研究課題/領域番号 |
23K23581
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補助金の研究課題番号 |
22H02315 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39010:遺伝育種科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
岡本 龍史 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (50285095)
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研究分担者 |
矢野 健太郎 明治大学, 農学部, 専任教授 (00446543)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 単為発生 / 卵細胞 / 半数体 / 倍加半数体 / イネ / 低温処理 / ストレス / 自律的発生 / ゲノム倍加 |
研究開始時の研究の概要 |
単離卵細胞の自律的発生系を用いることで、これまで還元的な解析が行われてこなかった植物の雌性単為発生機構および半数性ゲノムの倍加(重複)機構の分子基盤を明らかにするとともに、それら知見を活用して新たな倍加半数体作出法の確立に向けた礎を創ることを本研究の目的とする。本研究では、植物の雌性単為発生が進行する際の核となる現象、すなわち「受精非依存的に卵細胞の発生抑制機構が解除され、その卵細胞が自律的に分裂・発生を進行させる現象」を単離イネ卵細胞を用いて再現し、さらにそれら卵細胞および分裂細胞を直接的に解析することで雌性単為発生を司る分子機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
倍加半数体は配偶子(配偶体細胞)の単為発生およびゲノム倍加によって生じるが、それらの遺伝的形質は完全に固定していることから倍加半数体を利用することで育種期間の大幅な短縮が可能となる。植物の半数体作出においては、雄性発生系(葯培養)が主に用いられているが、異数性や品種間差などの育種上の問題が指摘されている。一方で、雌性発生系(子房培養)による半数体作出に関しては、ネギ属のごく限られた植物種で報告があるのみである。これは、雌性配偶子である卵細胞が子房の奥底に格納されており、単為発生性の卵細胞の直接的な観察・解析が困難であることに起因している。本課題では、「イネ花から単離した卵細胞に低温処理を施すことにより受精非依存的な分裂・発生を誘導し、かつ、卵細胞の分裂・発生過程においてゲノム倍加を生じさせる」という新たな雌性単為発生誘導系を用いることで、雌性単為発生および半数性ゲノム倍加機構の分子基盤を明らかにし、それら知見を活用して新たな倍加半数体作出法の確立に向けた礎を創ることを目的として研究を遂行した。 本年度は、低温処理を行った卵細胞のトランスクリプトーム解析により低温処理卵細胞および受精卵で共に発現レベルが著しく上昇している、あるいは抑制されている遺伝子群を特定し、卵細胞の自律的発生誘導に関与する遺伝子群を特定した。また、卵細胞の自律的発生を誘導する3種の細胞処理を施した条件、すなわち1. OsASGR-BBMLを異所的に発現させた卵細胞、2. SAHA処理をした卵細胞、3. 低温処理をした卵細胞、で共通して発現が上昇している転写因子としてXMYB1を見出し、頑健性をもって卵細胞発生を誘導する新たな転写因子候補とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温処理を行った卵細胞、無処理の卵細胞、および受精卵について、SMART-Seq HT Kit (Clonetec) を用いてcDNA合成および増幅を行ったのち、Nextera XT DNA Library Preparation Kit (Illumina) を用いてシークエンスライブラリーを作製し、HiSeqX (Illumina) でトランスクリプトームデータを得た。これらデータの解析・比較により、無処理卵細胞と比較して低温処理卵細胞および受精卵で共に発現レベルが著しく上昇している、あるいは抑制されている遺伝子群を特定し、卵細胞の自律的発生誘導に関与する遺伝子群を同定した。また、低温処理に加えて、OsASGR-BBMLの異所的発現、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA)処理はイネ卵細胞の自律的分裂および発生を誘導することが示されている。本年度は、1. OsASGR-BBMLを異所的に発現させた卵細胞、2. SAHA処理をした卵細胞、3. 低温処理をした卵細胞、で共通して発現が上昇している転写因子としてXMYB1を特定した。さらに、XMYB1の発現カセットを持つプラスミドとGFP-ER発現プラスミドをイネ卵細胞に共導入し、経時観察をおこなった。その結果、XMYB1発現プラスミドおよびGFP-ER発現プラスミドの共導入卵細胞38個中5個でGFP蛍光が観察され、そのうち3個で核分裂が確認された。現在、XMYB1を卵細胞特異的プロモーター下で発現する形質転換イネを作製中である。さらに、卵細胞の自律的発生・増殖過程におけるゲノム倍加過程の分子基盤解析に向けて、HistoneH2B-GFPを発現させた組換体イネから単離した細胞核中のGFP蛍光強度と核内DNA量の相関性を調べたところ、核内蛍光強度から核DNA量を推定できることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
上記項目で低温処理誘導性の遺伝子として同定されたものについては、それらを無処理の卵細胞において異所的に強制発現させ、当該卵細胞の発生・細胞状態に変化が起きるか否か調べる。この解析の際、1種類の遺伝子の発現で卵細胞の発生・細胞状態に変化がみられない際は、2種類あるいはそれ以上の種類の遺伝子を同一の卵細胞に発現させることにより、解析の幅を広げる。また、ユビキチンプロモーター下でHistoneH2B-GFPを発現させた組換体イネを用いることで、卵細胞の核(クロマチン)を可視化し、卵細胞の細胞状態の変化を効率的に観察する。また、上記項目で低温処理抑制性の遺伝子として同定されたものに関しては、当該遺伝子のアンチセンスRNAまたはRNAiコンストラクトを無処理卵細胞に導入し、当該遺伝子の発現レベルの低下が卵細胞発生に及ぼす影響を調べる。ゲノム倍加過程に関しては、昨年度の解析よりH2B-GFPを発現する卵細胞を培養することでDNA倍加が起こる前、および倍加後のサンプリングが可能になったことから、次年度はそれらの発生・増殖期にある増殖細胞塊のトランスクリプトーム解析を進める。さらには、イネ卵細胞の自律的発生機構およびゲノム倍加機構に関与する遺伝子群を特定した際は、コムギやトウモロコシなどイネ以外の卵細胞内で機能させることで、倍加半数性コムギおよびトウモロコシの創出を試みる。
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