研究課題/領域番号 |
23K23740
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補助金の研究課題番号 |
22H02475 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
山本 昭範 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20733083)
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研究分担者 |
常田 岳志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 上級研究員 (20585856)
内田 義崇 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (70705251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 一酸化二窒素 / 有機物資材 / 削減策 / 物理化学性 / 農業 / 土壌微生物 / 農耕地 / 機能遺伝子 |
研究開始時の研究の概要 |
農耕地への有機物施用は作物生産を支える土壌機能の維持に不可欠であるが、土壌中の微生物の働きにより強力な温室効果ガス「一酸化二窒素(N2O)」の排出量増加の原因にもなっている。一方で、有機物資材の物理化学性の活用や調整によって施用後のN2O排出の削減が見込めることが分かってきた。そこで本研究は「なぜ施用有機物の化学性や物理性によってN2O排出量が異なるのか」という問に対し、施用有機物の窒素フローと微生物の代謝活動の観点から答えを追究し、有機物施用後の低N2O排出を達成する有機物資材の物理化学性の特徴と鍵になる微生物経路を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、化学性の要因としてpHと堆肥種類、物理性の要因として成型方法に着目して、異なる性質を同時調整した堆肥混合肥料を作成し、有機物資材の性質調整の組み合わせが一酸化二窒素(N2O)発生に与える影響を検証した。その結果、施用後のN2O発生量は組み合わせる性質で異なり、酸性と中性の条件では成型方法による影響が見られたが、アルカリ性条件では成型方法の影響は見られなかった。また、堆肥種類と成型方法を同時調整した場合、堆肥の種類間で成型方法によるN2O発生の変化傾向に差は見られなかったが、N2O発生の変化の程度は堆肥の種類間で異なった。このことから、N2O発生に与える影響は成型方法による物理性の調整よりも堆肥種類による化学性の調整の方が大きいことが示唆された。次に、有機物資材のサイズの影響を明らかにするため、有機物資材の粒度を変えた堆肥混合肥料を異なるpH条件で作成して実験に供した。施用後のN2O発生量は粒度の低下によって減少する傾向を示した。粒度調整によるN2O発生の減少傾向はpH条件によっても異なり、酸性と中性条件に比べてアルカリ性条件で減少の程度が大きかった。つまり、組み合わせる性質の内容によっては、性質間の関係性によりN2O発生削減作用が変化する可能性がある。さらに、微生物の多様性を数段階に調整した土壌を用いて、堆肥混合肥料施用時の土壌微生物の状態と堆肥混合肥料pHの関係を検証した。その結果、土壌微生物量は、堆肥混合肥料施用後のN2O発生量と堆肥混合肥料pHの関係を変化させることが分かった。また、pH条件によってN2O発生に差が生じた期間では、nosZ存在量も堆肥混合肥料pHで異なった。このことから、堆肥混合肥料pHによるN2O発生の変化はN2O還元の差が要因の一つであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、有機物資材の個別の物理化学性とN2O発生の関係に加えて、有機物資材の性質の組合せがN2O発生に与える影響、また、土壌微生物の多様性と性質調整によるN2O発生の変化傾向の関係を明らかにすることを目的として研究を進めた。その結果、成型方法による物理性の調整がN2O発生に与える影響がpH条件による化学性の調整によって異なるなど、物理化学性の調整がN2O発生に与える影響やその程度は性質の組合せによって変化することを明らかにした。また、前年度の研究で確立した実験系を用いて、有機物資材のpH調整によってN2O発生が異なるメカニズムを土壌微生物の多様性に着目して調べた。この実験により、土壌微生物の量や多様性が高いときには、施肥後初期のN2O発生と堆肥混合肥料pHに関係が見られ、pH条件によるN2O発生の差にはN2O還元が重要な経路として関与していると考えられた。以上から、本年度の目的を達成し順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに得られた成果に基づき、施用後のN2O発生の減少が見込まれた有機物資材の物理化学性を反映した堆肥混合肥料を作成して圃場試験を行い、野外環境における有機物資材の物理化学性の調整によるN2O発生削減効果を調べる。また、化学性の要因として有機物資材の無機化率を調整する堆肥混合肥料を作成してN2O発生や微生物作用との関係を検証し、有機物施用後のN2O発生削減に効果的な性質を探索する。
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