研究課題/領域番号 |
23K23722
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補助金の研究課題番号 |
22H02457 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
兵頭 正浩 鳥取大学, 農学部, 准教授 (60611803)
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研究分担者 |
石井 将幸 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 教授 (50293965)
緒方 英彦 鳥取大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304203)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2024年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
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キーワード | 機能診断図 / 荷重‐変形量の関係 / 線形・非線形領域の分離 / 農業用水路 / 機能診断 / 非破壊試験 / 内面載荷法 / 荷重ー変形量の関係 / ひずみ / 土圧 / 変形特性 / 曲げひずみ / 軸ひずみ / 荷重と変形量 / 荷重ー変形量 / とう性管 / 不とう性管 / 埋設管 / 個別状態評価 / 剛性 |
研究開始時の研究の概要 |
地下埋設構造物である農業用パイプラインは、地域の営農形態を考慮して、様々な管種(コンクリート系、樹脂系、鉄鋼系)が用いられている。近年においては、この農業用パイプラインの離脱やひび割れによる漏水などの事故が増加しているが、適切な耐力評価手法が確立されていない。そこで、本研究では、供用中の埋設管(とう性管、不とう性管)に対して、管内から内面載荷装置で取得した荷重―変形量の関係を指標として、『材料特性』に応じた『地盤特性』と『劣化特性』を分離し、定量的に検診した上での対策の判定に直結させるための評価・判定基準を構築する。
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研究実績の概要 |
とう性管は、地盤の拘束による管体のたわみを考慮した設計を要する管であり、地盤の状態が管体の変形特性に大きな影響を与える。そのため、とう性管の機能診断を実施するためには、周辺地盤の状態を知ることが重要となる。そこで、本研究課題では、内面載荷法をとう性管の内面から適用し、周辺地盤の状態を間接的に評価できるかということを検証した。具体的には、締固め度と埋設深をそれぞれ設定した模型地盤内に、薄肉硬質塩化ビニル管(VU管)を埋設し、内面載荷法を鉛直載荷方向と水平載荷方向のそれぞれから適用し、荷重―変形量の関係の傾きと、管体に作用する土圧(鉛直土圧、水平土圧)の関連性について検討した。その結果、内面載荷法によって得られた荷重―変形量の関係の傾きと、土圧(水平土圧、鉛直土圧)は同じ比率で増加することがわかった。 一方で、不とう性管については、評価・判定基準の要因として管体剛性が支配的になることから、荷重―変形量の関係を適切に評価することが求められる。しかしながら、埋設環境にある不とう性管は、僅かではあるが地盤剛性の影響を受けることから、荷重―変形量の関係の傾きに線形領域と非線形領域が生じることを確認した。この領域によって管体そのものの診断結果が異なる可能性は低いが、不とう性管においても地盤の状態を評価できる可能性が考えられた。つまり、この領域に違いが生じる要因を特定することで、管体剛性と地盤剛性をそれぞれ分離できる可能性が考えられた。しかしながら、荷重―変形量の関係の傾きにおいて、線形領域と非線形領域の分類は目視によって行っている。そこで、統計的処理によって客観的に線形領域と非線形領域に分離可能かを検討した。その結果、内面載荷法により取得した荷重‐変形量の関係の傾きは、線形領域と非線形領域に分離できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
埋設されたとう性管に関しては、模型地盤内に埋設したVU管に対して、管厚および鉛直土圧の影響が、荷重―変形量の傾きおよび管体の変形挙動に及ぼす影響について評価した。その結果、管体の変形挙動は、管体剛性と地盤剛性が合わさった見かけの剛性によって定められることが明らかになった。さらに、地盤の状態によって生じる力学的挙動の相違を把握することを目的に、締固め度や埋設深といった地盤の条件が異なる埋設VU管の模型を作製し、内面載荷法を適用した際の鉛直荷重―水平変形量と載荷断面に生じるひずみについて整理及び考察を行った。地盤反力が大きい程、低荷重時に生じる水平変形が微小である領域が広くなり、装置が管を変形させる力が地盤反力による拘束力を卓越することで、荷重―変形量や荷重―曲げひずみは線形に収束し、微小変形の領域は地盤の剛性が高くなるにつれて、もしくは管の曲げ剛性が低くなるにつれて顕著に生じることを明らかにした。 埋設された不とう性管に関しては、昨年度の課題として挙げた荷重―変形量の関係の傾きにおいて線形領域と非線形領域を統計的に分離することを目的に、全国各地(福島県、新潟県、岐阜県、大分県など)の水路調査を実施した。埋設管で実証実験をすることが望ましいが、計測精度が高くかつ目視確認が可能な環境で、確実な成果を積み上げるためにコンクリート製の開水路を実証実験の評価対象とした。目視確認によって健全であると思われる水路を選定し、荷重‐変形量を計測した。この荷重‐変形量の関係の傾きにおいて、線形領域と非線形領域を分離するために、評価点までの実測値の近似直線を求め、近似直線上の推定値と実測値との誤差によって、2直線(線形領域と非線形領域の境界特定)に分離することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では地盤・劣化特性が異なる埋設されたとう性管と不とう性管の状態を複合的な手法の組み合わせによって評価・診断するのではなく、一つの評価手法で取得した定量データを用いて、管種に応じた地盤特性と劣化特性に分離し、定量的に検診した上での対策の判定に直結させるための評価・判定基準を構築することを目標としている。 とう性管の機能診断として、模型地盤内に埋設した健全VU管の荷重―変形量の関係について明らかにしてきた。また、内面載荷法の載荷を鉛直方向および水平方向にすることで、周辺地盤の締固め度の差異を評価できることを示した。しかし、これまでの研究では、基本性能を明らかにするため、全体が均一に締め固まった地盤を対象として評価を実施してきた。本年度は、実環境への適用に向けて、健全および劣化したVU管を用いて、不均一な地盤での評価を実施する予定である。 不とう性管の機能診断として、非埋設状態でのRC管の剛性について明らかにしてきた。本年度は健全管および劣化管を埋設した状態での機能診断図の作成に取り組む。そのためには、これまでに開水路で検討をしてきた荷重‐変形量の関係の傾きの線形領域と非線形領域を分離するための統計処理方法を埋設管に適用した際の整合性について明らかにする予定である。 本年度は最終年度であるため、最終的な成果の蓄積として、とう性管においては、地盤と管体の特性を分離したデータの整合性を検証することで、埋設VU管に対する機能診断図の一例を作成する。また不とう性管においては、荷重―変形量の関係の傾きを統計的に検証することで、埋設RC管に対する機能診断図の一例を作成する。これらを実施するためには、模型実験に加えて、実証実験などの多くの評価を引き続き実施する必要があるが、本プロジェクトの遂行にあたって研究協力企業との連携は十分に築かれており、実験資器材の改良なども順調に進んでいる。
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