研究課題
基盤研究(B)
パンコムギはイネとトウモロコシと並んで世界の重要な穀物ですが、DNAゲノムが複雑であるために、ゲノムを用いた研究と育種が遅れていました。2020年に、研究代表者の参加したコムギ10+ゲノムプロジェクトにより、日本を代表するパンコムギ品種農林61号などの高精度ゲノムが得られ、未開拓の東アジアのパンコムギ遺伝資源を活用する素地が整いました。本研究では、遺伝子発現解析、機械学習、量的遺伝子座マッピングなどを組み合わせて、パンコムギの新規対立遺伝子を探索し、またその発現を司る環境要因の解明を目指します。
パンコムギはイネやトウモロコシと並んで世界の重要な穀物です。しかし、パンコムギは3つの種のゲノムDNAが融合してゲノム重複を経た複雑な異質倍数体であるために、ゲノムを用いた研究と育種が遅れていました。2020年に、研究代表者の参加したコムギ10+ゲノムプロジェクトにより、日本を代表するパンコムギ品種農林61号などの高精度ゲノムが得られ、未開拓の東アジアのパンコムギ遺伝資源を活用する素地が整いました。我々はまず、既存の二倍体種用に開発された手法を異質倍数体のRNA-seqによる遺伝子発現解析に適用すると、ゲノム重複による3つの重複遺伝子を正確に区別しにくいためマッピングのエラー率が10%にも上る一方、我々の開発してきたEAGLE-RCやHomeoRoqなどのサブゲノム分類法のソフトウェアを用いれば、エラー率が低く抑えられることを示しました。また遺伝子配列のうち重複遺伝子を区別しやすい3’末端配列を利用することで、安価で多数のサンプルの遺伝子発現を高精度で解析できる手法も確立しました。その他、機械学習を用いて野外変動環境で継続的に植物形態や色情報を観測するためのハードウェア・ソフトウェアPlantServationを開発しました。モデル倍数体種のデータを解析したところ、異質倍数体化によって両親種の環境応答を受け継いで組み合わせることによって、変動環境に適応したことが支持されました。さらに、倍数体の有用植物についての総説を執筆し、倍数体化が栽培化の前後共に重要な役割を果たしたことを詳説しました。そして、コムギなどを用いて開発された倍数体ゲノム解析手法が多くの有用植物に適用できることを論じました。他に本研究代表者の整備してきたゲノム情報および解析技術等を提供することで、多数の共同研究に役立てており、関連する学会発表数からも日本のコムギ研究に広く寄与していることが示されています。
2: おおむね順調に進展している
本研究のコア技術として、これまで解析の難しかった異質倍数体種のRNA-seq手法について、安価で多数サンプルを扱える技術を開発し、論文として出版した。さらに、野外変動環境で継続的に植物形態と色情報を収集するハードウェア・ソフトウェアPlantServationの論文を出版し、コムギデータの解析を進めている。研究員の募集に時間がかかったが、研究内容が順調に進展している。そして、Nested Association Mapping Lineを用いて、様々な形質について有意な量的遺伝子座(QTLs)を同定できた。
既に開発して出版した安価なRNA-seq手法と機械学習による画像解析手法PlantServationを、すでに取得済のコムギの大規模データに適用して、野外変動環境でのシス制御による遺伝子発現解析の解析を進める。また、Nested Association Mapping Lineを用いたQTL解析をさらに推進していく。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 6件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 11件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
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