研究課題/領域番号 |
23K23643
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補助金の研究課題番号 |
22H02378 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高木 健太郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (20322844)
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研究分担者 |
吉田 俊也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (60312401)
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60719798)
佐藤 永 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), 副主任研究員 (50392965)
森 章 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (90505455)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 12,610千円 (直接経費: 9,700千円、間接経費: 2,910千円)
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キーワード | 森林 / 炭素循環 / リモートセンシング / レーザー測量 / 景観 |
研究開始時の研究の概要 |
複数時期の航空機レーザ測量や衛星・多点毎木調査データを併用して、森林の炭素蓄積量やその変化に関する数千以上の林分サンプルを取得し、景観スケール(~100 km2)の森林の生産量や枯死量を林分スケール(~1ha)の空間分解能で評価する。森林の炭素動態に及ぼす立地環境や植物種・林齢・群落構造の影響を明らかにするとともに、炭素動態の時間変動の規模や履歴効果について明らかにする。
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研究実績の概要 |
航空機レーザ測量データを用いて昨年度解析を行った2014年から2022年までの8年間(後期)の森林バイオマスの変化量の特徴について、より詳細な解析を継続した。この期間の森林バイオマスは、年平均0.82±0.99 MgC/ha増加しており、2004年から2014年(前期)の年平均値(0.42±0.66 MgC/ha)のおおよそ2倍であった。減少したバイオマス量の平均値には前期と後期で大きな違いは見られない一方,増加分は前期が1.20 ± 0.49 MgC/ha/年 であったのに対し,後期が1.66 ± 0.55 MgC/ha/年と約1.4倍大きくなっており,この変化が正味の変化量に影響したことが明らかになった。同一1haメッシュで前期と後期のバイオマス変化量を比較すると正の相関(r2 =0.44)が見られ,1haスケールでは前期のバイオマス変化の傾向が後期においても継続する場合が多いことが明らかになった。 発達した針広混交林25haを対象に現地観測とレーザ測量それぞれで1haあたりの枯死量を比較した結果、現地観測では1.14 MgC/ha、レーザ測量では1.00 MgC/haとなり、両者は概ね一致した。レーザ測量による推定は概ね妥当であることが明らかになった。樹種としてはトドマツ、樹高減少要因としては幹折れの割合が多かった。 これまで開発した機械学習モデル手順を用いて、北海道全域の森林地上部バイオマスを人工林と天然林に分類し推定した結果、684-1034 TgC (平均166.6 Mg/ha)の範囲であった。2004年から2014年の森林地上部バイオマスの変化は、0.92-1.19 Mg/ha/年であった。推定値の妥当性やモデルの向上について、引き続き検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
航空機レーザ観測データの解析では、バイオマス変化量を成長成分と枯死成分に分けた解析を行い、定量的な森林の炭素循環過程を明らかにすることができた。その結果、直近8年の森林バイオマス変化が前10年の2倍となった理由について、直近8年の増加成長分が前10年の約1.4倍大きくなっており,この変化が正味の変化量に影響したことが明らかになった。また直近8年と前10年の炭素動態を比較し、経年変化の規模を明らかにした。同一1haメッシュで前期と後期のバイオマス変化量を比較すると正の相関(r2 =0.44)が見られ,1haスケールでは前期のバイオマス変化の傾向が後期においても継続する場合が多いことが明らかになった。発達した針広混交林25haを対象に現地観測とレーザ測量それぞれで1haあたりの枯死量を比較した結果、両者は概ね一致した。 UAVレーザ測量を行い、航空機レーザ測量で得られた樹冠標高・地面標高の精度検証を行った。その結果、急傾斜地では測定点密度の高いUAV測量が地面標高の精度が高いものの、UAVと航空機レーザ測量の結果は概ね一致することが明らかになった。 開発した衛星情報によるバイオマス推定アルゴリズムを用いて、北海道の森林バイオマスとバイオマス変化の推定を行った。推定値の妥当性やモデルの向上について、引き続き検討を行う必要があるものの、概ね妥当な推定を行うことができた。 以上より当初予定していた年次計画の通り研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2004年、2014年、2022年に行われたレーザ測量とUAV測量結果を利用して推定した、広域(225km2)における1ha毎の前10年と直近8年の森林バイオマス変化(成長・枯死・正味変化)を基に、バイオマス変化と群落構造や環境要因との関係や、18年2時期のバイオマス変化の比較、前10年の変化が直近8年に及ぼす影響について継続して解析を行う。 履歴が明らかな0~50年生の森林で観測した、樹種別・年代別の森林構造・環境調査結果を利用して、森林の発達段階や機能性、多様性と森林バイオマス変化の関係を明らかにする。 長期森林動態情報や樹木の成長と枯死、枯死要因に関する現地調査結果を利用して、樹種毎の成長と枯死の特徴、枯死発生の種・立地環境・サイズ依存性を明らかにする。得られた結果を樹木の成長と枯死に関する森林動態モデルのパラメータと比較し、モデルの改良を行う。 上記結果から以下の問いについて明らかになったことを取りまとめる。 ①林分スケール(~1ha)の森林の生産量や枯死量は、景観スケール(~100 km2)で見るときにどの程度の面的バラツキを持っているのか、また数十年の時間スケールでどの程度定常的なのか。②これら森林の資源量変化の面的なバラツキは、立地環境や植物種・林齢・群落構造によって説明ができるのか。③森林の生産量や枯死量と環境要因・森林構造との間にみられる定性的な関係について、個体ベースの森林動態モデルを用いて説明できるのか、どのような攪乱・立地環境要素が重要なのか。
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