研究課題/領域番号 |
23K23563
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補助金の研究課題番号 |
22H02297 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38060:応用分子細胞生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2023-2024) 宇都宮大学 (2022) |
研究代表者 |
岡本 昌憲 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, チームリーダー (50455333)
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研究分担者 |
梅澤 泰史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70342756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
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キーワード | 植物ホルモン / アブシシン酸 / サリチル酸 / コムギ / 妨害応答 / 受容体 / 耐乾性 / 病害抵抗性 / うどんこ病菌 |
研究開始時の研究の概要 |
乾燥ストレスに関わる植物ホルモンのアブシシン酸(ABA)と病害抵抗性に関わるサリチル酸(SA)は、互いがトレードオフの関係にあるとされている。そのため、耐乾性と病害抵抗性の双方を向上させた画期的な作物育種は困難とされてきた。つまり、耐乾性と病害抵抗性を共に向上させた作物が開発できれば、振れ幅の大きい環境変動に対しても柔軟に適応でき、作物の生産性低下を抑えることができる。そこで、本研究では、ABA受容体を過剰発現したコムギがSAを多く蓄積する特性に着目し、その分子メカニズムを明らかにすることで、従来のABA-SAの拮抗関係を打破できる分子制御の開発に向けた基盤研究を行う。
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研究実績の概要 |
植物ホルモンのアブシシン酸(ABA) 受容体を過剰発現させたコムギ(TaPYLox)は耐乾性を示す。ABAと病害抵抗性に関わるサリチル酸(SA)は互いがトレードオフの関係にあるとされていたが、TaPYLoxはサリチル酸(SA)を過剰蓄積して、うどんこ病菌に抵抗性を示す形質を獲得していた。この形質は導入したABA受容体によってABAシグナルが向上したことが要因ではなく、導入したTaPYL4タンパク質の蓄積量に依存して、内生SAが蓄積していた。 TaPYLoxのSA高蓄積の分子メカニズムを明らかにするために、SA生合成の鍵転写因子の遺伝子発現を解析した結果、SARD1転写因子の遺伝子発現がうどんこ病菌感染前から高く発現していた。SA生合成においては、TaPYLoxにて、イソコリスミ酸を経由する生合成鍵酵素遺伝子のICS2が強く発現しており、また、フェニルアラニンを前駆体とするSA生合成酵素遺伝子であるPAL1遺伝子の発現も上昇していた。興味深い事に、TaPYLoxはうどんこ病菌感染後には、SARD1転写因子の発現が減少し、それに伴って、ICS2やPAL遺伝子の発現が減少し、これと一致する形で内生SA量が減少した。このことからも、TaPYL4受容体タンパク質はSARD1転写因子を介して、SAの内生量を制御していることが明らかとなった。 一方、コムギABA受容体がどのようにSA生合成を制御しているかを明らかにするために、TaPYLoxで導入しているTaPYL4::GFPのGFPタグを用いてプルダウンを行い質量分析計で、TaPYL4と相互作用する因子の特定を行った。さらに、様々なコムギcDNAライブラリーを構築して、TaPYL4受容体と相互作用するタンパク質を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コムギABA受容体TaPYL4はSARD1転写因子の遺伝子発現を介して、ICS2酵素遺伝子およびPAL酵素遺伝子の発現を誘導していることが明らかとなった。ABA受容体とSARD1転写因子の間を埋める因子を特定したいと考え、本年度は、酵母ツーハイブリッド法(Y2H)により、TaPYL4と相互作用する因子の特定に成功した。昨年度のプルダウン後における質量分析計(IP-MS)で検出されたタンパク質とオーバラップするタンパク質も同定する事ができた。病害応答に関連する因子の単離のほか、予想外にも光合成や光化学系に関するタンパク質が同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
単離できたタンパク質がSAに応答するのか?あるいは病害応答性に関わるのかを解析する。ABA受容体TaPYL4とY2HやIP-MSで同定できたタンパク質を大腸菌にて発現させ、in vitroでの相互作用の検証を行う。大腸菌でのタンパク質発現が困難な場合は、タバコを用いた一過的な発現系により相互作用の有無を解析する。コムギのTaPYL4以外のABA受容体やシロイヌナズナのABA受容体との相互作用について選択性があるかどうかを生化学的な実験によって検証する。また、SARD1の転写因子の制御にどのように関わっているかを追及する。 興味深い事に、TaPYLoxはうどんこ病菌感染後には、SARD1転写因子の発現が減少し、それに伴って、ICS2やPAL遺伝子の発現が減少し、これと一致する形で内生SA量が減少した。TaPYLoxではPR1やPR4遺伝子はうどんこ病菌感染後にさらに遺伝子発現が上昇した。このことから、TaPYLoxにおけるうどんこ病菌に対する抵抗性はSA以外の他の因子も関わっている可能性が示唆されたため、SAと類似の作用を示すN-ヒドロキシピペコリン酸の生合成酵素遺伝子や内生NHP量の動態を解析し、TaPYL4受容体の関与を明らかにする。
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