研究課題/領域番号 |
23K23632
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補助金の研究課題番号 |
22H02367 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39060:生物資源保全学関連
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
今 孝悦 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (40626868)
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研究分担者 |
AGOSTINI SYLVAIN 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20700107)
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
BENJAMIN HARVEY 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70785542)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
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キーワード | 海洋酸性化 / 二酸化炭素 / CO2シープ / 群集 / 間接効果 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、生物群集に対する海洋酸性化の間接効果を実証するものである。海洋酸性化は資源生物を含む様々な種の成育を阻害し、生残率を低下させる深刻な環境問題である。既往研究では、飼育系を用いて個々の種に対する直接的な影響が試験されてきたが、実際の生態系では、そうした種が減じられることで生じる間接的な影響も重要である。しかし、間接効果の検証は生物群集全体を対象にする必要があり、従来の飼育系では実証が難しかった。CO2シープは天然の生態系全体が既に酸性化している海域であり、群集全体の検証に有効である。本研究では、CO2シープを利用して、生物群集全体に対する海洋酸性化の間接効果を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、生物群集に対する海洋酸性化の間接効果を実証するものである。本年度は、海洋酸性化に対する「見掛け」の脆弱種、すなわち、酸性化海水で生存可能であるにも関わらず間接的に個体数が減じられた種、を特定することを主目的とした。 伊豆諸島・式根島の岩礁域から、酸性化海域(3定点)と通常海域(3定点)を選定し、以下の野外調査を実施した。まず、基礎データとして、各定点で炭酸系を中心に水質(水温、塩分、溶存酸素、pH、全アルカリ度)を通して測定した。その結果、酸性化海域では、通常海域に比べて、pHのみ低下していた一方で、他の要因は大きく異ならないことが確認された。次いで、各定点に形成される生物群集構造を記録し、海域間で比較したところ、酸性化海域ではヒザラガイがほぼ消失することが判明した。 さらに、上記で確認されたヒザラガイの消失が、酸性化による直接効果か否かを飼育実験にて検証した。通常海水と酸性化海水の各条件下でヒザラガイを飼育し、1ヵ月後の成長率、死亡率、および殻板の石灰質密度を計測・比較した。その結果、いずれのパラメータも飼育水による相違は認められなかった。このことは、酸性化海域でのヒザラガイの消失が、酸性化海水による直接効果ではなく、間接効果によってもたらされた可能性を示している。 以上の結果より、ヒザラガイは「見掛け」の脆弱種、すなわち、潜在的に間接効果を受ける種である可能性が高いことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り調査・実験が進んんだため
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今後の研究の推進方策 |
今後は、他の「見掛け」の脆弱種を特定することを継続しながら、それら脆弱種を減じたと考えられる間接効果を推定する。 調査地は、引き続き伊豆諸島・式根島の岩礁域とし、酸性化海域3定点および通常海域3定点とする。調査定点間で生物間相互作用の構造を比較し、酸性化によって損なわれた相互作用を抽出する。 通常海域の相互作用に基づいて「見掛け」の脆弱種の本来の位置づけを推定し、それらの種を減じた相互作用の経路を推定する。具体的手法は以下の通りである。 1)各定点の構成種から、生息基質となる種 (大型藻類や二枚貝類、蔓脚類などの固着生物) と、そこに棲み込む種を選出し、棲み込み関係を把握することで、生息基質を介した相互作用の構造を推定する。 2)各定点の生物を炭素・窒素安定同位体分析に供することで、捕食―被食関係を推定し、餌資源を介した相互作用の構造を明かにする。 3)以上で求めた相互作用の構造を定点間で比較し、酸性化の度合い (強酸性化、酸性化、通常) に応じて、どの相互作用が消失し、どの相互作用が新たに生じたのかを見積もる。通常海域の相互作用に基づいて「見掛け」の脆弱種の本来の位置づけを推定し、それらの種を減じた相互作用の経路を算出する。
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