研究課題/領域番号 |
23K23679
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補助金の研究課題番号 |
22H02414 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 宗敬 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (90431337)
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研究分担者 |
棟方 有宗 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (10361213)
森山 俊介 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (50222352)
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2022年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 成長 / ストレス / ホルモン / サケ科魚類 / 増養殖 / 組換えタンパク質 / 培養系 / ゲノム編集 / 測定系 / 養殖 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はサケ科魚類をモデルとして、遺伝子重複により生じた成長調節に関わる数種のホルモン・タンパク質の機能を明らかにし、それらを感度と方向性が異なる指標として組み合わせることで、増養殖魚の成長とストレスを高精度で診断する。組換えタンパク質を作製して、インスリン様成長因子(IGF)-1に対するIGF-2の相対的役割と各IGF結合タンパク(IGFBP)の阻害・促進作用を検証する。また、免疫測定系を確立して、これらの成長・ストレス指標としての感度を飼育実験により明らかにする。そして、成長速度の変動を調節メカニズムを踏まえて診断し、種苗性の評価や飼育環境の改善を図る。加えて、知見・技術をアユやウナギに応用する。
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研究実績の概要 |
本研究はサケ科魚類をモデルとして、成長調節に関わる数種のホルモン・タンパク質の機能を明らかにし、それらを感度と方向性が異なる指標として組み合わせて、増養殖魚の成長とストレスを高精度で診断することを目的としている。本年度は以下の成果を得た。 インスリン様成長因子(IGF)-1と-2、およびIGF結合タンパク質(IGFBP)-2aについて大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質の作製を行った。まず融合パートナーと共に組換えサケ(rs)IGF-1と-2を発現させた。そして、rsIGF-1と-2についてはトロンビンによる酵素処理を行って融合パートナーを切断し、逆相クロマトグラフィーにより精製した。一方、rsIGFBP-2aは融合パートナーを付けた状態でアフィニティー精製した。 ゲノム編集実験については、研究協力者が所属する米国冷水養殖研究所にて、ニジマスIGFBP-2bのF2ノックアウト(KO)F2個体を作出した。IGFBP-2b KOによる血中IGF-1や他のIGFBPの補償反応を調べたところ、変異型個体と野生型個体で明瞭な違いは認められなかった。現在、研究協力者が各組織のmRNAレベルでの反応を解析中である。 融合パートナー付きのrsIGF-2を抗原として抗血清を得た。これを用いて時間分解蛍光免疫測定系の確立を試み、スタンダードカーブを得た。 また、ニジマスを対象にして育種が進んだ系統と非育種の系統の絶食に対するIGF-1/IGFBP系の反応を調べた。結果、高成長に対する選抜育種によって血中IGF-1量のベースラインの増加と血中IGFBP-1bの反応性の減少が生じていることが示唆された。 リガンドブロッティングを用いてニホンウナギ血中IGFBPの検出を行った。結果、サケ科魚類のIGFBP-1と類似した低分離量のバンドが検出され、個体によって血中量が異なることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の大きな目標として、組換えIGF-1と-2を作製して機能解析をすることがあったが、これらを達成できた。すなわち、両者とも融合パートナーを持たない組換えタンパク質として調製・精製した。これらをサクラマスの脳下垂体細胞培養系に添加したところ、IGF-2が成長ホルモン分泌を抑制した。また、発現させた融合パートナー付きの組換えIGF-2を抗原に用いて特異抗血清を作製し、TR-FIAの確立に着手した。加えて、組換えIGFBP-2bを作製し、脳下垂体培養実験に供してその作用を検証した。これらの成果は国内の学会で発表するとともに、次年度に国際学会で発表および国際誌に投稿予定である。 また、米国の研究協力者と共同でゲノム編集によりIGFBP-2b KO系統を世界に先駆けて確立することに成功し、生理学的な解析に着手した。加えて、上述の組換えIGFBP-2bを大量作製したことから、IGFBP-2b KO系統のニジマスに対する生体投与実験が可能となると考えられる。 研究協力者との共同実験で、ニホンウナギ、アユおよびシシャモの血中でIGFBPを検出し、これらの魚種でもIGFBPが成長・ストレスの指標になることを示唆した。 これらのことから、「おおむね順調に進行している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
IGF-2のTR-FIAの確立において、血清希釈系列がスタンダードカーブと並行にならない濃度範囲があることが示唆され、現在、その問題解決に取り組んでいる。具体的には、IGF-2の血清からの抽出法を酸・エタノール法から陽イオン交換体を用いた方法に変更して条件検討を行っている。また、ユーロピウム標識に用いるIGF-2を市販品から自前で調製した組換えタンパク質に変更することも検討している。 本年度までに融合パートナーを持たない組換えIGFBPを調製する方法をほぼ確立できたのでスケールアップを行う。また、より詳細なIGFBPの機能解析を行うため、脳下垂体培養系をより簡便な器官培養に切り換えることを検討中である。 さらに、海外の研究協力者と共に実施中の、IGFBP-2aゲノム編集魚の表現型解析を進める予定である。
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