研究課題/領域番号 |
23K23788
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補助金の研究課題番号 |
22H02523 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
内藤 清惟 鹿児島大学, 農水産獣医学域獣医学系, 准教授 (30794903)
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研究分担者 |
伊藤 直人 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (20334922)
志水 泰武 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (40243802)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
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キーワード | 排便中枢 / 排便 / 透明化 / 中枢神経 / 組織透明化 / 狂犬病 / 脳 / 脊髄 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ストレスによる排便障害が大きな問題となっているが、その病態は明らかになっていない。これは、中枢神経系がどのように排便を制御しているのか、に関する情報が不足していることが理由の一つになっている。そこで本研究では、狂犬病ウイルスと組織透明化という新規手法を用いて、排便に関わる全ての脳領域をスクリーニングし、中枢神経による排便制御システムを明らかにすることを目的とする。 本研究により、この分野の研究を飛躍的に進展させることを目指し、ストレスによる排便障害の病態の解明、新たな治療法・予防法の開発に貢献する。
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研究実績の概要 |
近年、ストレスによる排便障害が大きな問題となっているが、その病態は明らかになっていない。これは、中枢神経系がどのように排便を制御しているのか、に関する情報が不足していることが理由の一つになっている。そこで本研究では、狂犬病ウイルスと組織透明化という新規手法を用いて、排便に関わる全ての脳領域をスクリーニングし、中枢神経による排便制御システムを明らかにすることを目的とする。本研究により、この分野の研究を飛躍的に進展させることを目指し、ストレスによる排便障害の病態の解明、新たな治療法・予防法の開発に貢献する。 消化管の運動は大腸に存在する内在神経系と、脳と脊髄からなる中枢神経系によって制御されている。これまでの研究では、消化管にしか存在しない特殊な神経系である内在神経系に注目が集まっていて、中枢神経系に着目した研究は少なかった。これまでに私たちは、中枢神経系に着目した排便制御の研究を行い、その機能の一部を明らかにしてきた。本研究では中枢神経系による排便制御の解明を目指し、近年発達してきた組織透明化と狂犬病ウイルスを用いたトレーサー実験によって、排便制御に関わる脳領域の特定する。 これまでの研究から、脳のノルアドレナリン作動性神経、ドパミン作動性神経、セロトニン作動性神経が中枢神経による排便制御に重要な役割を果たすことが明らかとなっている。本研究では、これらの神経を含む脳領域およびこれまで明らかになっていない脳領域に関して、排便に関わる脳領域の特定を行う。本年度は、この研究の基盤となる狂犬病ウイルスと組織透明化を用いたトレーサー実験を実施する予定であった。 本年度は、レポーター遺伝子を組み込んだ狂犬病ウイルスを作出し、これを末梢に投与することで脳の標識が可能であることを組織透明化を用いて確認した。また、解析のための新規顕微鏡システムの構築を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、本年度はこの研究の基盤となる狂犬病ウイルスと組織透明化を用いたトレーサー実験を実施することとしていた。レポーターとなる蛍光タンパク質のEGFPまたはmCherryを感染した細胞で発現させる狂犬病ウイルスを作製した。さらに、このウイルスをマウスの末梢組織に投与し、経時的に脳を採取した。この脳を透明化することで、全脳領域についてレポータータンパク質の発現を検討した。これによって、末梢に投与したレポーター狂犬病ウイルスによって、脳において蛍光タンパク質が発現しており、末梢から中枢までのトレーシングが可能であることを確認することができた。しかしながら、全脳領域についてデータとして記録、解析するためには、既存の蛍光顕微鏡または共焦点顕微鏡では非常に長い時間の撮影が必要となるため、サンプルへのダメージが問題になる点や、実験速度をあげることが難しいなどの問題点も洗い出された。そこで、先端バイオイメージング支援プラットフォーム(ABiS)の支援を受け、新規顕微鏡システムを構築した。これにより、数-十数時間かかっていたデータの取得を、数分で実施することが可能となった。次年度以降に行う全脳領域の検索について、実際のデータとして記録、解析を実施する環境を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に確立したレポーター狂犬病ウイルスを大腸に投与し、組織透明化と新規顕微鏡システムを用いて大腸運動制御に関わる脳領域の特定を行う予定である。また、狂犬病ウイルスベクターの投与後の適切なサンプル採取時間の検討も行う予定である。麻酔した動物の腹腔を切開し、消化管壁内にレポーター狂犬病ウイルスを投与する。投与後、経時的に脳を採取し、透明化した後に観察し、レポーター蛍光タンパク質が発現する領域について全脳領域を検索する。 レポーター狂犬病ウイルスが発現する蛍光タンパク質のEGFPやmCherryでは、蛍光強度が低く、透明化サンプルにおける観察が難しい可能性が考えられる。これについては、最近開発、報告されている、蛍光強度が高い新規蛍光タンパク質を発現するレポーター狂犬病ウイルスの作製を行う予定である。 レポーター狂犬病ウイルスによって、レポーター蛍光タンパク質を発現している神経の性質を解析するために、透明化した組織を免疫染色する必要があり、現在条件検討を進めている。しかし、免疫染色によって検出できない標的も存在するため、解析が難航する可能性がある。そこで、組織透明化と免疫染色の組み合わせだけでなく、これらとin situ hybridizationを組み合わせることで、mRNAの検出も可能とする実験系の構築を試みる予定である。
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