研究課題/領域番号 |
23K23700
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補助金の研究課題番号 |
22H02435 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村田 良介 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 准教授 (40809159)
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研究分担者 |
莚平 裕次 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 助教 (20806971)
ニシハラ グレゴリーナオキ 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (40508321)
征矢野 清 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 教授 (80260735)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | イカ / 性成熟 / ホルモン / 産卵環境 / 海洋環境変動 / 性決定 / アオリイカ / カミナリイカ / GnRH-like / テストステロン / 細胞増殖促進 / 成長促進 / 産卵基質 / アマモ |
研究開始時の研究の概要 |
イカ類は日本のみならず世界的にも有用な水産資源であるが、その漁獲量は急激に減少している。この一因として海洋環境の変化がイカ類の繁殖を阻害している可能性が考えられる。 これまでにイカ類の繁殖期など基本的な生活史が明らかになっている一方、実際に体内で繰り広げられる繁殖生理メカニズムと、詳細な産卵環境条件は不明である。そのため、なぜ海洋環境変動によりイカ類再生産が阻害されるのか?その仕組みが分からない状態にある。本研究では沿岸性イカ類の生殖メカニズムと繁殖への環境影響を明らかにすると共に、野外における産卵に必要な環境条件を調べることにより、海洋環境の変化がイカ類の繁殖に与える影響の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
(イカ類におけるGnRH-likeの生理作用)アオリイカ雄の脳内GnRH-like遺伝子発現量は精母細胞期から精細胞期にかけて発現量が上昇する傾向が見られた。免疫染色の結果、本種の脳におけるGnRH-like陽性細胞及び神経繊維は、眼柄線付近の視索で認められた。本種の血リンパ中テストステロン(T)濃度をELISA法により測定したところ、雌の卵黄蓄積後期に有意に高い値を示した。本種の未熟な精巣へのin vitroによるGnRH-like添加実験の結果、T産生と細胞増殖促進効果が認められた。一方、カミナリイカ稚イカへのvivo投与の結果、生殖腺組織への影響は見られなかったが成長促進効果が認められた。(アオリイカ卵巣発達関連因子の網羅的探索)アオリイカ雌の細胞質成長期(a群)と無卵黄前・後期(b群)の脳から抽出したTotal RNAをRNAseqに供した結果、2群間において1248の発現変動遺伝子が検出された。(イカ類の産卵環境調査と産卵基質の嗜好性)4から8月にかけて、長崎県新上五島町の4地点でシュノーケリング潜水により産卵基質・底質を観察し、水中ロガーにより①産卵が確認された地点②産卵が確認されなかったランダムな地点の水深、水温、塩濃度、GPS情報を計測した。産卵は5、6月にのみ確認された。アオリイカは砂底のアマモに、カミナリイカは砂底のアマモとオゴノリ属の海藻に産み付けていた。水深と塩濃度は①と②の間で差は見られなかったが、水温は20℃以上の地点にのみ産卵が確認された。4地点中1地点では調査期間中を通して産卵は確認できなかった。アオリイカ、カミナリイカの親イカを収容した水槽に、様々な構造物を投入し、産卵基質の選択性を調べた。その結果、アオリイカはロープに一度だけ産卵を行った一方、カミナリイカは、設置した全ての構造物に頻繁に産卵しており、中でも人工海藻に最も多く産卵していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、GnRH-likeの生殖腺発達に伴う発現変動や脳内発現局在を明らかにすると共に、添加培養実験、投与実験による機能解析を実施することにより、イカの性成熟と成長に果たすGnRH-likeの生理作用について多くの知見を得ることができた。これらの結果の一部は令和5年度春季水産学会にて発表した。 また、フィールド調査により、アオリイカとカミナリイカの自然界における産卵基質・底質や水深、水温、塩濃度などの物理環境と産卵の関係に関する知見を得た。さらに、飼育環境下における実験では、同じ沿岸域を主な生息地とするアオリイカとカミナリイカの産卵行動に、傾向の違いが見られた。加えて、産卵基質に関しては飼育環境下で得られた結果と自然界下で見られた結果との間で差異が確認できた。これらの結果は沿岸地域にて既に実施されているイカ芝設置などの資源回復対策に活用できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(性分化メカニズム)今年度は人工育成した稚イカの数が少なく性分化メカニズム解析用サンプルを得ることができなかったため、次年度は余裕を持った数を育成し、性分化直後の生殖腺サンプルを入手する予定である。(性成熟メカニズム)今年度実施した、アオリイカ未熟精巣を用いたGnRH-like添加培養実験における抗BrdU抗体免疫染色では、BrdUの取り込みがやや不安定であり、シグナルも弱かった。そこで次年度は、増殖細胞核抗原(PCNA:Proliferating Cell Nuclear Antigen)を標的としたPCNA抗体を用いて再度免疫染色を行い、各群における陽性細胞率に有意な差が認められるかを再度検証する予定である。また、RNAシーケンスデータのローカルブラストを行い、アノテーションのついた遺伝子の中から卵巣発達への関与が予想される因子の抽出を行う。その後、定量PCRにて候補因子の脳内発現量の定量を行い、生殖腺発達との関連性を確認すると共に、具体的な機能解析へと進む予定である。(産卵環境調査)今年度の調査結果を補強するべく同様のフィールド調査を行なっていく。同時に、今年度のフィールド調査では1度のみしか確認されなかった自然界下にある人工物への産卵についての調査のため、地方自治体により設置されている人工産卵礁への産卵状況の確認やその周囲の物理環境の調査を行うと共に、人工構造物を設置し、産卵が行われるかどうかの調査も行う。また、沿岸性イカ類と捕食・被食関係にある生物の存在が産卵に影響を与えている可能性も示唆されたため、産卵期におけるeDNAの解析を行い、その地点の生息生物相を網羅的に確認する。飼育環境下において、カミナリイカが視覚情報を元に産卵を行なっているのかを調査するため、水槽に色のみが異なる同じ構造物を入れ、構造物と水槽の色のコントラストが産卵行動に影響を与えるのかを調べる。
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