研究課題/領域番号 |
23K23772
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補助金の研究課題番号 |
22H02507 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
堀内 基広 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (30219216)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2022年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | プリオン病 / ミクログリア / アストロサイト / 難治性神経変性疾患 |
研究開始時の研究の概要 |
グリア細胞の活性化状態 (極性) を人為的に制御できれば、プリオン病の病態進行を遅延させることが可能と考えられる。そこで、本研究では、プリオン感染マウスにおける、ミクログリアおよびアストロサイトを神経保護的に極性転換させる因子および方法の同定を進め、グリア細胞の極性転換を応用した難治性神経変性疾患の病態進行制御法の開発にむけた科学的知見を蓄積することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、緻密骨由来間葉系幹細胞 (CB-MSCs) がアストロサイト (AS) およびミクログリア (MG) の極性転換に関与する因子の同定、および、極性が転換したグリア細胞の神経保護・傷害機能の解析を行い、グリア細胞の極性転換法を、プリオン病を含む難治性神経変性疾患の病態進行を制御する方法の開発へ応用することを目的とする。 本年は、ASにプリオンが感染・増殖した場合に、神経細胞傷害性のA1型に極性がシフトするか、および、小胞体ストレス応答が増大するかを詳細に検討した。初代ASにプリオンを添加して、プリオンの感染効率、細胞内局在、および増殖を調べたところ、PrPScが細胞膜上に繊維状に存在する初代神経細胞と異なり、ASでは、核周囲に顆粒状にPrPScが存在した。このPrPScはN末端側のプロセッシングを受けていること、および、Neuro2a神経芽細胞におけるPrPScの細胞内局在と同様の局在を示すことから、主に、細胞内膜輸送経路上に存在すると考えられた。50-70%程度のASが、核周囲の明瞭なPrPSc陽性像を示すにもかかわらず、A1型への極性のシフト、および小胞体ストレス応答の増加を示す結果は得られなかった。ASにけるPrPScのの蓄積が経時的に著しく増加する傾向は認められず、約3週間の培養で、2倍弱の増加であったことからも、PrPScの増殖単独では、ASに大きな極性変化をもたらさないと結論した。現在、プリオン感染ミクログリアで、プリオン感染/非感染ASを刺激して、感染/非感染によるASの応答を解析中である。 CB-MSCs のMGの極性転換に関与する可能性のある分子として、プリオン感染局所(組織)とプリオン感染MGのRNA sequenceの結果から、EGF1を見いだしたが、抗EGF1抗体はMGの極性転換を阻害しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初代培養のCB-MSCsを用いる実験系のため、CB-MSCsが均一でなく、ロットによるばらつきにより、結果が安定しないことが理由の一つである。また、MGおよびASも初代培養細胞を用いていることも、研究を難しくしている要素であるが、これらを株化細胞に置き換えると、生体で生じる現象を再現できなくなることから、実験回数を重ね、各回でのバラツキを平均化する必要がある。一方で、活性化MGおよびASによる神経傷害の検出には、当研究室が独自に見いだしたストレス誘導性転写調節因子ATF3が、神経細胞死が生じる視床由来の初代神経細胞に酸化ストレスを与えた場合に、発現が誘導されることを確認していること、また、プリオン病患者の脳組織でも、病変が重度な領域にATF3の発現が認められたことから、ATF3がプリオン病における神経細胞のストレス応答のマーカーとして使用できることが確認できた。また、ATF3が発現調節する分子と考えられるChac1がATF3陽性神経細胞で発現することを確認した。MGあるいはASと神経細胞の混合培養系において、ATF3とChac1が神経変性のex vivo解析系における決定的なマーカー分子となることから、R6年度は混合培養系における神経細胞傷害の解析がが進むと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
研究の進め方は間違っておらず、結果は得られつつあるので、計画に沿って研究を継続する。質量分析によりCB-MSCs培養上清のプロテオーム解析の結果と、これまでに実施したMGのRNA Sequenceの結果から、培養上清中に存在する液性因子の中で、MGの活性化状態をシフトさせる候補を見つけ出す。 本研究では、ex vivoの実験系で、M1/M2型のMGおよびA1/A2型のASの神経傷害/保護活性を解析予定であったが、本年度、プリオン感染単独ではASの極性変化は起こらないことが結論できたので、次年度はMGのAS極性変化への影響を焦点を当てて解析する。 プリオン感染により生じる神経変性を、ex vivo実験系で鋭敏に解析可能な分子マーカーがないことが、研究が進展しない要素の一つであったが、これまでの当研究室の研究から、プリオン感染マウスでPrPScの蓄積が著しい視床で、vGlut1あるいはvGlut2陽性の興奮性神経細胞が消失するが、GABA陽性の抑制性神経細胞は消失しないことを確認している。これを模倣した実験系として、視床由来の初代神経培養細胞にプリオンが効率良く感染すること、また、神経細胞の異常を検知するマーカー分子として、ストレス誘導性転写調節因子ATF3となることChac1が同定できていることから、これら分子をMGあるいはASの神経傷害のマーカーとして使用することで、研究が大きく進展すると思われる。
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