研究課題/領域番号 |
23K23558
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補助金の研究課題番号 |
22H02291 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38050:食品科学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
竹中 麻子 明治大学, 農学部, 専任教授 (40231401)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | タンパク質欠乏 / レプチン / 可溶性レプチン受容体 / leptin receptor / Ob-R / soluble Ob-R / protein deficiency |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、タンパク質欠乏時に肝臓のレプチン受容体(Ob-R)遺伝子発現が増加し、生成したOb-Rの細胞外ドメインが切り出されて可溶性Ob-R(sOb-R)となり、血中濃度が顕著に増加することを発見した。sOb-Rは血中でレプチンと結合し、レプチンの食欲抑制作用や脂質低下作用を制御すると予想される。そこで本研究では、タンパク質欠乏時に肝臓Ob-R発現が増加する機構について、転写因子ATF4、レプチンおよび成長ホルモンシグナルによる制御の可能性を検討する。さらに、野生型、ob/ob、db/dbマウスへのレプチン投与実験を行い、タンパク質欠乏時のsOb-R増加がレプチン作用に及ぼす影響を解析する。
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研究実績の概要 |
【タンパク質欠乏時の肝臓レプチン受容体(Ob-R)遺伝子発現増加および血中可溶性レプチン受容体(sOb-R)濃度増加機構の解析】 1)転写因子Activating Transcription Factor 4(ATF4)の関与:培養肝細胞(H4IIE)をアミノ酸欠乏培地で培養し、ATF4ノックダウンによりOb-R mRNA増加が消失するかを検討した。その結果、Ob-R mRNA発現量が低く、アミノ酸欠乏に応答したOb-R発現増加が検出できなかった。2)レプチンの関与:レプチン活性を欠くマウス(ob/ob、db/db)に対照食あるいは低タンパク質食(タンパク質含量20%、1%)を与えて7日間飼育した。ob/obマウスではタンパク質欠乏により肝臓Ob-R mRNA量が増加したものの、血中sOb-R濃度が増加しなかった。また、db/dbマウスでは肝臓Ob-R mRNA増加が生じなかった。これらの結果から、タンパク質欠乏による肝臓Ob-R mRNA、血中sOb-R増加にはレプチン活性が必要であることが明らかになった。 【血中sOb-R増加が投与レプチンの活性に及ぼす影響の解析】 1)C57BL/6マウスに対照食あるいはタンパク質含量5%の低タンパク質食を与えて7日間飼育した後、vehicleあるいはレプチン(2mg/kg体重)を4日間毎日腹腔内に投与した。低タンパク質食給餌群で血中sOb-R濃度が増加し、レプチン投与による摂食量低下が消失した。2)1)と同様の実験をob/obマウスで行った。低タンパク質食給餌群で肝臓Ob-R mRNA量が増加したが血中sOb-R濃度が増加せず、レプチン投与により顕著な摂食量低下がみられた。 1)と2)の結果から、タンパク質欠乏により投与レプチンの作用が抑制されること、また血中sOb-R増加がレプチン作用の抑制に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンパク質欠乏に応答した肝臓Ob-R mRNA量増加機構の解析において、レプチン作用を欠くdb/dbマウスでOb-R mRNA発現量が増加しないことを新たに見いだし、レプチンに依存した発現機構が存在する可能性を示すことができた。レプチンの関与について、今後さらに検討を進める必要がある。 また、ob/obマウスではタンパク質欠乏による血中sOb-R増加が生じないことを見いだし、血中sOb-R増加機構において翻訳後の段階でレプチンに依存した増加機構が存在することを示した。またob/obマウスがsOb-R増加を生じないモデルとなりうることが判明した。タンパク質欠乏により血中sOb-R濃度が増加するC57BL/6マウスでは投与レプチンの作用が抑制されたのに対し、血中sOB-R濃度が増加しないob/obマウスで投与レプチンの作用が抑制されなかったという結果から、血中sOb-R増加がレプチン作用を抑制する可能性を強く示すことができた。 一方で、培養細胞を用いたOb-R発現増加機構解析については大きな進捗が得られなかった。今後は、動物実験で得られたレプチンの関与の可能性を含め、Ob-R発現機構の解析をさらに進めていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
【タンパク質欠乏時の肝臓Ob-R遺伝子発現増加機構を明らかにする(培養細胞を用いて検討継続)】 2022年度に培養肝細胞をアミノ酸欠乏培地で培養したが、Ob-R mRNA発現が確認できず、mRNA量増加にはアミノ酸欠乏以外にも何らかの因子が必要である可能性が考えられた。一方、2022年度のdb/dbマウスの実験結果から、タンパク質欠乏時の肝臓Ob-R mRNA発現増加にはレプチン作用が必要である可能性が示された。そこで培養細胞を用いて、アミノ酸欠乏によるOb-R mRNA量増加がレプチン存在下で顕著に生じるかどうかを解析する。レプチン存在下でmRNA量の増加が見られた場合、レプチンシグナルとアミノ酸欠乏シグナルを解析することで、Ob-R mRNA発現増加機構をさらに解析する。
【レプチンの炎症作用に及ぼす影響の解析】 2022年度の研究成果から、血中sOb-R濃度の増加はレプチンの食欲抑制作用を低下させる可能性が示された。一方、タンパク質欠乏時には肝臓Ob-R量が低下することが明確に示され、肝臓Ob-R低下と血中sOb-R増加がいずれも肝臓におけるレプチン作用低下を引き起こすと予想された。肝臓におけるレプチンの作用として、感染時の炎症応答促進が報告されている。そこで今後は、タンパク質欠乏による血中sOb-R増加が過剰な炎症応答の抑制に寄与する可能性を検討する目的で、C57BL/6マウスにおいてリポ多糖(LPS)投与による炎症誘発にタンパク質欠乏がどのような影響を及ぼすかを解析する。さらに、血中sOb-Rが増加するC57BL/6マウスと増加しないob/obマウス、db/dbマウスを用いてタンパク質欠乏が炎症誘発に及ぼす影響を解析する。さらに低タンパク質食摂取マウスにを用いてレプチン投与時の炎症マーカーも解析し、レプチンの炎症促進作用がタンパク質欠乏でどのように変化するかを解析する。
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