研究課題/領域番号 |
23K23668
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補助金の研究課題番号 |
22H02403 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
吉田 誠 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30447510)
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研究分担者 |
松下 泰幸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60335015)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
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キーワード | 褐色腐朽 / 木材保存 / 木質バイオマス / 木材腐朽 / セルロース / ヘミセルロース / リグニン |
研究開始時の研究の概要 |
日本における戸建て住宅の90%以上を占める木造住宅は、その部材である木材が腐る(腐朽と呼ばれる)というリスクに晒されており、その対策を適切に実施することは重要である。特に、その腐れを引き起こす原因微生物のうち最も主要なものとして褐色腐朽菌と呼ばれるもの菌類があげられるが、その木材腐朽メカニズムについては依然として不明な点が多い。本研究では、褐色腐朽メカニズムにおいて長らく謎とされてきた、セルロース分解機構、ヘミセルロース分解機構、リグニン分解機構について、詳細に調査し、得られた知見から、その腐朽プロセスの全貌を理解することを目指す研究である。
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研究実績の概要 |
褐色腐朽菌は、日本の木造住宅において腐朽被害を引き起こす最も主要な害菌である。したがって、その腐朽メカニズム(すなわち木材細胞壁の分解メカニズム)を理解することは極めて重要な課題である。褐色腐朽菌による木材腐朽過程においては、木材細胞壁を構成する主要な3つの成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンそれぞれにおいて特徴的な変化が生じる。すなわち、腐朽初期に急激なヘミセルロースの分解が生じ、さらにセルロースの急激な重合度低下を伴う分解が続く。一方で、リグニンは低分子化が観察されず、一部の化学的な構造変化のみが生じると考えられている。以上のように、褐色腐朽における木材細胞壁構成成分の変化挙動については現象論的な観点では多くの知見が集まりつつあるものの、そのメカニズムについては完全に把握されているとは言い難い。そこで本研究では、「褐色腐朽菌が引き起こす木材細胞壁構成成分の変化は、どのよ うなメカニズムで生じ、それが菌にとってどのような意味を持つのか?」を明らかにすべく、研究を実施している。本年度は、褐色腐朽過程におけるリグニンについて、その構造変化挙動を調査した結果、褐色腐朽過程においてリグニンに顕著な構造変化を生じている可能性が見出された。また、ヘミセルロース分解については、褐色腐朽菌が木材細胞壁中のヘミセルロースを酵素分解する際に、ドメイン構造の多様性を利用して効率的な分解を実現している可能性が示唆された。さらに、セルロース分解においては、褐色腐朽菌が有する各種分解酵素に付加する機能未知の付加ドメインを新たに見出し、その機能解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に得られた研究結果に基づき研究を継続してきた結果として、本年度の研究においては、褐色腐朽におけるセルロース分解、ヘミセルロース分解、リグニン分解それぞれについて、これまでに知られていなかった知見が見出されつつある。さらに、それらの知見について、いくつかの事項については学術論文や学会発表において公表してきている。以上のことから、本研究課題の進捗状況は、順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた情報を基にして、さらに研究を継続する計画である。具体的には、各種分解酵素を任意の割合で混ぜ合わせた場合の相乗作用解析や、褐色腐朽の主要な分解酵素系と考えられているフェントン反応と酵素との関連性調査、リグニンの構造変化に関するさらなる調査を進めることで、本研究の目的である「褐色腐朽菌が引き起こす木材細胞壁構成成分の変化は、どのよ うなメカニズムで生じ、それが菌にとってどのような意味を持つのか?」を明らかにする。
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