研究課題/領域番号 |
23K23591
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補助金の研究課題番号 |
22H02326 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39020:作物生産科学関連
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
浴 俊彦 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40192512)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 土壌生物相 / DNAメタバーコード法 / 有用植物栽培 / 次世代シークエンサー / DNAメタバーコード解析 / アレロパシー / 作物栽培 / 生物系統 |
研究開始時の研究の概要 |
土壌生態系を構成する微生物や菌類、線虫等の生物は、土壌生物同士のほか、土壌や土壌に 生育する植物と密接な相互作用を持つ。本研究では、全土壌生物を高精度かつ定量的に網羅できる土壌DNAメタバーコード法を開発し、作物・有用植物の栽培土壌や根圏土壌における原核・真核生物系統の組成と多様性、土壌生物間ネットワークと変動、土壌生物系統と土壌化学性との関係、植物による土壌生物への影響等を遺伝子レベルで明らかにする。以上の研究を通じて、土壌生態系の超高精度解析基盤を確立し、土壌生物データに基づく管理型作物栽培の発展に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、DNAメタバーコード法により、作物等の栽培土壌における全生物相の高精度分析法の確立と植物栽培への応用を目指している。とくに、アレロパシーを示す植物や有用な植物に焦点をあて、土壌生物と植物との関係を明らかにし、栽培技術の改良に結びつける研究を進めている。 本年度は、(1)前年度に実施したアレロパシー植物のマリーゴールドとヘアリーベッチ、2種の有用植物近傍からの2区画、4回分のバルク土壌における、経時的な原核・真核生物相の変動を解析した。生物多様性解析により、区画間で土壌生物相の違いが認められたが、土壌化学性分析の結果より、区画間の土壌化学性の違いによる影響と考えられた。さらに、植物間での生物多様性の違いも示された。再現性を確認するため、本年度もヘアリーベッチを除く上記の3種の植物栽培を実施し、バルク土壌と根圏土壌の回収を行った。(2)前年度に中止したポット栽培実験を実施した。マリーゴールドと2種の有用植物のほか、キクを追加してポット栽培実験を行い、根近傍の土壌生物相解析を実施した。その結果、真核生物では植物種ごとに異なる生物群集が形成されることが示唆された。マリーゴールドは抗線虫作用を示すとされるが、栽培に伴い、細菌食性線虫の割合は増加した。(3)新たに滅菌培土による栽培系を構築した。マリーゴールドの栽培土壌で生物相解析を行った結果、対照土壌と比較して、栽培に伴い、特定の真核生物門の存在割合が顕著に変動する結果が得られた。(4)手法の改良を目的として、植物と土壌生物との境界面である根圏の土壌生物や共生菌類を分析するため、ヨモギ栽培実験を行い、新たにITS配列等を用いたDNAメタバーコード解析を行い、生物相の評価を行った。その結果、根圏土壌の分析にはITSバーコードが有用であること、バルク土壌と根圏土壌の生物系統組成に違いがあることなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度に発生したシークエンシング解析不良と、ポット栽培系の培土によるDNA調製不良で当初の計画より遅延していたが、今年度、シークエンサーの整備と適切な培土の採用により課題を解決し、当初の計画したスケジュールで研究を進展させた。さらに今年度、追加的に新たなDNAバーコードの検討と、滅菌土壌栽培系の確立を試みた。 その結果、DNAメタバーコード法の改良ににより、ITS配列による根圏土壌生物と共生菌類の分析が可能となった。今後、本手法を圃場やポット栽培系へ適用することで、土壌生物と植物との関係を詳細に研究できると期待される。さらに、アレロパシー植物であるマリーゴールドを作物栽培に応用し、有用植物の栽培法を改善するためのマリーゴールドや有用植物の栽培土壌における全生物相の解析が予定通り達成され、土壌化学性、および植物種による土壌生物、とくに真核生物への影響を示すことができた。予想外の知見として、マリーゴールドは抗線虫作用を示すことが知られているが、ポット栽培実験では細菌食性線虫の割合が増加する結果となった。これらの知見については、次年度以降の栽培実験で再現性を確認する予定である。さらに、植物と土壌生物との相互作用を実験的に解明するための滅菌土壌による植物栽培系を新たに構築できたことから、当初の計画以上に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
DNAメタバーコード法の改良については当初の目標がほぼ達成できたので、今後は、本法を用いた土壌生物相解析と得られたデータに基づき、生物学的アプローチにより、栽培技術の改良を目指す方針である。生物学的制御によって作物栽培を改善するには、植物と土壌生物との相互作用を詳細に解明する必要がある。そのため、今年度、確立した根圏土壌生物や共生菌類のDNAメタバーコード解析を、圃場やポット栽培実験に取り入れることで、植物による土壌生物への影響や、植物と土壌生物との相互作用を明らかにするための研究を進める。今年度、植物による土壌生物相への影響が示されたことから、今後、植物種によってバルク土壌や根圏土壌の原核・真核生物相にどのような影響が生じるのかを具体的に明らかにする必要がある。 当初の計画と以上の研究方針を踏まえて、今後は、(1)アレロパシー植物の応用に向けたマリーゴールド・キャベツ共栽培土壌の生物相解析、2023年度に実施した圃場栽培土壌からのシークエンスデータによる土壌生物相解析や土壌化学性分析を進める。(2)植物種による根圏を含めた土壌生物への影響を経時的に分析するためのポット栽培実験を進める。また、(3)新たに栽培技術の改善を目的に、土壌生物を操作する方法を開発するための基礎的実験を開始する予定である。
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