研究課題/領域番号 |
23K23795
|
補助金の研究課題番号 |
22H02530 (2022-2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分42030:動物生命科学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大串 雅俊 京都大学, 医生物学研究所, 准教授 (00462664)
|
研究分担者 |
築山 智之 滋賀医科大学, 動物生命科学研究センター, 特任准教授 (60612132)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,420千円 (直接経費: 13,400千円、間接経費: 4,020千円)
2024年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2023年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | ヒトES細胞 / 胚体外組織 / 羊膜外胚葉 / 栄養外胚葉 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、胚性幹細胞(ES細胞)を用いた試験管内分化誘導系を切り口として、霊長類に特徴的な羊膜外胚葉の発生機序と細胞特性の解明、そして新規胎児形成モデルの創出に取り組む。羊膜外胚葉は単なる羊膜前駆体ではないという前提に立ち、これまでの研究で得た候補分子群を起点として、胚体外組織を含めた霊長類胎児原基成立プロセスの全体像描画に挑む。霊長類ならではの発生現象の解明を通じてヒトの体作りの本質的理解を深めるとともに、生殖補助医療技術の精度向上、不妊や早期流産、胎児生育不全などの対症戦略へ新たな道を拓く。
|
研究実績の概要 |
本研究ではES細胞分化系を切り口に、霊長類特異的な羊膜外胚葉の発生機序とその細胞特性への理解を深めることを目的として行うものである。前年度には、羊膜外胚葉分化のマスター転写因子の候補として転写因子ELF3を同定しており、ELF3による羊膜外胚葉運命決定の分子機構の解析を進めてきた。本年度は、ChIPシーケンス解析によりELF3が結合するゲノム領域をゲノムワイドに探索し、種々のヒストン修飾抗体(ヒストンH3K4me3、H3K27me3、H3K27ac抗体)、ELF3との協調作用が報告されている転写制御因子であるアセチルトランスフェラーゼp300及びMediator複合体構成因子であるMED1を用いたChIPシークエンス結果と統合することで、ELF3結合領域近傍のエピゲノム変動と転写活性化の関連を調べた。さらに、ATACシークエンス解析を実施し、ELF3結合とクロマチンのアクセシビリティーとの関連を検討した。これらの解析により、ELF3がGATA3やVGLL1などのextraembryonic genesのシス制御領域に結合しクロマチン構造をオープン化、汎用的な転写制御因子(p300やMED複合体)をリクルートして標的遺伝子の転写を活性化していることを示した。また、より詳細な解析のためにBMP4遺伝子を選び、エンハンサーと考えられるシス領域の機能解析に取り組んでいる。加えて、ELF3遺伝子を破壊したES細胞株を作成して解析したところ、ELF3が羊膜外胚葉及びより発生が進んだ羊膜様細胞への分化に必須であること示した。公表されている着床ヒト胚のトランスクリプトームデータを照らし合わせることで、ELF3はエピブラストの一部及び羊膜外胚葉に発現していることもわかり、このことは実際のヒト胚においてもELF3がエピブラストから羊膜外胚葉への分化に関わっている可能性を示唆するものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたオミックス解析を一通り実施し、ELF3を基点とした細胞状態の書き換えのプロセスの概要を明らかとすることができた。また、ノックアウト解析の結果からも、ELF3が羊膜外胚葉分化のマスター因子であることを主張するのに十分な結果を得ることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続きヒトES細胞を用いた分化誘導系に軸を置いた解析を進める。ゲノムワイドでのエピゲノム動態を捉えることはできているので、今後は具体例としてBMP4遺伝子座の制御に焦点を当ててより高い解像度レベルでの解析を実施し、ELF3、エピゲノム動態、標的遺伝子の転写活性化までの一連の流れを明らかとしたい。当初の予定では、サル胚を用いた解析を並行して進めることを考えていたが、関連する研究が他グループで進められている現状を鑑み、ここまでのES細胞での実験結果を中心とした成果の論文化を急ぐこととする。
|