研究課題/領域番号 |
23K23688
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補助金の研究課題番号 |
22H02423 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40030:水圏生産科学関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
引間 順一 宮崎大学, 農学部, 教授 (70708130)
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研究分担者 |
酒井 正博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20178536)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | エドワジエラ症 / ヒラメ / メダカ / 細胞死 / ASC / 感染機構 / 病原因子 / パイロトーシス |
研究開始時の研究の概要 |
ヒラメやマダイなどの有用養殖魚種の養殖においてエドワジエラ症は、本疾病に対する防除対策が社会的急務である。申請者は、エドワジエラ症の本質的理解には「本菌が炎症性細胞死(パイロトーシス)を一時的に回避する分子機構の解明」が鍵となることを見出した。しかし、本菌による宿主パイロトーシス回避の分子機構は全く不明である。そこで本研究では、パイロトーシスに関与する病原因子EvpPの機能欠損株を作製し、本菌感染経路に基づいた病原性と本細胞死との関係、本分子に起因する未知の宿主分子機構の探索、そして本細胞死の一時的回避メカニズムについて詳細に解析する。
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研究実績の概要 |
ヒラメやマダイなどの有用養殖魚種の養殖において、Edwardsiella属の数種を原因とするエドワジエラ症は、毎年甚大な被害の原因となっており、本疾病に対する防除対策が社会的急務である。申請者は、細胞内における本菌への分子認識機構に関する先行研究の成果から、エドワジエラ症の本質的理解には「本菌が炎症性細胞死(パイロトーシス)を一時的に回避する分子機構の解明」が鍵となることを見出した。しかし、本菌による宿主パイロトーシス回避の分子機構は全く不明である。そこで本研究では、パイロトーシスに関与する病原因子EvpPの機能欠損株を作製し、本菌感染経路に基づいた病原性と本細胞死との関係、EvpPに起因する未知の宿主分子機構の探索、そしてEvpPによる本細胞死の一時的回避メカニズムについて詳細に解析する。以上より、エドワジエラ症原因菌の細胞内感染経路の真のホットスポットを解明し、本感染症による養殖被害問題を解決するための防除対策に繋げる。本研究計画では、これまでにE. piscicidaおよびE. anguillarumの2種類のEvpP欠損株で作製し、これらの内、E. piscicida欠損株を用いてヒラメおよびメダカへの感染試験を実施した。その結果、野生株に比べて欠損株によるヒラメへの感受性は顕著に低く、全く死亡しなかった。野生株およびE. piscicida欠損株に感染したメダカの各臓器における菌数を比較したところ、腸管、腎臓および肝臓において欠損株菌数が野生株に比べて有意に少なかった。また、欠損株に感染した臓器では、野生株に比べて炎症性サイトカイン遺伝子(il1b, il6など)の発現が有意に高かった。これらの結果は、EvpPによりインフラマソームの機能が阻害されていることが推察された。最後に、E. anguillarum欠損株を用いたマダイへの感染試験については、感染試験を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の研究計画で予定していた2つの実験;「(1)EvpP欠損株を用いてヒラメ、マダイおよびメダカに対する感染試験」および「EvpP欠損株および野生株に感染した魚の臓器における遺伝子発現解析」については、マダイ以外は完了した。内容としては、E. piscicidaおよびE. anguillarumの2種類のEvpP欠損株で作製し、これらの内、E. piscicida欠損株を用いてヒラメおよびメダカへの感染試験を実施した。その結果、野生株に比べて欠損株によるヒラメへの感受性は顕著に低く、全く死亡しなかった。野生株およびE. piscicida欠損株に感染したメダカの各臓器における菌数を比較したところ、腸管、腎臓および肝臓において欠損株菌数が野生株に比べて有意に少なかった。また、欠損株に感染した臓器では、野生株に比べて炎症性サイトカイン遺伝子(il1b, il6など)の発現が有意に高かった。これらの結果は、EvpPによりインフラマソームの機能が阻害されていることが推察された。以上の内容から進捗状況は「概ね良し」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の研究計画としては、以下の3つの実験計画を実施する。 課題1:E. anguillarumのEvpP欠損株を用いてマダイに対する感染試験を行う。また、EvpP発現ベクターを欠損株に形質導入した相補株も作製し、同様に試験する。以上の感染試験の累積死亡率を算出し、病原性の違いを野生株と比較する。次に、EvpP欠損株および野生株に感染した魚種の腸管、鰓、腎臓および肝臓における病理組織をHE染色後に顕微鏡下で観察する。 課題2:蛍光EvpP欠損株に感染した魚の腸管、鰓、腎臓および肝臓から組織切片を作製する。次に抗GFP抗体を用いて組織切片を免疫染色し、各組織中のエドワジエラ菌感染細胞を特定する。抗体が機能しない場合は、エドワジエラ菌抗血清を用いて免疫染色を行う。次に、の組織切片を用いて、in situハイブリダイゼーション(ISH)法により、2つの遺伝子gfpおよびascの発現細胞を同時に特定する。次に、蛍光EvpP欠損株および野生株(pGFPuvを形質導入)に感染したヒラメやマダイの末梢血、腎臓、腸管から分離した白血球からGFP蛍光標識によりフローサイトメトリーや蛍光顕微鏡により感染細胞を特定し、メイ・ギムザ染色後の検鏡観察により細胞種を推定する。申請者は、赤色蛍光(mCherry)標識マクロファージ・メダカの作製に成功している。これを用いて、より簡便に且つ正確にエドワジエラ菌が感染したマクロファージを特定する。 課題3: EvpP分子によるパイロトーシス誘導の時間的変化への影響を解明するために、エドワジエラ菌蛍光EvpP欠損株および野生株(+pGFPuv)に感染したメダカの腸管および腎臓から継時的に試料採取した細胞を用いて、細胞死試験(PI染色後のフローサイトメトリー解析)を行い、EvpPによる細胞死誘導のタイミングへの影響について解明する。
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