研究課題/領域番号 |
23K23572
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補助金の研究課題番号 |
22H02306 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩田 洋佳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (00355489)
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研究分担者 |
加賀 秋人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究部門, 主席研究員 (30391551)
辻本 壽 鳥取大学, 国際乾燥地研究教育機構, 特任教授 (50183075)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 育種計画 / 交配組合せ最適化 / 育種計画最適化 / ゲノミック選抜 / 動的計画法 / ベイズ最適化 / 強化学習 / 最適化 / 交配・育種計画最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
従来の表現型選抜では、表現型の望ましい個体や系統を選抜して交雑するため、表現型が秀でていない個体・系統がもつ有用対立遺伝子が選抜の過程で失われてしまう。ゲノミック選抜(GS)も、基本的には同じ問題を抱えている。本問題を解決するには、GSの予測モデルに基づき有用なゲノム領域が集積されるように選抜・交雑を繰り返すことが考えられるが、そのためには数世代先の状態の「先読み」に基づく選抜・交配が必要となる。本研究では、先読みを行いながら、有用なゲノム領域が集団から失われないように集積していく育種システムを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究では、ダイズの組換え近交系(RIL)を初期集団として用い、同集団に含まれる有用なゲノム領域を効率的に集積するアルゴリズムの開発と、それに基づく選抜実験を行う。選抜対象の形質は、干ばつ条件下でのダイズのバイオマスと収量である。今年度は、ゲノミック予測モデルで得られたゲノム領域に対する重みをもとに計算された最適集団値(optimal population value: OPV)を指標に選抜されたRIL間の交配後代であるF4系統の組合せ交配からそれらの雑種第二代(F2)となる種子を得た。また、得られたF2個体について、RILの親である2系統、および、交配に用いられたRIL 16系統について、鳥取大学の乾燥地研究センターの砂質土壌で防水マルチを用いて干ばつ試験を行い、早期(播種後2ヶ月後)の破壊調査と収穫適期の収穫調査を行い、バイオマス関連形質と子実収量を計測した。また、これらF2個体から葉組織を採取してDNA抽出を行い、アンプリコンシークエンシングによるゲノムワイドマーカーのタイピングを行った。また、栽培試験に加えて、交配組合せの最適化と選抜強度の最適化に関する研究を並行して行った。前者については、昨年度に開発された動的計画法で交配組合せを最適化するアルゴリズムを用いて、交配後代の分離を指標とした交配組合せの選抜法を考案した。後者は、ベイズ最適化を用いた育種計画の最適化法(Diot and Iwata 2023)を拡張した方法で、選抜強度の世代間変化のパターンを関数で表し、この関数のパラメータを介して、これらのパターンの最適化を行う。いずれの方法についても、育種シミュレーション実験をもとにその有効性を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までに、(1) 組換え近交系(RIL)間交配後代のF4系統を親として最適化された交配組合せから得られたF2個体の屋外干ばつ条件における栽培試験とデータ収集、(2) 動的計画法およびベイズ最適化を用いて交配組合せと育種計画を最適化するアルゴリズムの開発を行った。(1)では、F2個体の栽培試験をもとに、それらの地上部バイオマス・収量形質の計測とジェノタイピングを行った。得られたデータは今後、祖先集団であるRILで得られたデータとともに解析され、最適化された交配組合せの有効性の評価に用いられる。(2)では、選抜指標の和を最大化できるような組合せを動的計画法で求める手法を考案し、育種シミュレーション研究によりその有効性を確認することができた。また、ベイズ最適化を用いた育種計画の最適化法を拡張し、育種シミュレーション研究をもとに評価を行い、世代間で変化する選抜強度を最適化した場合には、世代間で固定された場合に比べて遺伝的改良効率が向上することを確認できた。これらの手法は、強化学習アルゴリズムの一部として組み込まれて利用される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
強化学習、動的計画法、ベイズ最適化を含めた様々な最適化法を含めて交配組合せと育種計画を最適化するためのアルゴリズムの開発と改良を引き続き進めていく。また、同時にダイズ個体の遺伝的能力を予測するための新たなモデル化手法の開発も進めていく。さらに、開発・改良されるアルゴリズムやモデル化手法を実際の集団を用いた評価を通して、それら手法の有効性の検証を行う。さらに、鳥取大学・乾燥地研究センターで行われる屋外干ばつ試験においてF3世代の個体の栽培試験を行い、早期(播種後2ヶ月)のバイオマス関連形質の調査、および、収穫適期の子実収量の調査を実施する。また、今年度得られる個体のアンプリコンシークエンシングによるジェノタイピングを行い、上述した有効性の検証に用いるためのデータを収集する。以上の取り組みを通して、アルゴリズムとモデル化手法の開発と改良を進め、それらの有効性をシミュレーション集団と実集団を用いて検証する。
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