントを使用したB細胞の割合が高く、そのVセグメントは両系統で共通していた。 このような生まれながらにして持っているB細胞レパトアの違いがアレルゲン特異性の個人差に関与している可能性が考えられる。 次に、BALB/cとNC/Ngaに卵白アルブミン(OVA)を免疫し、OVA特異的なIgG1およびIgE陽性B細胞を分取して一細胞シークエンスに供したが、IgE陽性B細胞として分取した画分に実際にはIgE陽性B細胞が含まれていなかった。一方で、IgG1陽性B細胞のレパトアは上述のIgM陽性未感作B細胞のレパトアとは大きく異なっており、生来的に存在するB細胞レパトアのうち、特定のB細胞がOVA特異的IgG1陽性細胞へ分化しやすいことが明らかとなった。この際、OVA特異的IgG1陽性B細胞のレパトアは系統により異なっていた。 今後はIgE陽性B細胞の分取技術を確立して、IgG1陽性B細胞のレパトアとの差異を確認するとともに、IgM陽性未感作B細胞のレパトアにおける各レパトアの存在比を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の遂行において、初年度に予定していたIgE陽性B細胞のレパトア解析の結果を得ることができなかった。これは単にIgE陽性B細胞の存在頻度が低かったことによるものではなく、IgE陽性B細胞の検出精度が低かったことによると考えている。今年度は、IgE陽性B細胞の検出精度を向上させることを目標の一つとして研究を実施する。 一方で、抗原特異的なIgM陽性B細胞とIgG1陽性B細胞については、分取と一細胞シークエンスに成功し、レパトアを解析することができた。その結果、IgM陽性細胞とIgG1陽性細胞ではレパトアが異なっていることが明らかとなった。この結果は異なる2系統(BALB/cとNC/Nga)で確認された。この結果はこれまでに知られていなかった新しい知見である。しかしながら、IgMとIgG1は分化誘導のメカニズムが大きく異なっているため、両者でレパトアが異なっている原因は一つとは限らない。すなわち、両者でレパトアが異なっていたからといって必ずしもIgG1とIgEのレパトアも異なっているとは言い切れない。次年度以降に、IgE陽性B細胞の分取と一細胞シークエンスを成功させることで、IgG1とIgEのレパトアの差異を実証したい。 また、3系統のマウスを用いてIgM陽性抗原未感作B細胞のレパトア解析に成功した。購入直後のマウスの脾臓からIgM陽性B細胞を分取し、一細胞シークエンスに供したところ、3系統のマウスのレパトアが異なっていることを明らかにすることができた。これは遺伝的背景に基づき、抗原特異的な免疫応答の質に個人差が生じることを示しており、これまでの免疫学の定説とは異なる全く新たな発見である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度に解析することができなかったIgE陽性B細胞の分取法を確立する。今年度は分取したIgE陽性B細胞のほとんどがIgE以外のB細胞受容体を発現していた。これは、検出に用いた抗IgE抗体がIgE陽性B細胞以外のB細胞に結合していたためであると考えられる。そこで、IgE陽性B細胞の検出精度を向上するために、B細胞上に発現しているIgE受容体のブロッキングを行う。これにより、生体内で産生されたIgE抗体が受容体を介してIgE陽性B細胞以外のB細胞に結合することを防ぐことができるため、IgE陽性B細胞のみを特異的に分取することができると期待される。分取した細胞がIgE陽性細胞かどうかはRT-PCRおよびシークエンスにより確認する。この際、条件検討を一細胞シークエンスで行うと必要な細胞数が増え必要なマウスの頭数やシークエンス費用が増えてしまうため、まずは複数の細胞をソートしてバルク解析を行う。これにより、IgE陽性B細胞の分取法が確立された後に、一細胞シークエンスを行いレパトアを解析する。 また、今年度に明らかにすることができたIgM陽性抗原未感作B細胞のレパトアの個体差を確認する。今年度は3系統のマウスそれぞれについて2頭から得た脾臓細胞を混合してレパトア解析を実施した。その結果、3系統のレパトアが異なっていることを明らかにすることができたが、現状ではそれが系統差ではなく個体差であった可能性を否定することができない。そこで、論文作成に先立って、1系統に絞って個体差の有無を確認する。IgM陽性抗原未感作B細胞のレパトアの解析方法は既に確立している。
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