研究課題/領域番号 |
23K23613
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補助金の研究課題番号 |
22H02348 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
一瀬 勇規 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (50213004)
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研究分担者 |
松井 英譲 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 准教授 (20598833)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 走化性 / 病原力 / 誘引物質 / Mcp / 受容体 |
研究開始時の研究の概要 |
大腸菌や緑膿菌など動物病原細菌と比較して植物病原細菌では走化性受容体遺伝子の数が多く、Pseudomonas syringaeでは約50の走化性受容体遺伝子が存在する。本研究ではモデル植物病原細菌であるP. syringae pv. tabaci 6605 (Pta6605)を材料に、全受容体遺伝子の変異株の作出とその解析により、病原力に必要な走化性受容体とそれら受容体のリガンドを同定する。また、これまでに受容体変異により走化性以外の表現型が変わること、病原細菌をリガンドで処理すると病原力遺伝子発現が変動することが知られており、本研究ではそれらの機構も解明する。
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研究実績の概要 |
植物病原菌の病原性における走化性の重要性を明らかにするため、高い運動能と病原力を有するタバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv tanbaci 6605)(Pta6605)をモデル病原細菌として解析した。Pta6605は、タバコなどの宿主植物のアポプラスト液だけでなく、トマトなどの非宿主植物のアポプラスト液に対しても正の走化性を示した。また、タバコのアポプラスト液にはPta6605が正の走化性を示すタンパク質性アミノ酸やγ-アミノ酪酸(GABA)が豊富であること、リンゴ酸などの有機酸も豊富であることを明らかにした。 走化性の検定にはキャピラリー中の誘引物質に誘引された細菌数を測定する量的キャピラリーアッセイと、誘引物質をマイクロキャピラリーに充填し、集まってくる細菌を顕微鏡下で観察するマイクロキャピラリーアッセイが用いられている。それぞれの方法には長短があるが、新たに走化性検定に適したマイクロデバイスを作成し、より簡便に多くのサンプルを観察できるマイクロデバイス法を開発中である。 一方、Pta6605の有する54個の走化性受容体遺伝子について、単独欠損変異株の作出に成功したため、網羅的な受容体スクリーニングにも対応可能な状態である。これらの走化性受容体は、それぞれのリガンド結合ドメインなどの構造や局在などから細かなサブグループに分類できた。現在、Pta6605が正の走化性を示したギ酸、硝酸ナトリウムに対する受容体の同定に取り組んでいる。 これらの実績として、令和5年度には国際雑誌に原著論文1報を報告した他、国際学会で1回、国内学会で4回の発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Pta6605のゲノム解析より合計54個の推定の走化性受容体遺伝子が存在することを明らかにした。またそれらの推定アミノ酸配列から、受容体のリガンド結合ドメインや局在により細分類を行った。近縁の細菌で特定の走化性受容体が明らかにされた場合、それらのオルソログ候補のリスト化が可能となっている。これまでに54個の走化性受容体遺伝子全てについて、単独欠損変異株の作出に成功している。また、近縁細菌の走化性受容体の報告から新たにギ酸と硝酸ナトリウムに対する受容体の同定に取り組んでいる。 走化性の検定には、キャピラリー中の誘引物質中に誘引された細菌数を測定する比較的簡便な量的キャピラリーアッセイと、誘引物質をマイクロキャピラリーに充填し、集まってくる細菌を顕微鏡下で観察するどちらかと言うと煩雑なマイクロキャピラリーアッセイが用いられてきた。今後、多数の受容体遺伝子欠損株を用いて多数の誘引物質について網羅的な走化性試験を行うために、より簡便に多くのサンプルを扱うことのできるマイクロデバイス法を開発中である。 これまで実績として、国際雑誌に原著論文1報、総説1報、国際学会に5回、国内学会に7回発表した。
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今後の研究の推進方策 |
既にPta6605の全走化性受容体遺伝子の単独欠損変異株の作出を終えているため、今後は個別の誘引物質に対する走化性受容体の同定とそれらの病原力における役割の解明を中心に研究を実施する。また、より本研究に適した走化性検定のため、マイクロデバイス法を開発中であるが、その完成を急ぎ、より多くの走化性試験を行うことができるようにする。現在、ギ酸と硝酸ナトリウムへの走化性に必要とされる受容体を絞り込むことができている。これらの受容体を同定する共に、リンゴ酸など有機酸の受容体の同定も進める。
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