研究課題/領域番号 |
23K23577
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補助金の研究課題番号 |
22H02311 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 (2023-2024) 京都大学 (2022) |
研究代表者 |
吉川 貴徳 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 特命助教 (00721606)
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研究分担者 |
松宮 健太郎 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60553013)
佐藤 豊 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 教授 (40345872)
那須田 周平 京都大学, 農学研究科, 教授 (10273492)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | イネ / 貯蔵タンパク質 / GWAS / 加工機能性 / 野生イネ |
研究開始時の研究の概要 |
イネの種子貯蔵タンパク質は栄養化学的に有用なタンパク源でありながら、主たる研究対象となってこなかった。申請者らは、これまでに野生イネと比較して栽培種ではタンパク質含量が低下していることから、近代品種は長い年月をかけて炊飯米の食味向上のための選抜を行い、その結果としてタンパク質含量が低下したものが選抜されたのではないかという仮説を得ている。本研究では野生イネや国内外のコアコレクションを用いてこれらの原因となった遺伝的要因を同定するとともに貯蔵タンパク質の加工機能性を明らかにし、高タンパク質含量米の品種育成とその社会実装に向けた基盤整備を行う。
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研究実績の概要 |
2023年度は野生種における高タンパク質含量の制御機構を明らかにすることを目的として、まず貯蔵タンパク質の組成をSDS-PAGEにより調査した。その結果、野生種の貯蔵タンパク質の大部分はグルテリンであり、このタンパク質が総含量の変動に最も大きく寄与していることが明らかになった。農業形質(粒重、収量、茎葉部重)との関連を調査したところ、タンパク質含量と最も強い相関を示したのは収量であり、タンパク質含量の高い系統は収量が低い傾向が認められた。さらに、茎葉部の窒素含量を分析した結果、種子に転流されなかった窒素分は茎葉部で利用されていることが示唆された。種子におけるタンパク質の蓄積領域を調査するため、種子の凍結切片をラマン顕微鏡で観察したところ、細胞内におけるプロテインボディの局在を観察することができた。しかし、ラマン顕微鏡は細胞レベルで高い解像度の観察ができるメリットがあるのに対し、組織全体のスキャンには不向きであり、種子断面全体を観察するには最適な方法ではないと考えられた。野生種の高タンパク質含量を制御する遺伝的要因を同定するため、Oryza sativa (品種台中65号)を遺伝的背景としてOryza rufipogon (W1962)の染色体断片が導入されたCSSLを用いてマッピングを行った結果、Chr2, Chr7, Chr11にタンパク質含量と関連する領域が検出された。 イネの種子貯蔵タンパク質の加工適性を調査するため、2023年度は商業化されたコメタンパク質を使用して、さまざまな加工機能性を評価した。すなわち、乳化性やゲル化性、あるいは起泡性を検討するため、実際の食品のモデルで卵や牛乳の代替としてコメタンパク質を使用し、ドレッシングや小麦粉焼成品を作製した。しかしながら、卵や牛乳のような高い加工機能性は発揮されず、用途の開発にはさらなる検討が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は以下の2大課題により構成され、それぞれの研究を遂行するために複数の小課題を計画している。2023年度に予定した実験は以下の通りである。 (大課題1)イネの種子貯蔵タンパク質の遺伝解析:高タンパク質系統におけるデンプン含量の分析、野生イネ染色体断片置換系統をもちいたマッピング、SDS-PAGEによるタンパク質の分析、高タンパク質系統の交配 (大課題2)イネ種子貯蔵タンパク質の加工機能性の解明:ラマン顕微鏡を用いたタンパク質の局在調査、液状食品における加工機能性(乳化性、起泡性) 2023年度は予定していた実験をほぼ全て終えることができ、概ね計画通りに進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の取り組みにより、1)イネの種子タンパク質含量は、植物体が吸収した窒素を茎葉部と種子部にどのように振り分け、さらに種子部における窒素資源をどれだけのシンクに分配するかというバランスの中で決定されること、2)ラマン顕微鏡は組織全体のスキャンには不向きであることが示唆され、3)Oryza rufipogon (W1962)のCSSLを用いてタンパク質含量と関連する3領域を検出した。さらに、4)コメタンパク質は液状食品における加工機能性(乳化性、起泡性)に関しては卵や牛乳ほど高くなかった。これらの結果は、1)貯蔵タンパク質が合成・蓄積されるステージの未熟種子や葉においてタンパク質含量が高い系統の遺伝子発現は何が違うのか?2)種子断面のタンパク質蓄積を広く観察するにはどのような手法が適しているのか?3)Oryza rufipogon (W1962)の高タンパク質原因遺伝子は何なのか?4)半固形状食品における加工機能性はどうなのか?という新たな問いが生じた。これらの問いに答えるため、2024年度は以下の取り組みを行う。 (大課題1)イネの種子貯蔵タンパク質の遺伝解析:タンパク質含量の高い系統および低い系統において受精後5日目から10日目の未熟種子および葉におけるトランスクリプトーム解析、Oryza rufipogonの高タンパク質原因遺伝子のファインマッピング (大課題2)イネ種子貯蔵タンパク質の加工機能性の解明:酸性フクシン染色によるタンパク質局在の観察、半固形状食品における加工機能性(ゲル化性、製パン性)
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