研究課題/領域番号 |
23K23725
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補助金の研究課題番号 |
22H02460 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中村 真也 琉球大学, 農学部, 教授 (30336359)
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研究分担者 |
木村 匠 琉球大学, 農学部, 准教授 (10794498)
玉城 絵美 琉球大学, 工学部, 教授 (30515086)
宮本 英揮 佐賀大学, 農学部, 准教授 (10423584)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,810千円 (直接経費: 13,700千円、間接経費: 4,110千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 11,310千円 (直接経費: 8,700千円、間接経費: 2,610千円)
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キーワード | リアルタイム観測 / 地すべり / 極限状態 / せん断強度 / 熱帯土 / 島尻層群 / 島尻マージ / 赤黄色土 / 完全軟化強度 / 残留強度 / クチャ / 褐色火山灰土 / 草千里ヶ浜軽石 |
研究開始時の研究の概要 |
地すべり対策においては、地すべり土のせん断強さの把握と、地すべり斜面の極限状態の観測に基づく検討が重要である。しかし、熱帯土やこれに類する土砂が分布する地域には、極限状態における地中水の観測やすべり面のせん断強さの把握が十分になされておらず、地すべり土のせん断強さの特徴も分かっていない地域がある。本研究は、そのような地域の地すべりに関して、斜面の極限状態を捉えるために最適化した斜面観測ネットワークシステムの構築、極限状態の実観測に基づく地すべり発生/再発生に関与するせん断強さの解明、および熱帯土のせん断強さの特徴把握と推定モデルの構築を目指すものである。
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研究実績の概要 |
2023年度は、地すべり斜面においてリアルタイム観測装置を設置して本格運用の体制を整え、斜面の不撹乱状態土層の土質特性把握のための測定と、採取土再構成試料のリングせん断試験を主に実施した。研究成果の一部について,日本地すべり学会および農業農村工学会九州沖縄支部の研究発表会において公表した。 日本地すべり学会での発表においては,地すべり土のせん断摩擦係数に現れる有効垂直応力の影響について,鉱物学的性質を加味して考察した。各試料のせん断応力-有効垂直応力関係の近似曲線は,全体として低い有効垂直応力レベルのせん断摩擦係数が大きくなる曲線を示すが,湾曲化が小さいか,ほとんど認められない試料もあった。多くの試料において,有効垂直応力が200kPaから300kPa以上ではせん断摩擦係数は近い値となった。ある程度の大きさの有効垂直応力下からは,圧密による粘土鉱物の配向(圧密配向)が同じ様相となり,有効垂直応力の増加に伴うせん断抵抗力の増加は一定の割合で推移すると考えられた。せん断摩擦係数が大きい試料において高低有効垂直応力レベルでせん断摩擦係数の差が明瞭でなかったことは,粘土鉱物の含有量が少なく,有効垂直応力の増加に伴う圧密配向が進展しないことが原因と考えられ,この推測と矛盾しない。有効垂直応力200kPaから300kPa以上のせん断摩擦係数について,試料の配向性粘土鉱物総量に基づいて試料間で比較すると,同総量の増加に伴ってせん断摩擦係数は大きくなる傾向を示した。同総量は完全軟化強度の大小を決める要因のひとつとして強度発現に関わり,特に有効垂直応力レベルに応じて異なる完全軟化強度特性に密接に関与していると考えられた。 農業農村工学会九州沖縄支部での発表においては,沖縄島の掘削調整池で発生したすべりについて、ボーリングコアから採取した島尻マージ土様試料の土質強度特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、地すべり斜面においてリアルタイム観測装置を設置して本格運用の体制を整えるとともに、斜面の不撹乱状態土層の土質特性把握のための測定と、採取土再構成試料のリングせん断試験を主に実施した。 地すべり斜面のリアルタイム観測については、沖縄島中部の奥間地内地すべり(島尻層群与那原層)および南部の小谷地内地すべり(同新里層)において、土壌水分計、地下水位計、雨量計、データ送信装置、ソーラー電源等を設置した。それぞれの地すべり斜面において、上方部、中央部、下方部の3つに観測点を設け、各観測点において4深度に土壌水分計(TDR)を挿入した。また、両地すべり斜面の中央部において地下水位計を設置した。これらにより、斜面における土壌水分および地下水位等のデータが蓄積されている。降雨後の土壌水分や地下水位の応答に関して、島尻層群の与那原層と新里層とで違いがあるかどうかを明らかにすることができる。 斜面の不撹乱状態土層の土質特性把握は、山中式土壌硬度計、針貫入計および100ccサンプラによる三相測定によった。土壌水分計を挿入した各土層(4深度)を対象としてデータ測定およびサンプリングを行った。これらのうち、三相測定については次年度にかけて実施する。 また、沖縄島の真栄平地内および比屋根地内の地すべりから採取した土の再構成試料についてのリングせん断試験を継続し、完全軟化強度および残留強度の測定を進めている。真栄平試料(第四紀石灰岩上の土壌:島尻マージ)については、3つの垂直応力レベルでの完全軟化強度および残留強度の測定を終えた。さらに、西表島の上原地内で発生した地すべりの滑落崖付近から採取した撹乱土について試料調整を行い、各種物理試験、粘土鉱物分析およびせん断試験のための準備を行った。 2年の残期間を考えると全体計画は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
地すべり斜面のリアルタイム観測については、沖縄島中部の奥間地内地すべり(島尻層群与那原層)および南部の小谷地内地すべり(同新里層)において、土壌水分計、地下水位計、雨量計、データ送信装置、ソーラー電源等を設置した。それぞれの地すべり斜面において、上方部、中央部、下方部の3つに観測点を設け、各観測点において4深度(-10cm、-40cm、-70cm、-100cm)に土壌水分計(TDR)を挿入しており、これらを利用してリアルタイム観測を行う。 降雨、土壌水分、地下水位と地すべり変動との関係性の検討については、観測値の多重比較により統計分析する。共同研究者と共同で分析を行なっており、新たなデータを追加して同じ方法で分析を行う。分析作業にあたっては、月1回の定期的な打合せを行い、分析結果を効率よく整理する。 地すべり土試料の物理試験およびリングせん断試験の継続に加えて、トリプルコアパックボーリングで不攪乱試料を採取して三軸圧縮試験(圧密非排水、間隙水圧測定)を実施する。トリプルコアパックボーリングの実施は沖縄島北部地域を想定し、場所の選定を進める。リングせん断試験は,一段階載荷方式の定速せん断とし、4から5段階の垂直応力レベル下でせん断強度を測定する。熱帯土の入手が困難な状態にあるが、引き続きタイ、スリランカおよびオーストラリアの協力者に採取や送付を依頼する。粘土鉱物の測定は音波処理反復法とX線回折法による。粘土画分はMg飽和グリセロール処理定方位試料により、他画分は乱方位試料により各粘土鉱物の相対含量を計算する。
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