研究課題/領域番号 |
23K23680
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補助金の研究課題番号 |
22H02415 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
笠井 亮秀 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (80263127)
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研究分担者 |
野村 大樹 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (70550739)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
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キーワード | 環境DNA / 海氷 / 魚類群集構造 / オホーツク海 / 北極海 / スケトウダラ / 魚類相 / 流氷 |
研究開始時の研究の概要 |
IPCC第6次報告書によれば,北極海の海氷は2019年の夏季には従来の40%も減少するなど,地球温暖化の影響は高緯度域ほど顕著に現れている。このような高温化と海氷の減少は,海洋生態系に大きな影響を与えていると予想される。しかし氷の張った海域では曳網できないため,海氷下に生息する魚類の情報は極めて限定的である。これに対し我々が開発した環境DNA手法は,環境水を採水してそれに含まれるDNAを分析することで魚類相を推定できるそこで本研究では,環境DNA手法を用いて海氷の下にどのような魚類がどれくらい生息しているのかを明らかにすることを目的とする。
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研究実績の概要 |
環境DNA手法を用いて,季節海氷域であるオホーツク海を含む北海道周辺の魚類群集の時空間変化を明らかにするための調査と分析を行った。北海道周辺海域において2022年の調査では3~26分類群,2023年の調査では2~26分類群の魚種が検出された.両年の結果に対しNMDS解析を行ったところ,太平洋の魚類群集は年により非類似性を示した.北海道の太平洋側には津軽暖流と親潮が流入しており,両者の流量や影響範囲が年によって異なることが,太平洋の魚類群集構造に影響を与えた可能性がある.一方で,紋別の沿岸域では6~28分類群の魚類が検出された.沖合域では,沿岸域とは組成の異なる2~20分類群が検出された,また,海氷接岸期でも7~14分類群を検出することができた.間接傾度分析の結果、群集組成の変化に水温と岸からの距離が相関していることが示された.網走市鱒浦港では10~38分類群の魚類が検出された.オホーツクタワーの結果と合わせて解析したところ,水温と群集組成との間に有意な相関があった. また、低温環境において,水温や海水の違いが環境DNAの分解速度に与える影響を調べることを目的とし,スケトウダラの飼育水を用いて分解実験を行った。その結果、急速に分解がおこる分解初期と比較的ゆっくりと分解が進む分解後期の2段階構造になっていることが分かった。これは,分解が進むにしたがってDNAの形態が変化し,分解速度に強く影響を与える要素が段階的に変化するためと考えられる。また,分解速度定数と水温の間には相関関係は見られなかった。一方,おしょろ丸の飼育水のeDNA分解は室蘭水族館飼育水のeDNAの分解より速く,分解速度は生息環境と海水の性質に依存することが示唆された。その要因として,海水中の微生物フローラや,対象種のバイオマス,DNAの鮮度の違いなどが推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海氷下の海水や湖水の氷の水から環境DNAを抽出、分析できることを確かめた。また年間を通じてモニタリングすることにより、氷の有無が魚類相に与える影響も推定することができた。さらに、同じように海氷が接岸する紋別と網走において、魚類相が異なることが分かった。これは、海底地形の差異により深層に生息する魚類を反映した結果であると推測され、興味深い。 また、調査は日本周辺にとどまらず、北極圏のケンブリッジベイ(カナダ)でも行い、海氷および海氷下の海水サンプルを得ることができた。 さらに、環境DNAを用いた生物相の推定をする際にしばしば問題となる水中でのDNAの挙動についても、分解実験を行うことにより、ある程度見通しを得ることができた。 このように、当初想定していた研究内容は概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの成果の一つとして、研究開始時には予定していなかった、氷そのものに含まれるDNAの分析にも成功した。これは、氷が形成されたときの生物相に関する情報を保存しているものと思われる。そのため、今後は海水を凍らせて保管し、保管中にDNAがどのように変遷していくかを調べる実験を行う。 また、昨年度までにフィールド調査等で得られた成果を、順次論文として発表していく。
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