研究課題/領域番号 |
23K23681
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補助金の研究課題番号 |
22H02416 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩滝 光儀 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (50423645)
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研究分担者 |
足立 真佐雄 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (70274363)
鈴木 敏之 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産技術研究所(長崎), 部門長 (70371804)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | 渦鞭毛藻 / アンフィドマ科 / Azadinium / Amphidoma / アザスピロ酸 / 有害藻類 / 系統分類 / 分布 |
研究開始時の研究の概要 |
日本周辺海域で下痢性貝毒アザスピロ酸による食中毒を防除するためには,この毒を生産するアンフィドマ科渦鞭毛藻の出現種と生産毒の把握が必要である。本研究では,日本周辺海域に出現する小型微細藻類を選択的に採集し,アンフィドマ科渦鞭毛藻を識別して単藻培養株を作成する。微細構造観察,分子系統解析,毒分析によりアンフィドマ科の種組成に加え,生産するアザスピロ酸類縁体の組成を把握する。種組成からは日本周辺海域で検出対象となるアンフィドマ科渦鞭毛藻とこれらの形態的・遺伝的形質が明らかとなり,有毒系統群が生産する類縁体の組成からは海産物からのアザスピロ酸検出時にも原因系統群の特定が可能となる。
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研究実績の概要 |
本研究は日本周辺海域に分布するアンフィドマ科渦鞭毛藻の種組成,毒組成,そして有毒個体群の分布を明らかにすることで,アザスピロ酸生産種の検出基盤を構築することを目的としている。今年度はアンフィドマ科渦鞭毛藻の試料採集と培養株作成を継続し,現在までに作成して研究室で維持している培養株も含め,光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡による形態観察,分子系統解析,毒分析を実施した。広島湾,相模湾,浜名湖,東京湾等で海水試料を採集したほか,相模湾と浦ノ内湾からは定期的に海水試料を入手してアンフィドマ科渦鞭毛藻の細胞を探索した。作成した培養株のLSU rDNAとITS領域に基づく分子系統解析を実施し,Azadinium cf. dexteroporumとAmphidoma sp.1の出現を確認した。前年度までに未記載種であることを確認していた短い前頂孔板と第1頂板頂端に位置する腹孔をもつAzadiniumの一種をAzadinium anteroporumとして新種記載した。アジア太平洋域から出現が確認されていたAmphidoma sp.1については,系統的位置からA. languidaに近縁な未記載種であることを確認し,透過型電子顕微鏡による細胞内微細構造の観察を進めた。また,アジア太平洋域からはA. languidaに近縁な環境DNA配列が報告されていたことから,Amphidoma sp.1のDNA配列と比較した。日本周辺に出現するアザスピロ酸生産種の定量を目的としたqPCRについては,これまでにアザスピロ酸の生産が確認されているA. poporumとA. spinosumの培養株を用いて細胞数を定量するための予備実験を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂溶性貝毒アザスピロ酸(AZA)は渦鞭毛藻アンフィドマ科の一部の種による生産が知られ,日本沿岸におけるアンフィドマ科の出現種に関する情報は本研究グループにより蓄積されつつある。今年度の調査においても培養株が作成され,系統解析により2種のアンフィドマ科の出現を確認し,これら2種の系統的位置はAzadinium cf. dexteroporumとAmphidoma sp.1に近縁であった。日本産Azadiniumの未記載種1株については,腹孔を第1頂板の左寄りにもつ種(A. cuneatumなど)からなる系統群に属するが,これら既記載種の系統には含まれないことが確認できていた。腹孔が第1頂板頂端に位置すること,前頂孔板が短いなどの特徴が既記載種と異なることを示し,Azadinium anteroporumとして新種記載した。また,アジア太平洋域からの出現が確認されているAmphidoma sp.1については系統的位置からA. languidaに近縁な未記載種であることを確認した。本種の鎧板配列はA. languidaと酷似するが前縦溝板の頂端には凹みが安定してみられ,また,どの培養株からもAZAの生産が確認されない点もA. languidaと異なっていた。Amphidoma sp.1については細胞内微細構造の観察を行い,ピレノイド基質への細胞質の陥入や結晶構造を含む小胞など,アンフィドマ科から報告が無かった構造を確認している。アジア太平洋域からはA. languidaに近縁な環境DNA配列の報告があったため,これら2種と比較したところAmphidoma sp.1の配列であることがわかった。アンフィドマ科の出現時期については,有毒種の出現時期の確認を進めるためのqPCRプライマーとプローブを作成し,検出と定量の予備実験も順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
日本周辺海域に出現するアンフィドマ科渦鞭毛藻の種組成の把握を目的とした細胞の探索を継続する。プランクトン採集,培養株作成,分子系統解析(LSU rDNAとITS領域),走査電顕観察は問題なく実施できているため,技術的な改良を加えながら作業を継続する。前年度より行っている透過型電子顕微鏡観察も継続する。日本周辺から出現が確認されたアンフィドマ科渦鞭毛藻には,大西洋などから報告されてきた既記載種の系統群に含まれる培養株もあるが,大西洋産株と姉妹群となる培養株もあるため,これら既記載種の系統に含まれない株については走査電顕観察などにより形態的形質を精査することで種の異同を明らかにしていく。次年度は,これまでに出現を確認したアンフィドマ科渦鞭毛藻の系統的位置と形態の情報をまとめる予定である。毒分析についても,新たに作成する培養株についてアザスピロ酸の分析を継続する。アンフィドマ科有毒種の出現時期については,作成したqPCRのプライマーセットとプローブを用い,アンフィドマ科渦鞭毛藻と有毒種(A. poporumとA. spinosum)の出現時期の把握を試みる。時系列での調査海域は相模湾と土佐湾を予定しており,これらの試料採集を依頼している。アンフィドマ科渦鞭毛藻の種組成については,現在までの培養株作成による遺伝子データの蓄積が順調であることから,種の探索をより広範に進めるためにメタバーコーディング解析による遺伝子探索を試みる。
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