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宿主遺伝子のインフレーム塩基欠失型編集によるウイルス抵抗性遺伝資源開発の分子基盤

研究課題

研究課題/領域番号 23K23608
補助金の研究課題番号 22H02343 (2022-2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2022-2023)
応募区分一般
審査区分 小区分39040:植物保護科学関連
研究機関北海道大学

研究代表者

中原 健二  北海道大学, 農学研究院, 講師 (90315606)

研究分担者 薦田 優香  酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (90716482)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 9,490千円 (直接経費: 7,300千円、間接経費: 2,190千円)
キーワードゲノム編集 / ウイルス抵抗性 / 植物 / インフレーム欠損変異 / 植物ウイルス病 / 抵抗性育種 / 植物ウイルス / インフレーム変異 / 抵抗生育種
研究開始時の研究の概要

農作物のウイルス病の防除には抵抗性品種の栽培が最も効果的な方法の一つであり、我々は作物遺伝子をゲノム編集することで新たなウイルス抵抗性遺伝資源の開発を目指してきた。これまでに、遺伝子破壊型編集ではウイルス抵抗性にならないがインフレーム(3の倍数)の塩基欠失型編集(iGE)なら抵抗性が付与される遺伝子を複数見出した。これらの場合、iGE遺伝子から発現する変異蛋白質がウイルス感染を阻害していると考えられる。本研究でこれを立証し、今後、さらに別の作物遺伝子をiGEにより新たなウイルス抵抗性遺伝資源とするための方法論の確立を目指す。

研究実績の概要

インフレーム塩基欠失型ゲノム編集(iGE、3の倍数の欠失)アレルによる抵抗性それぞれについて以下のような結果が得られた。eIF4E1_9DELによるCMV抵抗性については、eIF4E1_9DELが2bのRNAサイレンシング抑制活性をどのように阻害しているのかメカニズムの解明を進めた。まず、オートファジーによる分解ターゲットとして知られる2bのオートファジーによる分解をeIF4E_9DELが結合することで促進している可能性について検討した。N. benthamiana葉へのアグロインフィルトレーションによりeIF4E_9DELと2bタンパク質を共発現して2bの蓄積量をオートファジー阻害剤用いて検証したが、2bのオートファジーによる分解が促進される証拠は得られなかった。一方で、eIF4E機能の条件欠損酵母を用いた検証で、eIF4E_9DELタンパク質が変異によりeIF4E本来の翻訳開始因子としての機能を失っていることが明らかとなり、eIF4E_9DELのCMV感染阻害効果は、eIF4E本来の機能とは別の働きであると結論することができた。
BAM2のiGEアレルについては、12延期欠失に加えて、3塩基、6塩基、144塩基欠失のiGEアレルが得られており、それらのTYLCV 抵抗性について比較検証した結果、インフレーム欠損変異では最小の3塩基欠損で、他の欠損変異よりも発病の割合が低く、発病した個体においても、TYLCVのゲノムDNAの蓄積量が野生型に比べて低下しており、より強いTYLCV抵抗性が示された。また、トマト黄化えそウイルス(TSWV)抵抗性についても同様に比較検証を開始して、再現実験による検証が必要ではあるが、1回目の接種試験で、やはり3塩基欠損で発病個体数が少なく、病徴も弱いことからより強いTSWV抵抗性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

宿主因子のインフレーム塩基欠失型ゲノム編集(iGE、3の倍数の欠失)で予想外のウイルス抵抗性植物個体が得られ、それらiGEアレルから発現する変異タンパク質がウイルス感染を阻害していると考えられた。本研究で、その感染阻害メカニズムを解明し、新たな抵抗性遺伝資源開発技術の確立のためだけでなく、学際的にも宿主とウイルスの新たな相互作用解明のための分子基盤とするのが本研究の目的である。eIF4E_9DELによるCMV抵抗性については、実績報告書に記述した通り抵抗性の理由となるメカニズムを明らかにし、また、2bと野生型のeIF4Eも植物細胞内で直接結合して、これまで未知の相互作用をしている可能性を示すことができ、主要な目的を達成できた。また、BAM2のiGEについては、最小の欠損で、より効果が高かったことから、BAM2_3DELの変異タンパク質の持つ何らかの機能が抵抗性付与に大事であることを示唆することができ、最終年度の検証に有意義な結果が得られたことなどから、概ね順調に進展したと評価した。

今後の研究の推進方策

eIF4E_9DEL変異によるCMV抵抗性について。昨年の研究で、eIF4E1_9DELから発現する変異eIF4Eタンパク質が、本来の機能であるキャップ構造に結合して翻訳装置に関与する因子をリクルートする機能を失っていることを酵母の実験で証明した。本年度は、このeIF4E1_9DEL由来の変異eIF4Eが植物細胞内でもキャップ結合能を失っていることを確認し、さらに、eIF4E_9DELが本来の機能を失いながらも2bの機能を阻害してCMV抵抗性を付与することを証明する。BAM2_3DELによるTSWVおよびTYLCVを含むウイルス抵抗性について。昨年の研究で、BAM2の他のiGEに比べてBAM2_3DELが最も強い抵抗性を示すことが明らかになった。このことから、BAM2と相互作用するTYLCV C4やTSWVの移行タンパク質NSmの機能をより強く阻害する可能性について検証する。具体的には、C4はRNAサイレンシグシグナルの移行を阻害することが報告されており、BAM2_3DELがC4による移行阻害機能を抑制するかどうかを検証する。また、BAM2_3DELがNSmの原形質連絡を介した細胞間移行能を阻害するかどうかを、GFPと融合したNSmタンパク質を利用して検証する。DCL3変異体によるTYLCV抵抗性について。DCL3_2DELのフレームシフト変異によるノックアウトトマトは、より強いTYLCV抵抗性を示すことが分かっている。これは本研究のiGEによるウイルス抵抗性付与の範疇には入らないものの、TYLCV抵抗性遺伝資源はトマトなどの農作物生産において貴重である。そこで、TYLCV接種DCL3_2DELノックアウトトマトにおける防御反応関連遺伝子等の発現レベルをRNA-seqにより網羅的に調べ、DCL3の防御反応誘導における役割を考察する。そして、これらの結果を、それぞれ学術論文として公表することを目指す。

報告書

(2件)
  • 2023 実績報告書
  • 2022 実績報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Monitoring systemic infection by cucumber mosaic virus using a small fluorescent protein iLOV in plants2022

    • 著者名/発表者名
      Kawakubo Ayaka、Gallois Jean-Luc、Nakahara Kenji S.
    • 雑誌名

      Journal of General Plant Pathology

      巻: 89 号: 1 ページ: 47-52

    • DOI

      10.1007/s10327-022-01100-6

    • 関連する報告書
      2022 実績報告書
    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] オートファジー抑制Nicotiana benthamianaの作出とそれらのウイルス感受性向上2024

    • 著者名/発表者名
      須藤深雪・松永航・犬飼剛・増田税・中原健二
    • 学会等名
      令和6年度植物病理学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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