研究課題/領域番号 |
23K23726
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補助金の研究課題番号 |
22H02461 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41030:地域環境工学および農村計画学関連
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
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研究分担者 |
伊藤 優子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60353588)
高瀬 恵次 石川県立大学, 生物資源環境学部, 客員教授 (90133165)
長野 峻介 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (90646978)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2025年度: 3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 地下水 / 水循環 / トレーサー / 流出モデル / 数値シミュレーション / 扇状地 / 斜面崩壊 / 高濃度濁水 / 伏流量 / 水田 / ポット試験 / 地下水モデル |
研究開始時の研究の概要 |
豪雨による土砂災害が頻発している。石川県手取川では、上流での斜面崩壊によって高濃度濁水が2年以上継続し、扇状地の地下水位の異常低下が生じた。濁水によって水田土壌や河床間隙の目詰まりが生じて水田浸透量と河川伏流量が減少し、その結果として異常な地下水位の低下に繋がったと考えられた。そこで、水田・河川浸透量の変化の室内実験、浸透量の現地観測、地下水の安定同位体による起源推定、地下水モデルの数値解析によって、濁水とその他の要因(降水の多寡など)が地下水位の異常低下に寄与した割合を評価する。さらに、浸透量の変化を日単位で推定し、地下水位の異常低下がいつまで継続しどの様なプロセスで回復するのかを解明する。
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研究実績の概要 |
今年度は,濁水発生後における地下水位の変化の特徴について分析するとともに,河川からの伏流量の実測を行うことによって地下水位の回復過程を明らかにすることを試みた. 対象井戸は,石川県が水位観測を行っている7地点,国土交通省が観測を行っている3地点の計10地点とした.そして,濁水発生前の平均水位からの差を各年毎に求めることによって,濁水発生直後2015年からの経年変化を調べた.その結果,濁水発生(2015年5月)と同時期に,扇央部における地下水位が大きく低下していることが分かった.また,2016年の灌漑期には,2015年よりも広範囲にわたって地下水位が低下しており,地下水位が低下した状態が継続していた. 次に,河川水位と地下水位の関係を調べるために,14日後方移動平均をかけた河川水位と地下水位の関係について分析した.さらに,多地点における河川流量の一斉観測を行い,水収支計算より伏流量を算出した.また,国土交通省19回,および,石川県立大学6回,計25回分の一斉流量観測も整理して伏流量を求め,手取川流量と伏流量との関係について分析した.その結果,濁水前3年間については,河川水位が1m変化すると地下水位が約2m変化する関係であったのに対して,濁水後2015年については,河川水位が1m変化すると地下水位が約11m変化する関係に変わっていた.2018年からは濁水前の関係性に近づいたことから,河川水位と地下水位の関係が元の状態に戻ったと考えられた.さらに,手取川流量と伏流量の関係については,濁水前は手取川流量の約24%が伏流していたことが分かった.一方,濁水後は,2015年から手取川流量に占める伏流量の割合が低下し,2016年4月には約4%まで低下したことが分かった.そして,2017年から回復傾向に向かい,2018年には濁水前の状態にまで回復したことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一級河川・石川県手取川では,2015年5月に生じた上流域での大規模な斜面崩壊により高濃度濁水が長期間継続した.さらに,この濁水発生と同時期に扇状地の地下水位が急激に低下した.地下水の主要な涵養源である手取川からの伏流量と水田からの浸透量が,濁水後に減少したことによって地下水位が低下したとみられるが,地下水位低下の時間的および空間的な特徴についての詳しい分析は行われていなかった.また,減少した手取川からの伏流量が,いつから回復したかについては明らかになっていなかった. 今年度の研究によって,濁水発生後における地下水位の変化の特徴が明らかになるとともに,河川からの伏流量の回復過程も明らかにすることができたことから,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後については,以下の2課題を中心に取り組む予定にしている. 1.扇状地を水田,畑地,宅地,河川に分類し,3層(地表,中間帯,地下水帯)からなる準分布型の水循環モデルを構築する.モデルパラメータは,濁水発生前の実測地下水位と計算地下水位が合致するように,大域的探索法および多目的最適化手法によって同定する.この水循環モデルとデータ同化手法によって水田と河川浸透量を日単位で推定し,高濃度濁水の寄与率,および,地下水がいつ・どのように回復するのかといった回復過程を明らかにする. 2.高濃度濁水が扇状地の地下水環境に与えたインパクトの大きさを評価するために,気候モデルからの将来予測データを用いる.気象庁気象研究所の気候モデルMRI-AGCM3.2Sで算出された150年連続気候実験データを用い,1.の水循環モデルを駆動して地下水環境をシミュレーションし,濁水による地下水低下量と比較して評価する。
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