研究課題/領域番号 |
23K23638
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補助金の研究課題番号 |
22H02373 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分39070:ランドスケープ科学関連
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
原科 幸爾 岩手大学, 連合農学研究科, 教授 (40396411)
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研究分担者 |
松本 一穂 岩手大学, 農学部, 准教授 (20528707)
高田 乃倫予 岩手大学, 農学部, 助教 (40905668)
斎藤 仁志 岩手大学, 農学部, 准教授 (60637130)
高野 涼 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (80913607)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
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キーワード | 木質バイオマス / 森林管理 / 防災力 / 多面的価値 / 生態系サービス / 管理主体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,森林の防災力・水源涵養力や文化的サービスを含めた多面的価値の創出を意図した木質バイオマス利用のための空間的・時間的戦略を構築することを目的とする。そのために,創出される多面的価値を評価し,可視化することで利用のためのエビデンスとロジックを示す。つぎにバイオマス利用戦略マップ(空間的戦略),中・長期的な戦略的ロードマップ(時間的戦略)を提示し,これらを踏まえて政策的支援策への提言を行う。研究対象地は,代表者らによる研究蓄積のある岩手県紫波地域と熊本県阿蘇地域とする。本研究では,現場研究とモデル研究をつなぐことで現場知と俯瞰知を統合し,合理的かつ実現可能な提案を目指す。
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研究実績の概要 |
引き続き,バイオマス利用による多面的価値の評価と可視化および森林管理主体に関する調査研究を実施した。バイオマス利用にかかる防災力と水源涵養力の向上については,前年から阿蘇山周辺の複数地点において土壌物理性の調査を継続して実施することで,サンプル数の増加と前年度の知見の再現性の担保に務めた。その結果,阿蘇外輪山では草原と比べてヒノキ人工林の方が土壌の透水性が高く、毛管粗孔隙も多かった。このことから,草原と比べると森林は地中に水を浸透・貯留し,徐々に流下させる機能が高いことが示唆された。森林の文化的サービスに関しては,熊本県が管理運営する森林公園に関して,熊本県農林水産部森林保全課に聞き取りを行うとともに,阿蘇みんなの森や立田山憩の森などのバリアフリー化の状況について現地踏査を実施した。また,県立森林公園との比較として国立公園にある休暇村南阿蘇付近のウォーキングコースについてバリアフリー化状況等を視察した。 バイオマス戦略マップに関して,とくに路網整備の点から検討を行った。基幹路網を適切な空間単位を対象に整備することにより、費用対効果の高い基盤整備が期待されることがわかった。人工林を基幹路網ごとに割り当てると、100ha以上の空間単位としてまとまる林分が48%以上存在し効率的な木材収穫を行うためには、細部路網の整備だけではなく、基幹路網整備の重要性が高いことが明らかとなった。 森林管理主体に関しては,岩手県紫波町を活動場所とする団体のうち,とくに目的志向グループに該当する1団体に集中的に参与観察を実施した。本団体からは,2023年度から林野庁の森林・山村多面的機能発揮対策交付金を活用して特定の地区の森林管理を継続して行う別団体を設立する動きがみられた。既存の支援制度を活用するノウハウの獲得が多様な団体による森林倫理とバイオマス材の供給に大きな役割を果たす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオマス利用よる防災力と水源涵養力の向上については,昨年度から継続して調査地を設けてサンプル数を増やしており,再現性が担保できつつある。森林管理と文化的サービスに関してもバリアフリーという新たな視点での研究が展開しつつある。 木質バイオマス利用の戦略マップに関しても昨年度実施した災害リスクと林業生産の難易度を指標としたゾーニングに,路網整備と空間単位という視点を加えて検討することで,より具体的かつ実践的な戦略マップの作成が可能となり,今後はさらに林業機械の導入による効率性やコストの点からの評価も期待される。 森林管理主体に関しては,管理団体に長期間参与観察を継続することで,元々は森林管理技術の講習会を母体としていた団体が,自律的に補助金を獲得してバイオマス供給に資する森林管理能力を有する団体へと進化するプロセスを観察することができた。これらの知見は,木質バイオマス利用推進のための戦略構築や政策提言にもつながるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
バイオマス利用よる防災力と水源涵養力の向上については,さらに継続して現地調査を行ってサンプル数を増やし,対象地全体にわたって評価結果を面的に広げることを目指す。昨年度,調査地として設定した間伐直前のスギ・ヒノキ人工林および元牧草地のスギ造林地の2年後にあたる本年度に再度調査を実施し,人工林の間伐や草地への造林が土壌の防災・水源涵養機能に及ぼす影響を時系列的に評価する。 木質バイオマス利用戦略マップについて,これまでのゾーニングに路網整備と空間単位の視点を加えたマップに,さらに高性能林業機械を導入した場合の効率性やコストの点からの評価も実施する。これらの成果を踏まえて,すでに木質バイオマスによる地域熱供給と小型ガス化プラントが稼働している岩手県紫波町を対象として,今後30年程度の長期的な木質バイオマスの集材範囲と供給可能量をいくつかの条件ごとに算出する。また,これらのバイオマス事業を実施している事業者への調査から,これらの事業評価と地域への便益について評価検討行い,空間的な戦略構築について検討する。 森林管理主体については,引き続き1団体への参与観察のほか,他の団体への聞き取りを実施し,団体ごとの時系列的な変容についてモニタリングを行うと同時に地域からのバイオマス供給力の時間軸に沿った戦略構築と政策提言を検討する。
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