研究課題/領域番号 |
23K23782
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補助金の研究課題番号 |
22H02517 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
永岡 謙太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60376564)
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研究分担者 |
大森 啓太郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20466915)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)
2024年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
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キーワード | 炎症性腸炎 / アミノ酸代謝 |
研究開始時の研究の概要 |
炎症性腸疾患は、医学・獣医学両方において原因不明の腸管免疫系異常を呈した疾患であり、その複雑な病態の解明と新たな治療法の開発が求められている。本研究では、哺乳類におけるL型アミノ酸酸化反応の責任酵素遺伝子であるLAO1とIL4I1および両遺伝子欠損マウスをDSSやTNBS腸炎モデルに供し、各種生化学的、生理学的、免疫学的およびオミクスデータを包括的に取得することで、炎症性腸疾患の新たな病態メカニズムの解明を目的とする。また、伴侶動物(特にイヌ)の炎症性腸疾患サンプルについても、L型アミノ酸酸化経路に関する遺伝子解析などを実施することで、獣医学領域に応用可能な基礎データの収集に努める。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、哺乳類におけるL型アミノ酸酸化反応の責任酵素遺伝子であるLAO1とIL4I1および両遺伝子欠損マウスをDSSやTNBS腸炎モデルに供し、各種生化学的、生理学的、免疫学的およびオミクスデータを包括的に取得することで、炎症性腸疾患の新たな病態メカニズム解明の一助とすることである。令和4年度の研究成果として以下に概要を示す。 「LAAO欠損による腸内免疫アミノ酸代謝変容の全体像把握」 ①腸内アミノ酸代謝物解析 野生型、LAO1欠損、IL4I1欠損、両遺伝子欠損マウスの盲腸便を用いてメタボローム解析を行なった結果、各ジェノタイプで代謝物組成が異なることが示された。特にLAO1欠損と両遺伝子欠損によりトリプトファン代謝物のキヌレイン濃度の低下が認められた。また、両遺伝子欠損によりイノシン濃度の低下が認められた。さらに、血中の代謝物解析を行なった結果、IL4I1欠損と両遺伝子欠損によりトリプトファン代謝物の一つであるインドール酢酸濃度の低下が認められた。 ②腸内遺伝子発現解析 野生型、LAO1欠損、IL4I1欠損、両遺伝子欠損マウスの回腸および結腸組織よりRNAを抽出し、ClariomSチップによるマイクロアレイ解析に供した。その結果、IL4I1欠損の回腸においてATF3の発現低下や両遺伝子欠損の回腸におけるARNTL (BMAL1)発現低下が認められた。一方で結腸組織においては、両遺伝子欠損でTAP1やIRF1遺伝子に加え、IDO1遺伝子の発現上昇が観察された。IDO1はトリプトファンからキヌレイン代謝酵素であり、両遺伝子欠損マウスにおける上記の盲腸便中キヌレイン濃度の低下との関連性が興味深い。 以上の結果から、L型アミノ酸酸化反応の責任酵素遺伝子であるLAO1とIL4I1は腸内におけるトリプトファン代謝に深く関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ感染症やウクライナ情勢により、試薬などの消耗品納期が遅れることがしばしばあった。特に、当研究室で実施するGCMSによるメタボローム解析に必要なヘリウムガス不足には苦慮した。しかし、納入ヘリウムのグレードを下げて在庫を確保し、一方で機器のガスフィルターを定期的に交換することで、これまでの解析と同程度の精度が得られた。 本研究課題の3本柱の一つである「LAAO欠損による腸内免疫アミノ酸代謝変容の全体像把握」については順調に進んでおり、腸内代謝物および血中代謝物変化と腸組織遺伝子発現変化との関連性、すなわち糞中メタボロミクス、血中メタボロミクスと腸組織トランスクリプトーム階層のオミクスデータ解析を行なっている。これにマイクロバイオームと腸組織メタボロミクスデータが次年度に加わることで、腸内免疫アミノ酸代謝変容の全体像把握が完遂する。 2本目の柱「腸内免疫アミノ酸代謝変容とIBD増悪の関係解明」においては、令和5年度から開始する予定であるが、既に前実験を開始しており、DSS処置による腸炎発症に両遺伝子欠損マウスは惰弱性を示す結果が得られている。 3本目の柱「イヌにおける腸内LAAO発現およびアミノ酸代謝解析」については、難治性の慢性腸症と診断された個体20例以上の治療前後の糞便や一部治療前の腸組織や血液の収集が済んでいる。これは予定を上回る症例数であり、本学動物病院だけでなく、外部の大型総合病院との連携に寄与するところが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、粛々と研究計画に従って進めていく。ヘリウムガスについては既に半年分の在庫を確保しており、「LAAO欠損による腸内免疫アミノ酸代謝変容の全体像把握」において令和5年度実施予定の腸組織メタボロームの遂行に何ら問題はない。マイクロバイオーム解析についても既に前処理が済みNGS解析に移行する段階であり、結果は予定通り得られると考えられる。「腸内免疫アミノ酸代謝変容とIBD増悪の関係解明」は令和5年度から開始であるが、潰瘍性大腸炎のモデルであるDSS処置については既に開始している。クローン病のモデルとされるTNBS処置についても過去の報告を元に実施可能である。「イヌにおける腸内LAAO発現およびアミノ酸代謝解析」については、令和5年度もサンプル集中に努めるが、他の病院との連携により最終的に50検体の確保は可能と考える。 以上、令和5年度も計画通り順調に進むことが期待できる。
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