研究課題/領域番号 |
23K23812
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補助金の研究課題番号 |
22H02548 (2022-2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2022-2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分43010:分子生物学関連
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
櫻井 雅之 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (80809236)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
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キーワード | アデノシン脱アミノ化 / イノシン / RNA編集 / DNA編集 / ADAR / A-to-I RNA編集 / A-to-I DNA編集 / R-loop / アデノシン脱アミノ化酵素ADAR / ゲノム動態制御 / イノシン化部位標識単離技術ICLAMP / エピトランスクリプトーム / ノヴァエピヌクレオーム |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はアデノシンの脱アミノ化によるイノシンへの塩基修飾を行う二本鎖RNA特異的な酵素ADARが、RNA:DNA間のハイブリッド鎖をも基質とすることが可能であり、この配列編集機構が哺乳動物細胞に内在するとの仮説に至った。本研究ではこのRNAとDNAハイブリッド鎖形成によるアデノシン脱アミノ化によるイノシン編集部位の網羅的同定を実施し、編集部位の意義を、DNAの変異修復あるいは導入か解き明かし、細胞表現型へと至る分子経路を特定する。さらに、A-to-I DNA編集の特性を解読し,任意部位にA-to-I DNA編集を導入または阻害する技術を開発する。
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研究実績の概要 |
本研究計画では,DNA:RNAハイブリッド鎖を基質としたDNAのアデニン塩基脱アミノ化(DNA A-to-I) 編集の検出技術の開発,その分子機構と生物学的意義の解明,遺伝子工学への応用を実施した。 (1)【革新技術開発】核酸鎖上イノシンに特異的な新規化学標識及び精製技術の開発を実施した。これまでに,核酸鎖に含まれるイノシン塩基を複数種類の官能基で標識することに成功し,イノシンの存在証明と部位特定,定量と精製を可能とする技術確立に,モデル核酸および細胞内RNA画分を用いて達成した。これらの成果については,特許の申請を完了し(特願2023-175606)と論文誌へ報告(FEBS Lett. PMID: 38523059.(2024))を完了した。 (2)【対象母集団の同定と把握】ヒト及びマウスゲノムDNA A-to-I 編集部位の網羅的同定を実施した。探索の対象としては全ゲノムDNA画分を試料とするだけでなく,DNA:RNAハイブリッド鎖抗体またはADARに対する免疫沈降産物内の核酸を試料とした。これまでにマウスとヒトのRNAおよびRNA:DNAハイブリッドに関する次世代シークエンス解析がほぼ完了しており,DNAについては引き続き解析と調製法の最適化を進めている。 (3)(4)【分子機構解明】細胞内R-loop領域におけるゲノムDNA編集の分子機構,および空間的ゲノム配座・転写制御と表現型への経路の解明研究を実施した。これまでに,編集酵素ADARの発現抑制時における,細胞内RNA:DNA結合部位および編集部位の探索を進めた。また,ADARが関わるDNA損傷修復および染色体分配の制御経路の解明とタンパク質補因子に関する知見を順調に得ている。(1)-(4)のこれまでの研究成果の一部については2023年度の日本RNA学会年会,日本核酸医薬学会,国立遺伝学研究所研究会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展度について当初の研究計画項目ごとに,「(S)当初の計画以上に進展している」「(A)おおむね順調に進んでいる」「(B)やや遅れている」「(C)遅れている」として自己評価をした。 (1)2022年度計画である【革新技術開発:DNA&RNA鎖上イノシンに特異的な新規化学標識及び精製技術の確立】については,計画通り特許申請と論文報告を完了し運用している【S】。(2)2022年度計画であった,【対象母集団の同定と把握:ヒト及びマウスゲノムDNA A-to-I 編集部位の網羅的同定】については,DNAおよびRNAにおけるA-to-I編集部位の網羅的同定に着手した。これまでに次世代シークエンス法による解析の第一弾が終了しており,追加解析を進めている【A】。(3)2022年度実施計画である【分子機構解明:細胞内R-loop領域におけるゲノム編集機構の分子機構の解明】については,編集酵素ADARによる細胞内RNA:DNA結合部位と編集部位の探索と,細胞動態との相関解析が順調に進んでいる【A】。(4)2022年度―2023年度の計画である【分子機構解明:R-loopを介した空間的ゲノム配座・転写制御と表現型への経路解明】については,ADARと補因子の特定解析が順調に進んでいる【A】。(5)2022年度―2024年度の計画である【病態分子機構解明:ADAR抑制時に活性化する転写因子による自然免疫現象の解明】については,転写因子による制御機構に着手している【A】。(6)2022年度―2024年度の計画である【医学的応用技術開発:A-to-I DNA編集の人為的導入及び阻害技術の開発】については,細胞内標的部位の編集レポーター細胞の構築に成功し,ガイド核酸の核内移行促進設計に着手している【A】。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では,以下の計画の通り各研究項目を実施する。 (1)【革新技術開発:DNA&RNA鎖上イノシンに特異的な新規化学標識及び精製技術の確立】については,次世代シークエンス法への最適化とともに,本技術の適用範囲の拡大と簡便イノシン検出法への発展開発を進める。(2)【対象母集団の同定と把握:ヒト及びマウスゲノムDNA A-to-I 編集部位の網羅的同定】については,順次得られる次世代シークエンス結果の解析を進め,編集部位の網羅的同定および結果の組み合わせによる分子機構の解明を進める。(3)【分子機構解明:細胞内R-loop領域におけるゲノム編集機構の分子機構の解明】については,編集酵素ADARの細胞内RNA:DNA結合部位と編集部位の探索を進め,特に細胞分裂における染色体分配の前後の制御分子機構の解明を進める。(4)【分子機構解明:R-loopを介した空間的ゲノム配座・転写制御と表現型への経路解明】については,ADARが結合するゲノムDNA領域および補因子の特定を進め,各因子による制御の段階の分子機構とその機能の解明を進める。(5)【病態分子機構解明:ADAR抑制時に活性化する転写因子による自然免疫現象の解明】については,対象転写因子の機能解明と,補因子の特定と分子作用,これらが及ぼす細胞表現型の解明を進める。(6)【医学的応用技術開発:A-to-I DNA編集の人為的導入及び阻害技術の開発】については,モデル標的および疾患関連の編集標的部位に対して有効なガイド核酸の設計と,さらに核内移行を促進する追加構造成分の開発を進め,特異性と編集制御効率の向上を進める。
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