研究課題/領域番号 |
23K23664
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補助金の研究課題番号 |
22H02399 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40010:森林科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
香川 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40353635)
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研究分担者 |
才木 真太朗 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (30824114)
内海 泰弘 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50346839)
EPRON Daniel 京都大学, 農学研究科, 教授 (60844305)
小南 裕志 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70353688)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2024年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 重水 / 葉面吸水 / 酸素 / 水素 / セルロース / 葉面吸収 / 同位体 / 年輪 |
研究開始時の研究の概要 |
樹木のバイオマスは光合成によって生産されるが、植物バイオマスを構成する水素・酸素は、根から吸収された水の水素・酸素に由来すると信じられてきた。ところがここ数年で植物は葉面からも有意な量の水分を吸収することが明らかにされ、2020~2021年には梅雨期に形成された木部の水素・酸素の半分以上が葉面吸収水起源であることが代表者による重水ラベリング実験で明らかにされた(Kagawa 2020, Kagawa & Battipaglia 2021)。そこで本研究では、葉面吸収水と根吸収水を二種類の重水(HDO,H218O)で、同時に葉から吸収される二酸化炭素を13CO2で標識する方法を開発する。
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研究実績の概要 |
植物は光合成により、二酸化炭素と水から炭水化物と酸素を作り出すが、この水の供給源として、葉面からの吸収プロセスに関する研究が近年活発化している(Dawson & Goldsmith, 2018; Berry et al. 2019; Schreel & Steppe, 2020)。樹木は、通常想定されている根からだけではなく、葉面からも有意な量の水分を吸収し、その水は根まで逆流しうることが明らかにされている(Cassana et al. 2016)。さらに、降雨条件下では糖の酸素・水素の約9割が形成層付近の水の水素・酸素と交換するので、降雨期間中に形成された木材(セルロース)は最終的に葉面吸収水起源の水素・酸素を多く含むことが明らかになった。以上は本課題のベースとなった基盤C課題からの継続した研究により得られた成果であるが、これを当初の予定通りTree Physiology誌に原著論文が掲載された。さらに、我々の研究は2022年11月号の表紙に選ばれるとともに、カリフォルニア大学バークレー校のTodd E.Dawson教授によるコメンタリー(我々の論文の重要性についての解説記事)が同誌に掲載されるという成果を得ることができた。さらに、重水を吸収させることにより、ラベリングを行った樹木試料中の重水の分布を詳細に調べるための分析手法を確立した。計画にはなかったが、内海泰弘氏代表の基盤B課題(23K26971)と協力して、「やっとこ」という特殊なペンチの使用により、重水の分析が初心者でも行えるくらいに簡単になる手法を開発することができた。この手法の詳細については、2024年4月にPhysiological Plantarum誌に論文が掲載された(Xiang, Kagawa et al. 2024)。同手法は、樹体内または樹木近傍の水分移動を研究する森林水文、樹木水分生理分野など、多分野に同手法が応用できるという点で、2022年度中に生み出された成果の中では波及効果が大きいという点では最大の成果と言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、(1)重水を用いて標識された樹体各部のバイオマス(葉、師部、木部、根)および形成される樹木年輪の同位体分析を行い、木材を始めとする樹体各部のバイオマスを構成する水素・酸素の何割が葉面吸収水由来で、残りの何割が根吸収水由来かを樹高60cm程度のスギ苗木および樹高2m~7mのスギ若齢木で解明する、(2)同時に樹幹を液体窒素により凍結させ、水の同位体比を計測する手法を確立することであるが、前者は成木での実験に成功していないという点では、計画より遅れているものの、Tree Physiology誌に論文が掲載され、表紙に選ばれたという点では、予想以上の成果と言える。(2)についても、誰にでも行える波及効果の大きい手法が開発できたという点では、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
重水および13CO2の両方を用いてラベリングを行うためのチャンバーを設計し、予備実験を行うとともに、液体窒素を用いて樹幹を凍結した状態で、あたかも時間を止めたような状態で重水および13Cにより標識された光合成産物が樹体内のどこに分布しているかを1mm程度の分解能で解析する技術を確立する。
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