研究課題/領域番号 |
23K23709
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補助金の研究課題番号 |
22H02444 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41010:食料農業経済関連
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
栗原 伸一 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (80292671)
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研究分担者 |
武田 史朗 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20388119)
秋田 典子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20447345)
木下 剛 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (30282453)
矢野 佑樹 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 講師 (40618485)
丸山 敦史 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (90292672)
加藤 弘祐 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (70825322)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,030千円 (直接経費: 13,100千円、間接経費: 3,930千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
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キーワード | 流域治水 / あふれさせる治水 / 流域農地の管理 / 被災作物の経済評価 / 水田遊水機能の経済評価 / 被災作物 / 流域農地 / 実験経済学 / オークション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、流域治水に向けて、豪雨時の洪水を上流域の農地に計画的に氾濫させることで、下流の住宅地への浸水リスクを軽減する「あふれさせる治水」の実現を目指す。そのために、本研究では次の3つのタスクを実現する。1つ目は、下流域住民が考える農家への補償額を水田の治水機能の経済価値として捉え、その具体的な金額を明らかにする。2つ目は、治水に協力して被災した農家への補償手段のひとつとして、浸水した農産物の販売可能性と、その経済価値を明らかにする。3つ目は、流域の住民、農家、自治体を交えたワークショップを開催し、1~2のタスクで得られた結果をフィードバックさせ、概念共有と条件を把握し、合意形成を図る。
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研究実績の概要 |
本年度は、流域治水に関する予備実験と欧州調査を実施した。予備実験の結果については未だ分析段階にないため、以下、欧州調査で得られた知見について整理・報告する。 欧州の河川は勾配が緩いエリアが広く、流域が長く、水の流れが緩やかであるため、欧州の洪水は日本と比較して避難の時間的猶予がある場合がある一方で、内水氾濫が課題となりやすい。このような水害による地域への影響が異なるものの、欧州の流域治水はリスク評価の考え方が先駆的であり、我が国でも参照すべき点が多々ある。欧州の洪水リスク評価への取り組みは、1990年代以降に相次いで発生した大規模洪水への対応として、EUが2007年10月に発行した洪水リスクの評価と管理に関する指令が契機となっている。同指令では期限を定めて洪水マップの作成とそれを用いた管理計画の策定を義務付けた点に特徴がある。洪水対策は各国の裁量に委ねられているが、保険制度との連携が我が国と異なる特徴的な点の1つとして挙げられる。なかでもフランスはEU指令以前の 1981 年の大洪水を契機に自然災害に対する保険制度が確立されており、これを拡充する形で水害保険の制度が確立された。政府が保険制度に直接介入することで、法律と直接的に関連させて運用させると同時に、災害リスクの高いエリアには保険を適用しないなど、厳しい土地利用規制を実現している。とくに今回の調査では、ロワール川沿いの洪水頻発エリアでは歴史的に要塞が堤防を兼ねた土地利用が行われている場所もあり、そうした地域では防災と景観保全が両立できていることが認められた。一方、イギリスにおける調査では、政府と保険業界の連携により、水害リスクの高い者の掛け金の急激な上昇の緩和措置が取られており、安全なエリアへ移動を促す政策が採用されており、脆弱性の高い者に対する配慮が重点的になされていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧州(イギリスとフランス)における事例調査で、流域治水の先進事例(保険事情ならびに景観保全との両立問題)から多くの知見を得ることが出来た。とくに、欧州の洪水事情については、我が国と比べて避難の時間的猶予がある一方、内水氾濫が課題となりやすいため、リスク評価を重視している点など、参考にすべき点が多々見られた。 また、オークションの予備実験を実施し、来年度に予定している本実験に向けての課題が明らかになった。具体的には、スマホやPCで同時にオークションシステムにアクセスさせる際に、初めてのシステムであったため、1~2割の被験者がなんらかの理由(URLの入力ミスなど)でオークションに参加できない事態となった。よって、本実験ではより容易にオークションシステムに参加できる仕組み(ボタンをクリックするだけ等)を開発することになった。なお、予備実験のデータは十分に分析できていないものの、入札を繰り返す度に被験者個人の評価(入札額)は収束していることから、オークションのメカニズムは水田や浸水米の経済評価において十分に働いていると考えられる。 以上のように、本年度は欧米調査と予備実験から多くの知見を得られたことから「おおむね順調に進展している」と自己評価した。なお、本年度は国内調査と北米での調査を実施できなかったことが不足点といえよう。
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今後の研究の推進方策 |
まず、農地の経済評価の本実験を計画する。CVMでは、いかに具体的なシナリオを回答者に示すことができるかが重要なポイントとなる。つまり、農地に水をあふれさせることで、どの程度の減災効果があるのかを地図や具体的な数字で示すことが必要になる。なお、調査対象(回答者)は、受益者である流域住民だけでなく、流域から離れた住民に対しても実施し、距離とWTPの関連性などについても分析を試みる。 次に、浸水作物の経済評価の本実験を計画する。こちらも正確なWTP計測のためには評価財を具体的に示す必要があるため、実現できる可能性が高い「米」に限定する。実験の回答者は上の農地評価同様、流域内だけでなく、流域から離れた消費者も対象とする。本実験は、流域農家と丁寧に調整しながらブランド名や属性、支払意志額(WTP)以外の質問項目を作成しなければならない点に注意する。なお、これら2つの実験では統計的な分析を実施するため、比較的大きなサンプルが必要となる。加えて、WTPを計測するためのオークションは複雑なメカニズムなので、ネット上で仮想的な実験会場のシステムを構築する(予備調査で課題は把握している)。 また、最終年度に開催を予定している流域の住民、農家、自治体を交えたワークショップの準備に入る。ここでは、上2つの結果をフィードバックさせ、相互理解のための概念共有と条件把握という2段階の手続きを経ることで、あふれさせる治水への合意形成を図る。 なお、新型コロナが再び流行した場合には、対面調査は郵送調査に、ワークショップはオンラインあるいはハイブリッド開催などで柔軟に代替させる
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