研究課題/領域番号 |
23K23687
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補助金の研究課題番号 |
22H02422 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大林 由美子 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 講師 (60380284)
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研究分担者 |
北村 真一 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (40448379)
高尾 祥丈 福井県立大学, 海洋生物資源学部, 准教授 (00511304)
吉江 直樹 愛媛大学, 先端研究・学術推進機構先端研究高度支援室, 准教授 (50374640)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
2025年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 生物間作用 / 微生物群集 / 海洋生態系 / 有機物分解 / 栄養塩再生 / 水圏生態系 / 細胞外加水分解酵素 / 従属栄養細菌 / 原生生物 / 菌類様原生生物 / 魚類由来溶存物質 |
研究開始時の研究の概要 |
海洋での物質循環において、従属栄養細菌は有機物の分解と栄養塩類の再生に寄与していると考えられる。本研究では、「海水中の従属栄養細菌群集と他の生物との間に、有機物の低分子化を介した“見えない生物間作用”があり、これにより水圏生態系での従属栄養細菌の生物活動が支えられているのではないか、さらに、この効果は細菌による栄養塩再生をとおして一次生産者も活発化させ生態系全体の生産性をも支えているのではないか」と仮説を立て、その検証により、水圏生態系での生産性維持機構ならびに生物多様性の重要性について新たな知見を得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
水圏生態系での物質循環において、従属栄養細菌は有機物の分解と栄養塩類の再生に寄与するが、これらのプロセスに細菌自身の能力だけでなく、他の生物の存在も関係している可能性がある。我々はこれまでの研究から、海水中の従属栄養細菌が有機物を取り込む前段階に他の生物が手を貸しているかのような、有機物の低分子化を介した“見えない生物間作用”があるのではないかと考えた。本研究では、海水中の細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”の実態を示すことと、水圏生態系でのその機能を評価することを目指している。 当該年度は、本課題で計画している実験のうち、寄生性の原生生物と海水中の従属栄養細菌との間の作用を調べる実験として、スクーチカ繊毛虫を用いた実験を行った。スクーチカ繊毛虫Miamiensis avidusは魚類に寄生するが、自由生活性で液体栄養培地でも生育し、細胞外プロテアーゼ産生能を持つことがわかっている。実験は、微生物群集を含む天然海水にM. avidus株を添加して培養し、系内の細菌数とM. avidus数・形態・動き等の変化から細菌群集とスクーチカ繊毛虫の相互作用を検討した。その結果、培養初日に浸透圧変化によるとみられる現象でM. avidus細胞数が7割減少し、同時に細菌数が大幅に増加した。これは、M. avidus 死細胞が即座に従属栄養細菌の栄養基質として利用されたためと考えられた。さらに、その後の細胞数の変化から、海水中で生残したM. avidusが細菌を捕食している可能性が伺えた。本実験では、M. avidusの細胞外プロテアーゼが有機物の低分子化を介して細菌に与える作用を調べることはできなかったが、魚類寄生性原生生物と海水中の細菌群集の意外な相互作用が浮かび上がった。今後、細胞外プロテアーゼの作用も含めてさらに検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、魚類由来溶存物質が細菌群集に与える作用に関する実験、菌類様原生生物と細菌群集の間の作用に関する実験、魚類寄生性原生生物と海水中の細菌群集の相互作用に関する実験を行い、それぞれ興味深い結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、海水中の従属栄養細菌群集をめぐる“見えない生物間作用”として、(A)菌類様原生生物による作用、(B)捕食性原生生物による作用、(C)他の生物に寄生する寄生性原生生物による作用、(D)魚類による作用、を対象としており、今後も引き続きそれぞれについて検討する培養実験を行う。培養系内での栄養塩類の再生と植物プランクトン(微細藻類)の増殖への効果についても検討していく。 また、見えない生物間作用を見える化する方法の探索も並行して実施する。そのために、見えない生物間作用の主体である水中の有機物分解酵素について、分子量分画を用いた詳細分析の検討や試料保存法の検討を進める。
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