研究課題/領域番号 |
23K23746
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補助金の研究課題番号 |
22H02481 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分41050:環境農学関連
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
遠藤 博寿 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60396306)
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研究分担者 |
鈴木 石根 筑波大学, 生命環境系, 教授 (10290909)
新家 弘也 関東学院大学, 理工学部, 講師 (30596169)
町田 峻太郎 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (40827490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 9,360千円 (直接経費: 7,200千円、間接経費: 2,160千円)
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キーワード | カーボンニュートラル / エピジェネティクス / バイオ燃料 / 海洋微細藻類 / ハプト藻 / 円石藻 / CCUS / ゲノム編集 |
研究開始時の研究の概要 |
脱炭素社会の実現への一助として、近年藻類を用いたバイオ燃料生産への関心が高まっている。特に、遺伝子組換え等の技術により、脂質の合成能を強化し、油脂を多く合成して蓄積する変異体の作出に関する研究が盛んに行われている。しかしながら、これらの既存の遺伝子操作技術で作出された変異体は、多くの場合実験施設外へ持ち出すことができない。そのため、現行の法規制の下では、屋外で培養を行い、大量に燃料を生産することは不可能である。そこで、本研究では藻類を用いたバイオ燃料の実用化に向け、遺伝子組換え等の技術に依存しない方法で細胞内脂質の蓄積量を大幅に増加させた変異体を取得することを目的とする。
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研究実績の概要 |
近年、藻類を用いたバイオ燃料生産への関心が高まる中、遺伝子組換えによる代謝改変株の作出が盛んに行われている。しかしながら、既存の遺伝子操作技術で作出された変異体は、実験施設外へ持ち出すことができないため、現行の法規制の下では、屋外で培養を行い、大量に燃料を生産することは困難である。そこで、本研究では我々が新たに開発した遺伝子発現抑制技術(以LOGS法)を用いて、海洋微細藻類(ハプト藻)の脂質合成能を強化し、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とした。 LOGS法は、特定の遺伝子の発現を長期間制御する方法であるが、さらに改善・改良を加える必要がある。そこで、昨年度はまず実験項目(1)「LOGS法の作用機序の解明」として、オフターゲットについて解析を行った。以前我々は円石藻のFCP遺伝子の発現制御に成功している。そこで、野生株を対象実験として、当該変異株についてNGSによる網羅的な発現解析を行い、調べられた範囲では、有意なオフターゲットは検出されないことを確認した。また、項目(2)「LOGS法を用いた脂質合成能強化株の作出」として、脂質分解酵素(Lipase)をコードする遺伝子について、LOGS法を用いた発現抑制株の作出を行った。 これらの結果を受け、本年度は項目(2)としてLipase発現抑制株のより詳細な解析を行い、複数の変異株において貯蔵脂質の増加を確認した。しかしながら、当該変異株は野生株と比較して成長速度が遅いという問題があり、この点は今後の課題であることが明らかになった。また、本年度は新たに開始した実験項目(3)「大量培養実験」を開始し、野生株を用いた100 Lスケールでの試験的大量培養を行った。現在、藻類培養中の培養液中の生元素の動態(N, P, Feなどの濃度変化)の解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は我々が新たに開発した遺伝子発現抑制技術(以下LOGS法)を用いて、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とする。昨年度は主にLOGS法のオフターゲットと同技術の汎用性についての解析、および脂質分解抑制株の作出を行った。本年度は、これらの研究をさらに進め、脂質分解抑制株の解析と100 Lスケールでの野生株の大量培養実験を行った。以下に記述する理由から、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。 特定の遺伝子を操作する技術を確立する上では、i) オフターゲットの有無の精査と、ii) 標的とする遺伝子の汎用性は非常に重要である。この観点において、昨年度のFCP発現抑制株のNGS解析から得られた結果は、LOGS法におけるオフターゲットの発生率が著しく低いことを強く示唆するものであり、新たな遺伝子制御技術の確立に向けて大きく前進したといえる。また、本年度の研究結果から、当該技術は、FCP以外の遺伝子(ここではLipaseをターゲットとした)においても長期間にわたる発現抑制、および貯蔵脂質の増加という形質としての変化も検出され、一定の汎用性が担保されたことが確認された。これらの結果は新規の技術の開発の観点からも大いに評価できるといえる。 バイオ燃料の社会実装を考えた場合、微細藻類の大量培養系の確立が必須となる。そこで、本年度は100 Lスケールのレースウェイ型大型培養槽を導入し、円石藻野生株を用いて試験的な培養実験を行った。培養槽は人工海水ベースの培養液を回転式のペダルで攪拌する仕様のものであり、温室内で大量培養を試みた。その結果、少なくとも12週間は栄養塩の添加などをする必要なく順調に野生株は増殖し、プラトーまで達することが確認され、円石藻の大量培養系を確立することができた。 以上の結果より、本研究の進捗状況の評価を(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、新規な遺伝子発現抑制技術(以下LOGS法)を用いて、ハプト藻の脂質合成能を強化し、バイオ燃料生産の実用化に資する変異株を作出することを目的とするLOGS法は、ゲノム内の狙った領域にのみメチル化を誘導し、標的遺伝子の発現を恒常的に抑制する方法であるが、開発されて間もない技術である。そのため、本研究では同手法を用いた有用株の作出と同時進行で、手法自体に改善・改良を加える余地が残されている。 そこで、一昨年度は、実験項目(1)「LOGS法の作用機序の解明」および項目(2)「LOGS法を用いた脂質合成能強化株の作出」の一部を行い、(1)についてはRNA-Seqを用いてオフターゲットを確認し、また、項目(2)についてはLipaseの発現抑制株の作出を行った。また、昨年度は項目(2)としてLipase発現抑制株の作出と解析を行い、変異株内における貯蔵脂質の増加を確認した。また、この年から新たに開始した実験項目(3)「大量培養実験」として、野生株を用いた100 Lスケールでの試験的大量培養を行った。 これらの結果を踏まえ、来年度はそれぞれの実験項目について、以下の計画に沿って研究を遂行する予定である。これまでの研究結果から実験項目(1)の作用機序の解明についてはほぼ目標としていた研究結果が得られている。そこで、まず実験項目(2)について、以前取得したFCP発現抑制株に対して、さらにLOGS法を適用し、FCPおよびLipaseの二重発現抑制株を作出する予定である。また、項目(3)「大量培養実験」においては、これまでに作出した変異株を実験に供し、培養期間内における培養液組成(窒素、リン、カルシウムなどの栄養塩や溶存二酸化炭素の値など)の変化を測定し、当該変異株の特質をさらに深く追究する予定である。
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