研究課題/領域番号 |
23K23721
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補助金の研究課題番号 |
22H02456 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤原 正幸 京都大学, 農学研究科, 教授 (40253322)
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研究分担者 |
一恩 英二 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (10320912)
泉 智揮 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (40574372)
吉岡 秀和 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (70752161)
長野 峻介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (90646978)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,510千円 (直接経費: 12,700千円、間接経費: 3,810千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 通し回遊魚 / 農業水路 / 魚の遡上シミュレーション / 確率最適化モデル / アユ / 魚道 / バイオテレメトリー / 手取川 / 斐伊川 / 数値流体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
農業水利システムでは環境との調和に配慮した操作や管理が求められているが,純淡水魚に配慮したものが多い一方,回遊魚については追跡の困難性が一因で研究が一向に進んでいない.本研究では,バイオテレメトリー手法を用いて追跡の困難性を克服するとともに,回遊の障害となる農業水利システムの構成要素を,どのように管理すれば魚類回遊と調和できるかという課題に取り組む.具体的には,構造物周辺での回遊魚の挙動を数値モデルで再現し,個体群レベルで記述できる確率微分方程式モデルにアップスケーリングする.これにより,農業水利システム全体における魚類の移動や産卵を含むライフサイクル全体を再現できるモデリング手法を確立する.
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研究実績の概要 |
手取川七ヶ用水の山島用水4-2号支線の米永分水工下流区間(およそ3.5km)において,2019~2023年の調査で,23種4949個体の魚類を採集し,PITタグを挿入した魚類は14種1038個体,7種247個体の移動データを取得した.また,山島用水4-2号支線で採集した魚類の体長や湿重量から肥満度を計算した.長さ8㎜の小型PITタグを,体長50~70mmのヨシノボリ類に挿入して室内の水槽で飼育したところ,体長50mm前後の個体でPITタグが腹腔から脱落するケースがみられたが、脱落せずに6ヶ月以上成長する個体がいることが確認された(供試魚数が少ないので未公表). 手取川七ヶ用水の山島用水4-2号支線の米永分水工下流区間(およそ3.5km)におけるアユの遡上状況を再現するために,数値モデルを構築した.水路部においては,水流に応じた遊泳速度を設定し,遊泳持続曲線から遊泳持続時間を求め,遡上時間と遡上距離を計算する.落差部では落下流速に応じて,突進速度で遡上するケースと跳躍遡上をするケースに分類して,遡上が成功するまで試行を繰り返すことで遡上のシミュレーションモデルを作成した.870m離れて設置されたタグアンテナでの観測結果からその間の遡上時間が明らかとなったケースを再現できるようにパラメータを設定した.シミュレーション結果より,対象区間で一つでも起伏ゲートが起立した状態(70cmの落差)にあるとそこで遡上が止められる結果となった. 前年度と同様に島根県斐伊川中流域を研究のサブサイトとして,斐伊川漁業協同組合の協力のもと河川のアユに関する体重データを取得できた.また,手取川上流域における人と水産資源の持続的な共存にも焦点を当て,ゲーム理論に基づいた分析も行った.自己興奮型確率微分方程式系を用いたアユ遡上量予測モデルも構築し,実河川のデータからパラメータを同定できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019~2023年の山島用水4-2号支線のPITタグによる移動調査でアユ143個体,カマツカ43個体,ドジョウ31個体,ドンコ6個体,ウキゴリ類17個体などの魚類の移動行動が検知されている.2023年度は,海域に近いd1とd2で38個体のウグイにPITタグを挿入したが行動は検知されなかった. アユの遡上シミュレーションモデルに関しては,対象水路内に複数設置されている起伏ゲートが起立している状態では,アユは跳躍遡上行動をとると考え,そのモデル化を組み入れた.そして水路全体(3.5km)の遡上シミュレーションを起伏ゲートの複数のパターンで実施した 研究サブサイトである島根県斐伊川について,大きな問題なくアユ成長データを取得できている.また,斐伊川漁協との研究協力体制も継続できている.魚群回遊の数理モデル化については,金融工学や保険数理の分野で構築されてきた先進的な時系列データモデル化手法が本研究に応用可能であることを独自に見出し,数値計算事例を得ることができている.
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今後の研究の推進方策 |
手取川本川に生息するアユを漁協から購入し、天然・人工の判別,湿重量,体長の計測を行うことで,水路の天然・人工アユの個体数比や体長・湿重量と比較できないか検討する.アユ以外の魚類についても体長・湿重量・肥満度を計測して、山島用水4-2号支線と手取川本川の値を比較することを検討する.90mm未満の魚類に長さ8㎜の小型PITタグを挿入する室内飼育実験の継続を検討する。山島用水4-2号支線より上流の4-1号支線、幹線水路を含めた取水口~海域の全区間の環境DNA分析を実施することで、区間ごとの魚類相や各魚種のDNA濃度から魚類の移動状況の推定を行えないか検討する. アユ遡上シミュレーションモデルに関しては,魚類の挙動解析モデルの改良を引き続き行い,流況解析と挙動解析の連成,挙動解析における確率モデルの改良をおこなう.また,アユ遡上については,降雨量等に依存した起伏ゲートの起伏状況が支配因子であると示唆されているため,降雨ならびに起伏ゲートの起伏のダイナミックスをモデル化することで,対象水路におけるアユ遡上について確率論的な方法論に基づいて検討していく. また,サブサイトである島根県斐伊川中流域においてもデータ収集を継続する.
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