研究課題/領域番号 |
23K23811
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補助金の研究課題番号 |
22H02547 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 (2023-2024) 慶應義塾大学 (2022) |
研究代表者 |
岩崎 由香 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, チームリーダー (80612647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2022年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
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キーワード | 核内構造 / 非コードRNA / トランスポゾン / ヘテロクロマチン / 発生不全 / エピゲノム制御 / 不妊 / ゲノム構造 / 転写制御 / 小分子RNA |
研究開始時の研究の概要 |
PIWIタンパク質と小分子非コードRNAであるpiRNAの複合体は、ゲノムの安定性維持と遺伝情報の伝達に極めて重要な役割を果たす。PIWI-piRNA複合体は生殖組織特異的に機能しトランスポゾンの発現を選択的に抑制する他、PIWI遺伝子欠損個体は哺乳類を含む幅広い生物種において不妊の表現型を示す。PIWI遺伝子の欠損は長期的には確かにトランスポゾンの転移の蓄積によるゲノムの不安定化を引き起こすと考えられるものの、ではなぜ、短期的にも培養細胞の死滅や不妊という重大な表現型をもたらすのか?本研究では、PIWI欠失個体においてエピゲノム状態の異常が不妊に繋がるメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では、トランスポゾンの脱抑制に伴い引き起こされる不妊の表現型を統一的に説明するメカニズムの解明を目指している。本年度は、とくに哺乳類における不妊の表現型に着目し、哺乳類のトランスポゾン抑制機構を解析するための実験系の構築およびそれを用いた解析に尽力した。昨年度から、非生殖組織由来の培養細胞を用いて、人工的にPIWI-piRNA転写制御マシナリーをレポーター上にリクルートすることで抑制を再構成する実験系を構築している。この実験系を用いることで、トランスポゾン上に構築されるヘテロクロマチン構造の詳細を理解し、ゲノムワイドな解析と併せてトランスポゾンが引き起こすゲノム上の変化の何が不妊の表現型を引き起こすかを明らかにしていきたい。本年度は、構築したレポーター系を用いて哺乳類piRNAによる転写抑制の鍵因子として数年前に報告されたSPOCD1を強制的にリクルートした。その結果、レポーター上にpiRNAによる制御を模倣したかたちで転写が抑制されることを観察できた。これを受けて、転写制御時に起こる遺伝子発現制御を精査したところ、既報のようにDNAメチル化を伴う制御ではないことが明らかとなった。DNAメチル化を伴わないどのような制御が起こっているかを明らかにするために、リクルートした構造体と協調して働く因子の同定を試みた結果、新規候補因子を複数同定した。これらについて、相互作用の有無やテザリングを行った際の転写抑制能を確認することで、実際にDNAメチル化非依存的な転写制御を引き起こす有力候補因子を絞り込むことに成功した。今後は候補因子のノックアウトマウスを用いた個体解析により、不妊の表現型への寄与を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究代表者の独立に伴い、所属機関の異動と研究室の立ち上げを行ったため、予定よりも研究の進捗がやや遅れた。昨年度から構築している、非生殖組織由来の培養細胞を用いて、人工的にPIWI-piRNA転写制御マシナリーをレポーターにリクルートする実験系を用いた解析をすすめた。哺乳類piRNAによる転写抑制の鍵因子として数年前に報告されたSPOCD1を強制的にレポーター上にリクルートした結果、レポーター上にpiRNAによる制御を模倣したかたちで転写が抑制されることを観察できた。これを受けて、転写制御時に起こる遺伝子発現制御を精査したところ、既報のようにDNAメチル化を伴う制御ではないことが明らかとなった。また、SPOCD1のとくにIDR領域と相互作用する因子が転写制御を引き起こしていることを明らかにした。これらを受けて、とくにSPOCD1のIDR領域との相互作用因子をプロテオーム解析により同定した結果、新規候補因子を複数同定した。これらについて、SPOCD1との相互作用の有無やテザリングを行った際の転写抑制能を確認することで、実際にDNAメチル化非依存的な転写制御を引き起こす有力候補因子を絞り込むことに成功した。また、候補因子について非生殖組織由来の細胞を用いた解析を行った結果、この因子が非生殖組織でもトランスポゾンを抑制している可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の解析から得られた有力候補因子について、マウス個体を用いた解析を行う。前述のとおり、レポーター上にpiRNA経路におけるトランスポゾン転写抑制中核因子であるSPOCD1をリクルートすることで、piRNAによる制御を模倣したかたちで転写が抑制されることを観察できている。このSPOCD1と相互作用し、転写抑制を引き起こす新規因子について、ノックアウトマウスを用いた解析を行う。具体的には、トランスポゾンの脱抑制や不妊の表現型への寄与を解析すると同時に、DNAメチル化への寄与やエピゲノム解析を用いたゲノムワイドな影響を明らかにする。また、この候補因子については非生殖組織由来の細胞でもトランスポゾン抑制能が観察されることから、培養細胞系を併用することで、詳細な機能解析をすすめる。
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