研究課題/領域番号 |
23K23677
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補助金の研究課題番号 |
22H02412 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40020:木質科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
高田 直樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (90605544)
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研究分担者 |
坂本 真吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (00783664)
杉山 淳司 京都大学, 農学研究科, 教授 (40183842)
粟野 達也 京都大学, 農学研究科, 助教 (40324660)
永野 聡一郎 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 林木育種センター, 主任研究員 等 (50753836)
七里 吉彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所 森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (80461292)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
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キーワード | 二次壁 / 層構造 / 表層微小管 / セルロースミクロフィブリル / 転写因子 |
研究開始時の研究の概要 |
樹木は巨大な樹体を永年的に維持するために、高度に分化した細胞壁を形成する。細胞壁では、セルロースミクロフィブリルの配向角度の違いにより層構造が形成されており、それにより木材には物理的強度が付加されている。しかし、細胞壁層構造がどのような細胞内分子機構により制御されているかについては詳細な理解に至っていない。本研究では、新たに同定した層構造を制御する転写因子の機能解析を進め、さらに下流遺伝子の機能解析、当該転写因子の進化的機能保存性にアプローチする。それにより、細胞壁層構造が作り出される分子基盤を明らかにするとともに、その分子基盤の進化的保存性の解明を試みる。
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研究実績の概要 |
二次壁はセルロースミクロフィブリルの配向角度の違いにより3層に区別される。セルロースミクロフィブリルの配向は表層微小管により制御されており、表層微小管とセルロースミクロフィブリルの配向には同調的な変化が見られる。しかし、二次壁の層構造が構築される過程で表層微小管の配向がどのような分子基盤により制御されているかについて多くの謎が残されている。研究代表者らはポプラを用いた遺伝子スクリーニングの結果、S2層の形成を担う転写因子(TF26およびTF26b)を同定している。そこで、本研究ではTF26/26bを起点としたS2層の形成機構の解明とTF26/26bの進化的機能保存性の解明を試みる。 まず、トランスクリプトーム解析によりTF26/TF26bの下流で機能する微小管関連タンパク質の同定を行った。TF26およびTF26bにグルココルチコイド受容体(GR)を連結した融合遺伝子を導入したポプラ過剰発現体(35S:TF26-GR、35S:TF26b-GR)を誘導剤(デキサメタゾン)で処理し、一定時間おきにサンプリングを行った。その後、total RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて発現遺伝子の情報を取得した。 次に、二次壁形成への関与が推定される微小管関連タンパク質(10遺伝子)について、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子欠損ポプラの作製に着手した。CRISPR/Cas9用の遺伝子コンストラクトを作製後、ポプラへ形質転換を行い、再生個体が得られた遺伝子についてはゲノム編集パターンの解析を行った。 また、TF26/26bの進化的機能保存性を解明するために、スギのTF26/26bオルソログ(2遺伝子)について、CRISPR/Cas9用の遺伝子コンストラクトを作製した後、スギ培養細胞へ形質転換を行い、遺伝子欠損スギの作製に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TF26/TF26bの下流で機能する微小管関連タンパク質の同定では、TF26およびTF26bにより制御される遺伝子群について、時系列の遺伝子発現情報を網羅的に取得することに成功した。また、TF26およびTF26bが直接的に結合するゲノム領域を決定するためにDAP-sequencingを計画しており、TF26およびTF26bのリコンビナントタンパク質の発現と精製を進めている。 二次壁の層構造形成への関与が推定される微小管関連タンパク質(10遺伝子)をターゲットとして、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子欠損ポプラの作製に着手しており、これまでに5遺伝子について候補個体を取得している。残りの5遺伝子については、CRISPR/Cas9システム用のガイドRNAを再設計し、遺伝子コンストラクトをポプラへ形質転換を行った。 TF26/26bオルソログを遺伝子欠損したスギの作製では、まず4つのガイドRNAを用いて形質転換を行い、1つのガイドRNAについては候補個体の取得に成功した。しかし、1つのガイドRNAから得られた個体のみではその後の形質評価に不十分であるため、各遺伝子につきさらに3つのガイドRNAを設計し、CRISPR/Cas9システム用の遺伝子コンストラクトを再設計した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に取得したトランスクリプトームのデータについて、バイオインフォマティクス解析を行い、TF26/TF26bの下流で機能する微小管関連タンパク質の同定およびTF26/TF26bの機能分化について考察する。また、TF26およびTF26bのリコンビナントタンパク質を用いて、DAP-sequencing解析に着手する。 微小管関連タンパク質を欠損したポプラの作製では、候補個体を取得した5遺伝子についてはゲノム編集パターンを決定後、閉鎖系温室で生育を開始する。残りの5遺伝子については、再生個体を取得した後、ゲノム編集パターンの解析に着手する。 TF26/26bオルソログを遺伝子欠損したスギの作製では、これまでに取得した候補個体についてはゲノム編集パターンの解析を行う。また、再設計した遺伝子コンストラクトをスギ培養細胞へ形質転換を行い、遺伝子欠損スギの作製を行う。
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